ショートショート「愛」


私の母は変顔が得意だった。

娘である私を赤ん坊の頃から大笑いさせていた。

まったく、私はいつでも必ず笑ってしまうのだ。

小中高校の卒業式では変顔を連発され、

卒業写真の顔が微妙にゆがんでいるくらいだ。

そんな母ともついに、別れの時が来た。

病院で泣きじゃくりながら年老いた母の手を握る。

「とうとうお迎えがくるようだ。
達者でくらしなさい。
どうか幸せに……」

母の声が途絶えた。

「お、お母さん」

涙顔を上げて母の顔を見ると、

変顔だった。

「ぶあっはははははははっ!! 
 あーははっはははは!
 ………お母さん、ありがとう」


(了)


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