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ずっと説教されている気分だった【読後感想】曽野綾子『人間の基本』

しかし、いい本だった。

そんでもってサムネよ。どうかな?
カッコよくない? 三島みたいじゃない?
手ごたえがあった。まさに日の丸構造!!
(追記;違うよね、ただの日の丸だね汗)

そういえば、最近は叱ってくれる人の存在って、かなり貴重だよね。
ま、捉え方もあるかな。ありがいと思って聞けば、ありがたい。

逆に、このクソ野郎と思って聞けば、ほんと、このクソ野郎でしかない。

このタイトルね、『人間失格』ばりに、けっこうパンチあるよね。いったい何が書いてあるのだろうと思い、借りる。2012年の本、これ ↓

読んだ、まず率直に。
ずっと説教されている気分だった。まず文体が優しくない。次に、世間ではこうですが、私はこう思う。あの考えは間違っている。昔はこうだった。今の人の考えも分かるが、本来はこっちの考えの方が正しい。とか云々。
断定なんですよね。
要は、辛辣なんだ。

さて、どんな本?
見返しにはこんなことが書いてある。 ↓

人生を無駄にしないために必要な足場、それが人間の基本である。末端ばかりを大切にする時代にあって、それがなければ、周りに流され、やがては自分を失い、死んでしまうこともある。ルールより常識を、附和雷同は道を閉ざす、運に向き合う訓練を……常時にも、非常時にも、どんな時代でも生き抜くために、確かな人生哲学と豊かな見聞をもとに語りつくす全8章。

曽野綾子『人間の基本』見返しから

なるほど。読み終わったあと、ここを再読して思ったのは、ずいぶん優しいことを書いて誘ったものだな。と、僕の感想はまずそれだ。

読めばわかる。本文はかなり尖っている。私は私の言いたいことを遠慮しないでずかずか言います。これは、そんな本です。と、説明した方が予防線が張れる。心の準備ができるものだ。

こんなことを言うのは、面食らったわけだ。でも、いい読書経験になった。

引用しよう。全編をとおして刺激的だったが、後半につれ、どんどん激しくなった。せっかくなので、インパクトがあるところから抜粋する。

 付和雷同の風潮は社会のあらゆる分野で強まっていて、差別語はその象徴だと思います。50代の終りに、私は新聞に『天上の青』という連続殺人犯を主人公にした小説を連載していました。すると、1人の70代の人から「新聞という公器になぜ悪人のことを書くのか」という投書をもらいました。この人は70にもなって、まだ何も人生がわかっていないんですね。いい人しか出てこないような小説など、退屈で誰も読まないはずです。女房を騙して愛人の所へ行ったり、人を殺してしまったり、詐欺師もいる。悪い人や悪いことをについて書くのは、人生にはそれらのことがいつの時代になってもあるからです。政治的な圧迫を受けたり、人類全体が強力に洗脳されれば知りませんが、善と悪とは光と影の関係ですから、どちらもあるのが当然です。というか、悪つまり影を書かないと、善つまり光が表現できない。印象派の絵がそれをよく表しています。つまり善を際立たせるために悪は必要なんです。
 差別語の自主規制は、ほんとうにおかしい。小説は悪いことも書くのですから、悪い言葉も残しておかねばなりません。人の世には善も悪も混然とあるはずなのに、悪いことを認めようとしないdo-gooderは困りますからね。私はむしろdo-baderになりたい。そんな英語はないんですよ。私の造語。それにこの場合は「d」は1つでいいのかしら。2つにした方が適当なんじゃないかと思いますけど。どなたか教えて下さい(笑)。
 誰もが善人でいい人を装っていては、どんどん世の中が平板になっていきます。人間というものは善悪両面で成り立っていて、善の要素がないのが悪魔、悪の要素がないのが神だとすれば、どちらも私たち人間の手に負えるものではないのです。

曽野綾子『人間の基本』P109,110

ね、強烈でしょww 「do-gooder」の意味が分からないと思うけど、それは読めばわかる。もっともっと引用したいけど、抑制する。

もう1っこ、

 私自身が年を取ってからますますはっきりと、非常時には老いた老人から使い捨てる、広い意味でのトリアージがあっていいと思うようになりました。なりましたが、たくさんの高齢者はそれに反対でしょうから、それを他人に適用することはしません。自分の心の中で確認しているだけです。そして後期高齢者の決死隊など足手まといといわれるかもしれませんが、今度のような生命に危険が及ぶ事態に役立てるなら喜んで行くのだけれど、と思っているんです。
 戦後教育は、人間は常に平等であり公平に扱わなくてはならないと教えて来ましたが、非常時には、むしろ順位をつけるのが命に対する平等でしょう。

曽野綾子『人間の基本』P174,175

これ、成田先生のイズムと一緒ですよね。ま、彼はメディアで発言し、炎上しましたがね汗 僕はいまでも大好きですよ。彼はとっても面白い。

どうでしたか? なかなかでしょ。
読んでみて下さい! 痺れまっせ!
曽野綾子、御年91。
まじパワフルだよ!

最後まで読んでくれてありがとうございます。
また次の記事も読んでくれたら嬉しい(過去記事も)。それではまた明日!

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