朝香春

「この世界の一部が機能不全を起こした200年後」という妄想「#大丈夫本舗の人びと」、自…

朝香春

「この世界の一部が機能不全を起こした200年後」という妄想「#大丈夫本舗の人びと」、自分の余命宣告受けた時のことを綴る日記「#雑談のノリで余命宣告されたので」を気ままに更新します

マガジン

  • 死ぬまでにやりたい100の事

    先日、雑談のノリで余命宣告受けまして。 私の希望としまして、延命措置せず「ピンピンころり」を選択しました。 108以上ありそうな煩悩をひとつひとつこなしていく記録を、ここに記します。

  • (有)大丈夫本舗の人びと

    各話1000字前後の掌説集です。 ・架空世界の日常話で、どんでん返しは考えてないです。 ・SF度は弱めと思います。 ・登場人物多くなる予定なので、後々キャラぶれするかもしれないです。 【初期設定(そもそも活かせない可能性大)】 『世界の廃れた街を会社として運用する』国際機関の施策によって設立された「大丈夫本舗(和名)」。アイオン自治区が加入してから約200年。10年に1回行われる訓示を聞く限りでは、北極海に面した辺境の地が、唯一人の住める地域となったそう。そこで暮らす人びとのお話。

最近の記事

やること4、読みたい本を読む

仮に1年数ヶ月の命だとして、あと何冊読めるか考えると、毎月いや毎週出る新刊の数の多さに途方もなさを感じる。 渡された本はさっと目を通した時点では激しい感情表現や艶かしい表現はなさそうだった。これなら1週間くらいで読める。 感情の起伏が激しい物語は乗り物酔いみたいな胸焼けが残ってしまう。 「これおすすめだよ!」と言われた本の大半がお涙頂戴本で、 「これのどこがよかった?」と聞くと 「読めばわかるよ!」と肝心な説明がない。 中身がない。けど勢いに飲まれて刺激で麻痺した感情が残留

    • やること3、父と暮らす

      血便が出た。 もしかしたら、バリウム出すのに力んで切れ痔になっただけかも。 検査結果来る前に肛門科行くか…いや、もう少し材料集まってからにしよう。 郵送されて来るまであと5日。 最後の休日は父と久しぶりに遠出するのも良いかもしれない。 5:48。父は起きてお茶をしばいてた。 「お父さんおはよう」 「おはよう。お茶いる?」 「うん、ありがとう。」 天気雨がしとしと降る音をBGMに、 お茶をすする音、新聞のパラパラめくれる音が縁側に落ちる。 子どもの頃はこのBGMに公文の宿

      • イカロスの夢2

        何もないはずの駅に降り立つと、 例の駅員と誰かが言い争っているようだった。 何を話してるのかまでは聞き取れなかった。 するとどこからか出てきた黒い影のようなものに、 その人が囲まれて、消えた。 怖いとか逃げなきゃみたいな気持ちは起きなかった。 「別のお客さんも来るんだ。」 「…顔みました?」 「いいえ、ぼんやり影っぽくて全然。話してた言葉もよくわからなかったです。」 「そうでしたか。いつも通りこちらから…」 「あのチケットって無くしたり破れたりしたら無効だと思うんですが、

        • やること2、祝福せよ

          サトシの番号を着信拒否にし、 職場と親交の深いサークル仲間宛に、メールとLINEで近々電話番号が変わる旨を送った。 中学時代から解放された私のフィールドは、 ありとあらゆる音楽や書物、「沼の主」たちとの交流を経て、 渓谷と鬱蒼としたタイガの森、そこに暮らす動物たちの声がひしめき合っている。 探し当てるより新たな文化や文明を拓く方が楽しいフィールドなのだ。 「好み」や「趣味」というコントラストがあるからこそ、人生が「山登り」になり「旅」になり、地形に富んだ理想郷を生み出して

        やること4、読みたい本を読む

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        • 死ぬまでにやりたい100の事
          8本
        • (有)大丈夫本舗の人びと
          2本

        記事

          やること1、断捨離

          …思い返して。まったく雑談じゃなかった。 むしろ、なんか重かったな。 いや、重くしてるのは目の前でひたすら絶望してるサトシだ。 ウザい。ウザすぎる。お前、悲しむ要素なくない? 沸々と苛立ちに変わった。私の人生勝手に悲観されてたまるか! 「え、1年も猶予があるの?ラッキー♪」 「え」 このひと言でサトシの感傷をぶち壊した。 いい気味だ。 「普通は突然死んじゃうわけじゃん?てことはさ、お片付けできてなかったら、自分の死後いろんな人に性癖晒されるわけじゃん?そっちの方が怖く

