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#ネタバレ 映画「光の旅人/K-PAX」

( 引用している他の作品も含め、私の映画レビューはすべて「ネタバレ」のつもりでお読みください。 )

光の旅人/K-PAX
2001年作品
もうひとつの「ランボー」
2012/3/12 18:29 by さくらんぼ(修正あり)

思い起こせば、映画「ランボー」は「帰還兵の心の傷」を描いた作品だった。実際そのような人も多く、社会復帰が難しい事もある、とのニュース特集があった。

そして、この映画「K-PAX」も、もしかしたら同種の映画なのではないか。

プロートが心の傷を負った理由は、家族を襲った不幸のためである。そして戦争に行くための大義名分の根本もまた「家族を守るため」だからである。それにプロートを駅で最初に見つけたのは「傷痍軍人」だった。だからプロートは帰還兵の暗喩である。

そのプロートが水で洗礼を受けた。そうしたら宇宙人(神)が、友にもなりうるような人物であり優秀な医者でもあるパウエルにめぐり合わせるべく手配した(のりうつって行動した)

パウエルの患者、そして友となり、やっと本来の姿に戻ったプロートは、穏やかに幸せそうな表情を浮かべ、車椅子で友の話しを聞くのである。深い傷を心に持った帰還兵にも癒しが訪れた。

使いすぎたキーワードなのでまたかと思われるかもしれないが、やはり使わなければならない。プロートが来てから、病院の窓が素晴らしい「ステンドグラス」になる。

ふと、村上春樹さんの世界を思わせるような優しさに、ぜひ一度つつまれてほしい。

( リンク切れにより転記 2002/5/5 11:59 by さくらんぼ )

追記 ( ペットも戦争で傷つく )
2012/3/13 18:38 by さくらんぼ

> 思い起こせば、映画「ランボー」は「帰還兵の心の傷」を描いた作品だった。実際そのような人も多く、社会復帰が難しい事もある、とのニュース特集があった。

映画「K-PAX」の中には「片方の耳が聞こえない、人嫌いの犬」が出てきます。奇妙なエピソードでした。でも、あれは、爆弾の破裂音で鼓膜が破れたので、戦争する人間たちを恨む犬、を描いたのですね。ペットだって戦争で傷つくのでした(大震災でもペットは大受難でしたね)。そして犬は傷痍軍人を補完する記号でもありました。

本文でも書いたとおり、私はこの映画の優しさが好きです。プロートの様な障害を持った人は、身内の介護がなければ、最悪の場合、物の様に扱われてしまう心配があります。でも、無表情で外面的な反応が無くても、心は生きているとしたら、それでは残酷極まりない余生を送ることになります。彼に親友が出来て本当に良かった。

追記Ⅱ ( 映画「天国でまた会おう」 )
2019/3/24 14:51 by さくらんぼ

映画「天国でまた会おう」で思いだしたのが、

映画「ランボー」と共に、

この映画「光の旅人/K-PAX」でした。

三者に共通するのは、主人公が「寡黙」なことです。

追記Ⅲ ( 天文台へ連絡する理由は )
2019/7/9 16:16 by さくらんぼ

『 「アインシュタインにもこの写真を見せたかった」。今年4月、世界中が注目した「ブラックホール撮影成功」のニュース。各国精鋭の天文学者で構成される国際研究チームの日本代表者、本間希樹さんは会見でこう語りました。宇宙の不思議や研究の裏側など作家の林真理子さんが迫ります。

… 中略 …

本間:よく「宇宙人いますか?」って聞かれるんですけど、必ず「いますよ」って言うんです。もちろん見たことはないですし、いきなりUFOが飛んできて宇宙人と会うとは思わないですけど、大きい電波望遠鏡の数をたくさん増やしていくと、近くの星に地球みたいな文明があって、そこでやってるテレビを地球でも見られるという時代が、あと何十年かするとくるという試算があるんです。

林:ほォ~。このあいだテレビで見たんですけど、「宇宙人に何かを聞かれても答えないでください」という注意書きが各国に出ているっていうんです。誰かが代表して答えることになっているので、うかつに返事しちゃいけないって。

本間:万が一そういうことがあったら、しかるべきところに連絡するようにということで、日本は国立天文台に連絡することになってるんです。

林:えっ、先生のところに?

