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実は、セックスの台本を書いたんだ【読後感想】『教育』遠野遥

2022年
 ヤバイ本
 純文学
 75点
 4.5h

遠野遥、勝手にライバルだと思っている。笑ってくれていい。でも、あれはたしか『狂信』という小説を書いた時だった。ご想像のとおりだけど、ダメだった。でも、僕は新潮で、彼は文藝新人賞をとってデビュー。僕だけがダメだったが、とにかく彼が先にデビューした。彼も、足掛け5年くらい新人賞レースに参加しているとインタビューの記事で読んだ。それで、少し報われた。僕は、今やっと5年だ。当然、彼の方が早く走り出したんだ。仕方がない。と、前向きに考えている。追いつくぞ!

遠野遥、素敵なペンネームだよね。彼は『改良』でデビュー、次作『破局』で芥川賞。そして、今回の『教育』だ。ずっと読みたかった。ずっと気になっていた。でも、買えなかった。どこかで買ったら負けみたいな気でいた笑
『改良』『破局』は雑誌掲載で買っている。正直に言えば、たぶん、好きな作家だ。『改良』は2019年。『破局』は2020年に発刊。から、2年だ。ずいぶん、間隔が空いているような気もするが、そういうものなのだろうかね。まあ、同期の宇佐美りんも同じようなペースで発刊している。彼女の『くるまの娘』も、まだ読んでいない。読みたい。(ちなみに『教育』ね、買ってないよ!図書館にあったんだ!そしたら秒で借りたよねww)

はじめに、遠野遥の文体は、間違いなく特殊だ。僕は、下に貼った記事で、中村文則の『銃』冒頭は、完全にカミュだと書いた。

そして遠野遥だが、全部カミュ。けっこう苦手な人が多いと思う。体温が感じられない、その世界の言葉で言えば、哲学的ゾンビ、ロボットみたいだ。
でもね、僕はこれ、悔しいが、スキなんです。だって、カミュ大好きなんだもん……って、内容の話ではない。きっとこれはフランス文学の翻訳によって、そういう書き方をされていることもあるし、あっでも、やはり思考はカミュ的なのかもしれない。不条理文学、カフカでもいいが、とにかく、いわゆる普通の日本文学ではない。

75点としたのは、さすがにぶっ飛び過ぎていると思ったからだ。でも、すごいとは思った。こういうのを書けるのは、ほんと、すごい。こんな、すごい「すごい」ばっか書いていたら、馬鹿がバレそうだww

引用してみよう。付箋をつけたんだ。

この学校では、1日3回以上オーガニズムに達すると成績が上がりやすいとされていて、学校側から生徒にポルノ・ビデオが供給される。生徒たちが飽きないように、月に数回のペースで新作が出る。

遠野遥『教育』P11

上機嫌で、翻訳部の部室に向かった。ドアを開けると、部長の高木が副部長の小宮さんの胸を背後から揉んでいた。高木は制服を着たままだが、小宮さんは靴下と靴を除いては何も身に着けていない。

遠野遥『教育』P31

 現在私が翻訳を進めている小説は『ヴェロキラプトル』といって、ヴェロキラプトルが出てくる小説だ。沈みゆく太陽を背に、ひとりの男と1匹の恐竜がサッカーボールを追いかけている様子をが表紙に描かれていて、どのような内容なのか興味を持った。最後まで読んでいないから、どういう話なのかはまだわかっていない。高木が制服のズボンと下着を脱ぎ、学校指定の避妊具を装着しようとしている。彼らのセックスが終わるまで、私は『ヴェロキラプトル』を読み返して待っていることにした。
 が、高木が突然私に呼びかけた。
「たまには君たちもセックスしないか。僕たちがセックスしているときに本を読まれると、部の一体感が損なわれる」
 私は海を見た。海にその気があるのなら、私はしても構わない。

