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ピックアップトラックでソロキャンプ気分な小説

『海の仙人・雉始雊』絲山秋子 (河出文庫)

宝くじに当たった河野は会社を辞め敦賀に引っ越した。何もしない静かな日々に役立たずの神様・ファンタジーが訪れ、奇妙な同居が始まった。芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞した傑作に「雉始雊」を増補。

出版社情報

宝くじが当たってお気に入りの海の近くに家を借りてファンタジーの神が現れるって、なんだ?と思うような始まり。ライトノベルならいざ知らず芥川賞作家でこんなんでいいのかと正直思う。ただ読みやすさなのかな。会話体でスラスラ読める。ライトノベルの感じだけど、極端なファンタジーはなくて、そこらへんにいそうな若者の青春群像という気がする。繋がりを求めながらコミュニケーションが取れない寂しさ。その当たりのひりひり感を心地よいと感じる。海水浴で日焼けした頃の追想の小説。「八月の濡れた砂」だな。

ただそういう感傷性はUKロックで包み込むような感性というか、尖ったロック聴いてますという感じか?ジャズだとパット・メセニーでもカントリー調の奴。

ピックアップ・トラックでソロキャンプの孤独というか、どこかそういう孤独を求めながら帰っていく場所がある人の小説、甘すぎる。それでも今の時代、こういうライトノベルが流行っているのだろう。ネット小説のような。短歌だとライトヴァースというような俵万智の世界みたいな、傷心ラブストーリー。



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