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北野武の新作『首』が映す2023年日本社会のリアル

公務員クエスト失敗おじさんの「ありのこ」です。

今回は映画を取り上げたいと思います。
「なぜ映画を!?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。

取り上げる映画は北野武監督の「首」です。
この映画「首」は2023年における日本の問題点をとらえていると思います。

2023年に公開された映画を大みそかに取り上げたいと思います。

映画のネタバレなしで行きたいと思います。
ご安心ください。

ただし映画公開よりも前に「予告動画」や「北野武監督へのインタビュー」が公開されています。
「予告動画」や「北野武監督へのインタビュー」を見れば想像できる範囲の内容には触れていきます。

もし「まっさらな状態でこの映画を見るつもり」という方がいらっしゃいましたらここで引き返してください。


北野武(ビートたけし)さんはもう若者をひきつけない?

2023年11月23日(祝日)に映画「首」は公開されました。
私が映画館で「首」を観たのは11月27日(月)の午前9時25分スタート。

イオンシネマで観ました。
イオンシネマだと月曜日は1,100円で映画を観ることができます。

無職には数百円の差が大きい訳です・・・。

お客さんは満席の半分くらいだったでしょうか。
半分をちょっと下回るくらいだったかもしれません。

月曜日の朝いちばんとは言えちょっとお客さんは少なかった気がします。
公開されて数日しかたってませんし、チケットは1,100円と安いですし。

そしてなによりも私より若いと断言できるお客さんは0人でした。
40代半ば(=私)より若いお客さんはゼロ

月曜日の朝だから若者がいない可能性もあります。
しかしフリーターとか大学生とかだったら映画館に来ることができる若者はいるでしょう。
働いている若者だって月曜日が休みの人もいるでしょう。

