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【エッセイ】春、眠る

 やりたいことも、やらなければならないことも横に置いて、眠ることにした。
 快晴を捨てた。自由を行使した。
 けだるさが頭にも身体にもまとわりつき、しかし不調とまではいかず、相変わらず健康な休日の朝。

 たとえば日々の中で、食事、睡眠、運動のどれを最も重視するか。
 私は絶対に睡眠だ。逆に言うと、睡眠が調わないとてきめんに心身に違和感を生じる。そしてそんな違和感は、一度感じてしまうと容易に解消できない。
 だから睡眠の時間も内容も充実させたい。しかしそうもいかないことが多々ある。後回しにしている自分がいる。
 
 私だって、夜遅くまで遊んで話して、寝不足のまま朝早くから出かけたり活動したい。人付き合いだってある。
 眠いだるいと感じながら、夜ふかしと飲みすぎがたて込み、ついにじんましんが現れた。背中が強ばって寝つきも悪く、夜中に何度も目を覚まし、二日続けて夢の中で泣いていた自分に引いた。

 働いて飲んで食べて笑いながら、無自覚な疲労とストレスに蝕まれているようだった。そんなにヤワではないと思っていたが、なんとなく「休んどけ」と自分で思った。夢の中で泣くのはひどく疲れた。

 なるほど間もなく、春がやってきた。
 陽気が外へと誘うが、動き出せないでいる。
 ときどき「季節の変わり目」という名の季節がある気がする。その狭間でもてあそばれる自分。
 季節はたいてい足音を忍ばせてやってくる。ドタドタと物音を立ててくれれば心構えをすることもできるのに。
 まあいい。冬眠する動物がいるのだから、春眠する人間がいたって良いだろう。
 春だからと焦って遊びに行かずに、もう少しだけゆっくりしていよう。
(そのうちおいしいものでも食べに行こう)

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