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(詩)卒業証書

たとえば
卒業式の日のように

たとえば
東京行きの列車に乗る日
いなかの駅の
ホームに立つ時のように
そこでふるさとの
最後の夕焼けを
あおぎみるように

また夢を失い
東京を去ってゆく日の
早朝の
東京駅のプラットホームに
たたずむ時のように
そのやさしいしずけさに
身をまかすように

たとえば、そして
また或いは

ひとりの女の子と別れ
けれど何年かして
また別の誰かを
好きになってしまう
瞬間のように


たとえば人が
この世界を去ってゆく時を
ひとつの卒業と
呼びたいのです
だから桜は散ってゆくのだと

だからいつもは
あんなににぎやかな
娘たちの感傷的な涙も
許してあげなければ、いけないと
卒業式だから

しずかに桜は
散ってゆくと

夏にはせみしぐれが
降りしきるように
秋には枯葉が
舞い散るように
冬には純白の雪が
降り積もるように

そして春にはやっぱり
しずかに
桜が散ってゆくように

そしてあとにはいつも
風だけが吹いていたように


ひとつの卒業と
ぼくは呼ばせてもらいます

だからぼくにも
いつかその日がきたら

その時あなたは
あいつもやっと
卒業できたかと
拍手、してください

そしてもし
あなたが少しでも
ぼくのために
涙をこぼしてくれたなら

ぼくには、それが
あなたの涙が
ぼくの卒業証書です


※シーズンに合わせた再投稿です。

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