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【エッセイ】名のある日

 脳みそからはじき出された日常が、行き場を失って部屋のすみにたむろしている。
 はたして、日常とは仕事か暮らしか。どちらにしても、今は居場所がないらしい。

 観念して車で10分の実家に向かう。
 実家のすぐ手前で、軽自動車が1台路肩の側溝に落ちていた。田舎の一本道、路面は乾いている。車には初心者マークが貼られていて、前側がつぶれていたが、けが人はいないようだった。
 大みそかに気の毒なことだ。

 ところで、名のある日が嫌いだ。何か特別なことをさせようとするのがどうもいやだ。だけど知らぬふりもできなくて、心がすり減る。
 年末年始は名のある日がつづく。
 クリスマス、大みそか、正月、三が日…。

 ふむ。ハレが嫌いとは、どうりで変化のない人生のはずだ。ケばかりを集めて、この身に溜め込んでいるのだから。
 イベントを楽しみたくないわけじゃない。気をつかってペースを乱さなくてもよいハレなら大歓迎なのに。

 こんな調子でハレを楽しめる日は来るのだろうか。無理をすることでもないけど、変わりたければ変わらないといけない。
 とにかく、自分にとっての最優先事項は、心穏やかな暮らしなのだ。
 日常への愛着とイベントごとへのかすかな憧れのせめぎあいはつづく。

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