しかし若者は0人でした。

私が公務員デビューしてちょっとしたころ。
2000年代の前半。

職場に非正規雇用の女性がいました。
息子さんがいて高校生くらいだったと思います。

「息子にとってビートたけしは芸人じゃないんですよね。かっこいい映画監督・北野武なんですよね」とその女性の方はおっしゃっていました。

映画「座頭市」公開のころと思います。

約20年前ビートたけし(北野武)さんは若者を映画館へ引き付ける力がありました。

しかし今はビートたけし(北野武)さんは若者を映画館へ引き付ける力がないのかもしれません。

ビートたけし(北野武)さんの黄金時代を知っている44才としてはかなり寂しい気分です。

ただし

「今の若者は時代劇を知らない」
「日本の実写映画を映画館で観なくなっている(アニメ映画は見るけど)」

と20年前とは状況が変わってしまっただけかも・・・とビートたけし(北野武)さんをフォローしておきます。

人間は3種類しかいない

北野武監督の映画「首」は構想30年だそうです。
少なくとも宣伝文句では構想30年。

2023年の30年前は1993年。
政治の話を少しします。

1993年の衆議院選挙で当選した有名な(元)政治家がいます。
田中真紀子たなかまきこさんです。

田中角栄元総理の娘。
田中角栄の地盤を引き継ぎ立候補。
見事に衆議院議員として当選します。

田中真紀子さんが言ったとされる言葉があります。

人間には3種類しかいない。それは家族、敵、使用人だ

すさまじい言葉です。
ちなみに田中真紀子さんはこの発言を否定しているという説もあります。

本当に言ったかどうかはわかりません。
しかし「こんなひどいことを言いそうだ」と多くの人に思われるのが田中真紀子さんの(政治家としての)評価なのだとも思えます。

田中真紀子さんの絶頂期は小泉純一郎内閣の外務大臣。
自民党です。

この時、田中真紀子さんの人気は絶頂でした。
小泉総理が田中真紀子外務大臣を更迭したら小泉内閣の支持率は劇的に下がりました。

当時の外務省に問題があったとは思います。
しかし田中真紀子外務大臣が正しいとは限りません。

「悪いA」がいる(ある)。
「Aは悪い」として非難しているBがいる。
このときBは正しい人であるとは限らない。
下手をすればAよりもBの方が悪かもしれない。

あとから振り返れば田中真紀子さんが外務大臣としてやったことは自分勝手のメチャクチャとしか思えません。

小泉純一郎総理と敵対した後はいつのまにか民主党(今はない)に。
自民党をぼろクソに言いはじめます。

そして民主党政権の野田内閣で文部科学大臣になります。

しかし文部科学大臣でもまたゴタゴタ。
「それってあなたの感想ですよね」を先取りしたようなことを言い出して大混乱。

民主党の不人気もあったけど、有権者もさすがにあきれ返ったのか現役の大臣にもかかわらず衆議院選挙で落選。

父・田中角栄が築いたガチクソ強い地盤があったはずなのに落選。
「地元の有権者にすら嫌われたのか?」という政治家としての最後でした。

ちょっと長く田中真紀子さんのことを書きました。
その理由は映画「首」を観ていたら田中真紀子さんと「人間には3種類しかいない。それは家族、敵、使用人だ」という言葉を思い出したからです。

戦国時代を生きろ。=宮崎駿作品と正反対

話を北野武監督の映画「首」に戻します。

私がこの映画にキャッチフレーズをつけるとしたら「戦国を生きろ。」です。

宮崎駿監督のアニメ映画「もののけ姫」。
キャッチフレーズは「生きろ。

北野武監督の「首」はジブリ映画と正反対。
救いがない。

戦国時代を生きろ。」では命は軽いです。
北野武監督の「首」では自分が得をするためなら他人の命なんぞどうでもいい。
実際の史実でも「戦国時代は命の扱いが軽かった」と言われています。

人間はみんな自分勝手、そんなもんだろ


ジブリ映画と正反対と書きましたが、そもそも北野武監督の「首」にヒューマニズムのかけらもありません。
多くの映画がテーマにしがちなヒューマニズム。

北野武監督が「首」で描くのはヒューマニズムの正反対。
ヒューマニズムなんてクソくらえ」の世界です。

「ヒューマニズムなんてクソくらえ」は「人間はみんな自分勝手」とも言えます。

北野武監督の「首」は「人間はみんな自分勝手、そんなもんだろ」と完全に振り切っています。

織田信長も自分勝手。
織田信長の部下たちも自分勝手。

豊臣秀吉も自分勝手。
(豊臣秀吉はまだ羽柴秀吉ですが一般的には豊臣が有名。よって豊臣秀吉と以後表記します)

徳川家康も自分勝手。
明智光秀は・・・一見いっけんマトモに見えますが、結局は自分勝手。

織田政権=2023年のブラック企業


加瀬亮かせりょうさんが織田信長を演じています。
ネットでは加瀬亮さんの狂った信長ぶりが高評価のようです。

織田信長がパラハラ(パワーハラスメント)しまくりです。
家臣の中でもトップクラスたち、豊臣秀吉や明智光秀たちに対してパラハラしまくりです。

豊臣秀吉なんかは純粋なパラハラ被害者かというと違う。
自分の直属の部下たちにパラハラしまくりです。
ひどいものです。

パラハラが連鎖しています。

織田信長と家臣たちの関係を織田政権と捉えてみましょう。
織田政権を組織と捉えることもできます。

組織と捉えると2023年における日本の企業組織でも同じようなことはあるのではないでしょうか?

2023年の企業で言えば次のような感じ。

社長が役員ににパラハラをする
役員は表面上では社長にへびこつらうけど部長にパラハラをする

下手をすれば部長は・・・とつながって主任は平社員にパラハラをして平社員はパート・派遣にパラハラをしてと一番下までパラハラの連鎖がつながっているんじゃないの?

こんな会社を「ブラック企業」と一般的に呼びます。
2023年に世の中を騒がせたビッグモーターもこんな感じだったんですかね?