本間:僕個人じゃないですけど、僕がいる国立天文台に。ま、今すぐコンタクトがあるわけじゃないんで、大丈夫ですけどね。』

( 2019/7/7(日) 17:00配信 AERA dot. 『「宇宙人は必ずいる」ブラックホール撮影の天文学者が断言する理由〈週刊朝日〉』 より抜粋 )

上記で思いだしましたが、映画「光の旅人/K-PAX」で、自らを「宇宙人だ!」と言う謎の男を、精神科医が連れて行ったのが、やはり天文台だったような記憶です。

星の専門家の前で、まずは専門知識を試し、事実上の「精神鑑定」をすることになるのでしょうか。リアルでも。

その時の様子が、下記にあります。

「 精神科医マーク(ジェフ・ブリッジス)の元に、身元不明の中年男(ケビン・スペイシー)が患者として送られてくる。男はプロートと名乗り、自分は地球から1000光年離れた惑星K-パックスからやってきた異星人だと主張。

それは架空の星だと説得しようとするが、逆にマークはプロートからK-パックスに相当する星の存在を教えられる。しかもその惑星は天文学会にも発表されていない新発見で、研究所で学者を前に、プロートは惑星の正確な軌道まで解説する。…中略…【キネマ旬報データベースより】」

( ぴあ映画生活『光の旅人/K-PAX』あらすじより抜粋 )

追記Ⅳ ( 物語の全体像 )
2019/7/10 6:35 by さくらんぼ

この映画「光の旅人/K-PAX」について、過去のレビューには説明不足がありますから書いてみます。

映画「地球が静止する日」の主人公・クラトゥ(キアヌ・リーブス)は、冬山で凍死した人間に乗り移った宇宙人だったのでしょう。

同じように、この映画「光の旅人/K-PAX」の主人公・プロート(ケビン・スペイシー)も、家族を襲った暴漢と戦ったトラウマで、(正当防衛とはいえ、人を殺めてしまったショックで)心が壊れてしまった普通の人間だと思います。そこに宇宙人が乗り移った。

乗り移ったと言うと、宇宙人は幽霊みたいな存在かと思われてしまいますが、コンピュータのソフトとハードを連想してもらうと分かりやすいと思います。宇宙人の科学では、人間も肉体と心を別々のものとして考えるのでしょう。そして心として乗り移った。

もしかしたら、乗り移ったと言うよりも、ラジコンか催眠術みたいに、遠くの宇宙船から操っていたのかもしれませんね。だから人体に宇宙人の実体はないのかもしれません。ある意味「無人偵察機」。

そうすると、映画「光の旅人/K-PAX」の主人公・プロートの記憶に、人間と宇宙人の両方があることへの説明が付きますし、部屋に閉じ込めておいても、宇宙人は帰って行くことが出来るのです。

私を含め、人は自分に都合の良い情報を受け入れたがります。そのため、人間だと思っていた精神科医には人間にしか見えないし、宇宙人だと信じた天文学者には宇宙人に見えるのです。

これが表層の物語。

そして、深層の物語では、宇宙人を神に置きかえてください。この物語が、すでに本文と追記に書いたお話です。

宇宙人を神の記号だとしているのは、映画「未知との遭遇」でも同じですね。光り輝く宇宙船は教会のステンドグラスの記号で、荘厳なメロディーもパイプオルガンのそれでした。

昔観た作品なので詳細は忘れています。もう一度観たら違う解釈もありえますが、とりあえず、こう記しておきます。

追記Ⅴ 2022.1.10 ( DVDが… )

事情はよく存じませんが、現在、新品のDVDはほとんど流通していないようです。しかし、作品自体の問題ではないと思いますし、良質な、今でも忘れられない一本なので、このまま消えていくのはもったいないと思っています。

追記Ⅵ 2022.4.25 ( お借りした画像は )

キーワード「傷」でご縁がありました。無加工です。ありがとうございました。


( 最後までお読みいただき、ありがとうございました。 

更新されたときは「今週までのパレット」でお知らせします。)


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