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思い出いっぱいの原美術館へのオマージュ記事👑『さようなら原美術館』☀そしてこんにちは群馬の「原美術館ARK」✨

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原美術館が閉館してしまう!この衝撃のニュースに、海外からも「アンビリーバブル!あの廊下が好きだったのに」などと惜しむ声がSNSにあふれたのが2年前。理由は建物の老朽化。気づけば今回が最後の展覧会となっていました。もともと創設者・原俊夫さんの祖父、邦造さんの私邸を美術館にしているからか、アットホームな空気感が心地よい場所。まるで、過去の自宅が解体されてしまうような寂しさを感じてしまうのです。閉館までに、できるだけたくさんの思い出をここで作っておきたい。そんな気持もあって内田洋子館長を訪ねました。

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JR品川駅から歩くと、ゆるやかな坂道を上った高台のてっぺんに白い門が見えてきます。そこをくぐると、木々の向こうに見える洋風邸宅が原美術館。「40年ほど前に開館した当時は、現代アート専門を掲げる当館に関心を持つ人々は少なく、入口の鈴がチリンと鳴るのも日に2~3回でした。」と館長。原さんが70年代に「日本の現代アートを紹介する美術館を作る」と決めたのは、「ハイテクでは世界一流になりつつあった日本だけど、芸術面では古典ばかりが前面に。なぜ?」と感じたから。
それにしても、美術館って、ご先祖様が膨大な美術品を残したとか、戦利品の美術品がわんさかあるとか、元々展示するべき品があるから建てるイメージなのだけど。。。中身がまだ無い状態で決断するってすごい勇気。しかも、評価の定まっていない現代アーティストの作品を集めるとは!

まだメンバーが1人もいないのに海賊団を立ち上げた、「ワンピース」のルフィのような勢いを感じます👀

そして、この時点ではまだ建物も決まっていなかった。。。たまたま邸宅を改造して作ったデンマークのルイジアナ美術館を見て「おっ、いいねー。そういえばあの御殿山に邸宅があったな!」。どうやらそんなノリだったようです。77年に財団を作り、79年に開館。「好きだから買う」という原さんの直感で、原美術館のコレクションが着々と築き上げられていきます。さながら原さんが制作した現代アートですね。

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代表的なコレクションに加藤泉さんの作品があります。

《キャデラックおじさん》
 設立に当たって最も影響を受けたルイジアナ美術館館長から「作品は必ず自分で選ぶこと」というアドバイスを聞いて以来、「アーティスト本人と話して直接購入する」という独自スタイルを貫いている原さん。開館前でまだ名を知られていなかった彼を、巨匠・李禹煥さんが自宅に招くというチャンスを得た時の戦略がスゴい。「欲しい作品を見つけても、売ってくれないかもしれない。。。信用されるためには、最高の車で向かおう」との発想からか、なんと、キャデラックをレンタル。なんか、ルパン三世みたいな華麗なる機転(実際ルパンもキャデラック・エルドラドに乗っていた時期が!)。不二子じゃなくても惚れますよね~。
その甲斐あって、めでたくその場で作品を購入。それこそが、今や李さんの代表作と謳われる「線より」と「点より」なのです。何年もたってから、当時少女だった李さんの娘さんから「キャデラックおじさん」と呼ばれたというのですから、インパクトは相当なものだったのでしょう。

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艾未未(アイ・ウェイウェイ)によるこんなに珍しい初期の平面作品も所蔵!艾未未「毛像組 1」1985年。

 この直感型スタイルは、時にドタバタ劇も起こします。ニューヨークから帰国したばかりの草間彌生さんが、当時の日本では奇抜すぎて見向きもされなかった時分。ド派手な黄色の立体作品「自己消滅」を入手したのですが、実はその素材はパン!タイトルといい、素材といい、ヤバいフラグ立ちまくり。とにかく虫が湧いて湧いて。。。本気で「自己消滅」してどうするの~!とツッコミどころ満載。ということで草間さんに相談したところ、紙粘土で作りなおしてくれて一件落着。おかげで今でも展覧会で出会うことができます。おそらく価格もとんでもないことになっているのでは?

《なくなるわけじゃありません》
折しも開催中の最後の展覧会は、原美術館の記憶が5人のアーティストの作品の中に息づいている「光―呼吸 時をすくう5人」展。どの作家も、少しづつ原美術館のモティーフを作品に入れています。現実の邸宅と、作品内の邸宅、私達のここでの記憶が溶け合う不思議な感覚。自動演奏ピアノが奏でるドビュッシーの「月光」、光で埋め尽くされた美術館の階段の写真などに囲まれていると、外界と自分が切り離されていく。。。

階段に光「光―呼吸 時をすくう5人」展示風景(2021年1月11日まで開催)

ピアノ「光―呼吸 時をすくう5人」展示風景(2021年1月11日まで開催) (2)

そうだ、久しぶりにカフェに寄っていこう。良い天気なので、外の席へ。デザートのパイ生地が、分厚い座布団みたいで可愛い。それを柱のように支えるたっぷりとした生クリームが美味しい。

カフェ

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ここ20年で40~50回は来たかな。おっと、過去形で語るのはもうやめよう。閉館後は、作り付けの作品も含めて群馬の「原美術館ARK」にお引越しするのだから。新たに繰り広げられるアートのレジェンドを見逃さないよう、群馬まで追いかけていきましょう。できればキャデラックでね。

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磯崎新さんの設計もユニーク!豊かな自然に囲まれた清々しい環境も魅力の「原美術館ARK」@群馬☀

【展覧会情報】
「光―呼吸 時をすくう5人」展
会期 2020年9月19日~2021年1月11日
会場 原美術館

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