          やること1、断捨離

          再会

          病院からの鬼電なんて人生初だった 病院だけでなく、サトシからの着信もかなり入っていた。 サトシからの電話なんて約20年ぶりだった。 かけ直すと、ワンコールで出た。 「もしもし、サトシ?久しぶり、昨日電話出れなくてごめん。どうしたの?」 「こっちの電話には出るのか…今日って時間ある?昨日のMRIの結果でお話ししたいことがあるんだけど。」 そうか。病院の電話はサトシからだったのか。 「何時から空いてる?」 「今日の日中は休みだからいつでも。19:30以降は診察当番だから飲みに

          ノリで人間ドックに行ってきた

          「最近、イカロスになって上手に島から脱出するみたいな夢見るのよねー」 「なんだかICO(昔の孤島脱出ゲーム)みたいだね。」 ユナのくちびるが桜色に塗り変わる。春色のリップいいな。 「でもさ、駅員さんに言われる切符の有効期限だけ、どんどんカウントダウンしてくの」 「えー、余命宣告みたい」 「でも健康診断でどこも異常ないんだよ?」 「いうて、今までバリウムとか血液検査なかったじゃん?まさかのがん見つかったりして」 ユナのまつ毛が2倍の長さになっていた。 まさかね。 私たち35

          ノリで人間ドックに行ってきた

          プロローグ: パイプ椅子のイカロス

          夢の中で空を飛ぶ。 よくある夢のひとつだと思う。 でも、「パイプ椅子振り回してたら空飛んでたわ」 なんて人は稀だと思う。 その夢の中でパイプ椅子を操って、翼のように自在に飛べた。 「エーゲ海はええ下界…」 しょうもないことを言った瞬間、バランスを崩して落ちかけた。 幸い近くの駅に無事降り立つことができた。 よく見ると蔦が絡まり、廃屋と化した駅舎だった。 誰もいない。 左から快速電車が颯爽と駆けていく。 風が心地いい。レモンの香りも漂ってくる。 レールを辿ればどこかの駅に着

          プロローグ: パイプ椅子のイカロス

          作者の自己紹介まだだった

          初めまして。 朝香春(あさかはる)と申します。 普段は立ち仕事と座り仕事のWワークをしています。 北緯69.7°、東経170.3° の港町出身ですが、 日本人に帰化して30年。 義務教育も高校教育もまじめに受けて、 日本語にどっぷり浸かってきたおかげで、 かつての母国語が宇宙語に聞こえます。 『(有)大丈夫本舗の人びと』、 『まだらの夜』、 それぞれ作風の違うお話ですが、 ほのかに記憶している港町が舞台になっています。 (某国崩壊前で極貧でしたが、現在は違うと思います)

          作者の自己紹介まだだった

          雨を呼ぶとき

          「えっと、特技は雨乞いです。宜しくお願いします」 ああ。しくじった。 気象部に配属されて舞い上がってしまった。 スコールやブリザードの発生は、多い時で22時間中5回以上。 荒れ狂う気流の速度と、雲の立つ角度から、 今後の気象状況を瞬時に計算して警報を出す。 そんな先鋭部隊を前に「非科学の力を信じてます」 と言ってしまったのだ。 全身のありとあらゆる水分が蒸発していく心地だ。 「雨乞いか…粉塵警報出たらぜひお願いしたいもんだな」 上司が怪訝そうに上下のまぶたを細めたことを

          雨を呼ぶとき

          自己申告紹介

          空気に少し鉄の臭いがかかる。春だ。 あらゆる場で「自己紹介」を強要される季節が、来た。 特に今年は大規模異動の年に当たる。 「自己紹介なんて「職務上の名前」だけでよくないですか? なんで前どこの部署にいたって言わなくちゃなんですかね。」 指元のポールモールがフィルターギリギリまで茶色に染まっていた。 金曜日中に1カートン発注しとけばよかった。 「たった1分の自己申告じゃん。身内みたいなもんだし適当でよくない?」 目の前で鍋をつつく先輩の自己紹介といえば、 配属年は「書

          自己申告紹介