遠野遥『教育』P32

 実はセックスの台本を書いたんだ

遠野遥『教育』P73

「テストのときだけ集中するのではなく、生活のすべてがテストに繋がっていると考えています。夜ふかしせず、たっぷり8時間の睡眠をとること。食事を残さず、なるべく寝る3時間前までに済ませること。週末はプールで1キロ泳ぐようにしています。時々ジムに行きます」
「オーガズムにはよく達するのかね」
「1日3回達します。休日には4回達することもままあります」
(中略)
「オーガズムに達する手法はマスターベーションかね、それともセックスかね」
「セックスは週3回程度、あとは支給されたポルノ・ビデオを用いてマスターベーションです」
「ふむ、セックスは週3回程度、あとはマスターベーション」
 先生がメモをとっている。私などには計り知れないが、何か重要な意味を持った質問なのかもしれなかった。
「朝、昼、晩と時間帯を分けて達するのかね。それとも一気呵成に3回達するのかね」
「なるべく時間帯を分けて達するようにしています。薬を服用するときは朝、昼、晩となるべく時間帯を分けた方が効きます。それと同じように考えました。無論、2回ならまだしも、3回立て続けにオーガズムに達するのは難しいという、私の能力的な理由もあります」
~~

遠野遥『教育』P130,131

私は自分でドアを開けて中に入った。服を脱ぎ、畳んで籠の中に入れた。振り向くと、未来が怯えたような目で私を見ていた。なるほど、どうやらいったん未来の立場になって考えてみたほうがよさそうだと私は思った。辞書で殴られた顔を腫らした上級生の男が突然現れる。勝手に部室の中に入り、裸になっている。

遠野遥『教育』P150

コートの外を、1羽の鳩が歩いている。私はしばし、鳩に目を奪われた。鳩の大きさにはいつも驚かされる。鳩よりカラスのほうが大きい。しかしカラスの大きさに私が驚くことはない。カラスの大きさは、私にとってまったく妥当なものだ。一方で、鳩は不当に大きいように感じられる。

遠野遥『教育』P167

4Pしないか今夜と羽根田が言った。この男は、きっと死体を見た直後でもセックスしてみせるだろう。私は4Pについて検討してみた。

遠野遥『教育』P177

断っておくが、官能小説じゃないよ!ww 色々ヤバそうだけど、「私」も、けっこうヤバくない? 伝わるかな、この感じ。そして体温が感じられないよね。僕は、置いてきぼりをくらったような感じだったけど、この本、純文なんだけど、とにかく最後はいったいどうなるんだろうって、気になって気になって、読まされる。そんな感じだ。でも、さすがにぶっ飛び過ぎだろう。『改良』『破局』の作者が書いた本だってことは文体もしくはクセで分かるが、内容が前の2作と比べて超越している。面白かったのか、分からない。でも、気になる。そして、次の小説も、僕は読むだろう。それは確かだ。

あらすじらしいことの説明は不要だろう。なにせ、こんだけ引用したんだからねww

ありがとう。読んでくれて。なんか、変な気分になってない?大丈夫?ww


そうだそうだ!先ほどBOOKOFFに行って、見つけました『私の恋人』!
ついにゲット!しかも、110円!!やったね。

この本について書いた。貼ります。読んでくれた方は分かるが、図書館で借りた本を4回読んだ。いいかげん購入案件だったのだが、なかなか売っていなかった。で今般、願いが叶ったというわけです。

と、他に2冊買った。今日、『教育』が読み終わった。『教育』と一緒に朝井リョウの『スター』を借りているから、それが読み終わったら次に読む。
まずは『夏への扉』だ。ここで仲良くなった人と約束したんだ。これ、絶対面白いぞ!わくわく(^^)本は、渋滞しているのに、また買ってしまって、割り込みだ。もう一方のカエルの方は、積本になりそうだ。でも、この本も面白かったという記事を読んだから、読みたい……

最後まで読んでくれてありがとうございます。
また次の記事も読んでくれたら嬉しい(過去記事も)。それでは。また!

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