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【本に寄せて】全員がサラダバーに行ってる時に全部のカバン見てる役割(岡本雄矢・幻冬舎文庫)

タイトルは短歌になっている。
五・七・五・七・七のリズムとは多少違うが、三十一文字で構成される、立派な短歌だ。

全員がサラダバーに行ってる時に全部のカバン見てる役割

本文より

私、これになりがち。

でも作者の岡本さんと私は違う。
彼はカバンを悪意から守ることを宣言しない。
あくまでさりげなく見守るだけだ。

私ならハッキリ言う。
「あ、みんな先に行ってきて。私、荷物見てるから」

すると先に行く組と、後から行く組に、自然と分かれる。
ひとりでひっそりカバンを見守ったあげく、「なんでみんなと一緒に取りに行かないの?」とツッコまれることもない。


この本は短歌とエッセイの本だ。
短歌がいくつか載っていて、それらに関するエッセイが載っている。
これが交互に繰り返されていく。

この形式の本が私は大好きだ。
とくに千葉聡さんのものが好き。

でもこの岡本雄矢さんのもなかなかいい。

岡本さんは「もってる」人だ。
いや、逆か。
「もってない」人かもしれない。

自分だけ、がっかりな事件が起こってしまう。
そういう体質だ。

でも本人はお笑い芸人だから、そういう体質は有効活用すればいい。
その意味ではやっぱり「もってる」のかな。

本の短歌やエッセイはどれも面白かった。
なかでも秀逸だったのはミッキーマウスの話。

すごく面白いから、ぜひ読んでいただきたい。

といってもミッキーマウスの件。
元ネタは岡本さんの相方さんだ。

「もってる」ような「もってない」ような…。
微妙な人である。


とりあえず頷いてるが僕バック・トゥ・ザ・フューチャー見たことがない
ものすごい数のハトが集まっているおじさんに人は集まらない
さっきまで順調だったレジの列 急にもたつきだす僕の前

本文より


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