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国産アパッシメントワイン (前編)

実は3年前(2020年度)から陰干しぶどうを用いたワインの製造を試験的に行っています。
インスタグラムで海外のワイナリーの画像を見ていた時にその吊るしてある画像の美しさに惹かれて自分も作ってみたいと思い翻訳と見様見真似してみました。
現在小牧ワイナリーでは特別なワインなどはまだなく、値段もちょっと高いテーブルワインくらいの値段でしか売られていません。もちろんそういったぶどうが作れてないのが不甲斐ない話なのですが、そんな中1つでも2つでも宣伝になるような物(プレミア感のするような物)が作れないかと模索していたら出会ったのがアパッシメントワインでした。

愛知県というと昔から雪は降らない癖に寒い風は伊吹山から吹き下ろしてくるわ乾燥してハンドクリームが手放せないわと雪遊びをしたい子供心としてはすごく嫌いな土地でした。

家で収穫した1.72kgのぶどうを吊るして陰干ししてる様子。
他にも板の上で寝かしておいてある重さがバラバラの陰干しぶどう達。
2021年度

けれど乾物を作るという点では非常に優れているという事がわかってからは考えが反転。土地的に貴腐ワインやアイスワインは気温が高すぎてできないですが一方でこの乾燥具合と吹きおろしの風は陰干しぶどうを作るのにはもってこいと気づいたのです。ワインの本場の山梨や長野では冬は降雪で湿度が高いでしょうし、地下の洞窟やムロでは同じように湿度があり乾燥には向いていなさそうなので愛知県はまさに乾物ワインにとって理想的なテロワールなのではないかと思いました。乾燥方法は50年以上前の倉庫に放置されていたヒノキの梯子を分解・構築して防腐剤を塗った木の棚を作り、そこに昔赤子を寝かす際に使っていた蚊帳を上に被せて風遠しの良すぎる場所に陰干ししてました。ただこの年は破砕直前にハクビシンに感づかれてしまい、蚊帳の上部を嚙みちぎって侵入され、乾燥していたブドウの1/3を食べられてしまったのと干しすぎで水分がほとんどなくなったせいもあって、10kg吊るしてたったの150mlしか搾れないという笑える結末に終わりました。
あの時の所長のバカにしたような顔は忘れません。(見てろよ所長)
下記の写真でもわかるとおり、気温も平年並か以下だったのでカビが生える事はありませんでした。150mlの糖度は搾汁後は測ってないので不明。下記のぶどうは糖度30度は超えてました。画面は真っ白でした。(屈折糖度計の計測可能糖度上限は30度)

上の1.72kgのブドウを約4か月に渡って陰干しした後の重量。
正直水分飛ばしすぎてレーズンでこの年は失敗。
理想は水分量35%~45%減。

年は変わって2022年度分。
この年は月6万円の工賃の癖して15万円する倉庫をこの陰干しのためだけに購入し倉庫内でとあるイタリアのアマローネ風景を真似て吊るしました。

なぜに枝がついているかというと、
複梢以降の房だけを使用したので枝ごとバッサリ切って吊るす事ができるのです。
このほうが吊るしやすいですし。

倉庫内なので外と思うと空気循環が悪いのでサーキュレーターを使用してカビが発生しにくいようにと対策していたのですが、結局外気温が思ったより高く暖冬になってしまった関係で最終的な破砕前選果の際1/10ほどはカビが生えてしまっていて取り除く結果になってしまい残念でした。
サーキュレーターは「バルミューダ」製。超微風な自然風を作り出せるこのサーキュレーターは陰干しの強い味方でした。

電子糖度計の最高測定糖度は40度なのか、
測定時にHHHと表示されて糖度が振り切ってしまったため正確な糖度は不明。
1滴水を垂らして39度になりました。

前年の約120日もの干しすぎレーズンを反省してこの年は乾燥期間が1か月ほど少なくして80日ほどの乾燥にとどめました。2022年度からは誰かから頂いた中古の電子糖度計をワイナリーが手に入れてくれました。ランダムに測った糖度は最低35度以上でしたが一部のブドウは電子糖度計の測定範囲を振り切った糖度になってました。なので平均糖度は38度以上はあったのではないかと推測します。乾燥率も40%前後のちょうどいい感じでこの年は10kg吊るして約4Lの搾汁量となりました。一部、塩台の上で干したり塩を吊るしたり(ソルトアパッシメント)、油でブルームをそぎ落として(ブルームは蝋、油なので油同士溶け合い綺麗に剥がれる)乾燥率を早めれないか?的な実験(オイルアパッシメント)も同時進行していたので果汁を分けたのとカビて取り除いた分の搾汁量が減ってるだけなのでほぼ想定通りでした。
平均糖度が38度ほどあったので単純計算すると全部アルコールにした場合は19%、もしくは甘さを残すためにアルコール発酵を途中で止める可能性もあるでしょうか。
この4L分(瓶5本分)のワインはいつロールアウトするのかはわかりません。気になる方は小牧ワイナリーにお越しの際に醸造担当の所長にでも聞いてみてください。

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