北野武監督の「首」では豊臣秀吉は平気で「どうせお前、死ぬけどな」と言います。

ビッグモーターの副社長(当時)も「死刑死刑死刑死刑死刑死刑・・・」とLINEして日本中を騒然とさせました。

この副社長、実質的には兼重かねしげ創業家の2代目。
創業者の社長は実質的に引退していて、息子の副社長がビッグモーターを取り仕切っていたそうです。

創業者の跡目を継いだのがあの「死刑」連発の息子だったと。

北野武監督の「首」でも跡目が重要なポイントです。

織田政権における跡目。

織田信長は「跡目は息子に継がせなくてよい」ことを暗に示します。
「成果を上げた家臣が継げばよい。だから必死で働け」という趣旨のようです。

しかし・・・織田信長は「息子に織田政権を継がせようとしているのではないか?」と。

ここで田中真紀子さんの「人間は3種類しかない」を思い出します。
人間には3種類しかいない。それは家族、敵、使用人だ

織田信長だと

家族=息子
敵=敵対する大名や謀反を起こした家臣
使用人=家臣

になります。

息子に跡目を継がせる、使用人はこき使う。
これが北野武監督の「首」における織田信長です。

トップはクソ
トップもパラハラをするが、その下もパラハラをして・・・

これが北野武監督の「首」の世界であり、2023年のブラック企業の世界です。

ブラック企業は大変な問題です。
しかしまだ個々の問題とも言えます。

だから本題はここからです。

2023年の日本を覆う大きな問題

映画「首」は2023年における日本の問題点をとらえている
このように一番最初に書きました。

組織の大義名分なんてお題目に過ぎない。
みんな自分の利益を最大化するためにその組織を使っているだけ。

2023年こんな状況が日本を覆っているように感じました。


戦国時代、織田信長は天下布武てんかふぶを宣言していました。
「戦国時代は戦ばかり。戦のない平和な日本にしましょう」と。
天下泰平たいへいを目指すという大義名分があった。

しかし北野武監督の「首」では織田信長は「息子に跡目を継がせる」という話が出てきます。
織田信長も「たんなる人」に過ぎなかった。
ビッグモーターの創業者と同じ俗物ぞくぶつじゃないか、と。

そして織田信長の家臣たちも「織田信長のため」などと言っているけど、内心では自分勝手。
自分の利益が最優先。

人間はみんな自分勝手、そんなもんだろ」状態。

2023年の日本もこんな感じなんじゃないですか?

会社組織が唱えている大義名分ってどこまで本気なんですかね?
従業員たちは「会社(利益)のため」と言っているけど、どこまで本気なんですか?

出世したいだけじゃないですか?
「出世していい思いをする」というのは会社組織を使って自分の利益を最大化してますよね?

「そもそも会社組織は金銭と言う利益を最大化するところだろう?」という批判がありそうです。

では非営利法人は本当にみんな非営利の精神で活動しているのでしょうか?

大きいところでは政党はどうですか?
政党の掲げる政策は本気ですか?
お題目に過ぎないのではないですか?
政治家はほんとうに国民のために働いてますか?
政治家は自己の利益を最大化するために行動してませんか?

他にも「〇〇省はどうですか?」などと探していけば、日本中に似たケースばかりではないのか?

「人間はみんな自分勝手、そんなもんだろ」は言い過ぎかもしれません。
しかし「人間はだいたい自分勝手、そんなもんだろ」状態であるように思います。

もう1度書いておきます。

組織の大義名分なんてお題目に過ぎない。
みんな自分の利益を最大化するためにその組織を使っているだけ。

このような状況があちこちで発生しまくっていて日本がうまく行かなくなっているのだと思います。

ブログ記事は以上です。
最後までお読みいただきありがとうございました。

ちょっと内容が暗かったですが、2024年は「2023年より良い年」になってくれると信じています!

スタンドエフエム北野武監督の「首」について音声配信をしています。
今回のブログ記事で触れなかった「役者さんの演技」も話題にしています。

興味があればぜひお聴きください。

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2023年の年末、急に始めたnote。
貴重な大みそか、こんな長い記事にお付き合いいただきありがとうございました。

それではみなさま、よいお年を!

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