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[推し本]スピノザの診察室(夏川草介)/読むクスリ。和菓子ネタにクスリ。

今は京都の町医者、しかし元々大学病院で教授職を嘱望されうる消化器内科で内視鏡手術のプロ、雄町先生が訪問診療先で出会う患者や看取りを通じて、医療とは、を問う作品です。

雄町先生は末期のガン患者には、がんばらなくても良い、ただ、あまり(逝き)急いでもいけないと言います。
病気が治ることが幸福だと言う考え方では病気が治らない人は不幸なままなのかと。たとえ病が治らなくても人は幸せに過ごすことができるはずだ。そのために医者である自分ができる事は何かと考え続けます。
大学病院の時には、病変は見ても患者個人を見ていなかったのが、町医者になってからは、高度な医療技術を発揮する場面は少なくても、患者個人が見えるようになってきます。
そして、老いや病を「受け入れる」ということにほんの少し希望を持てそうな滋味あふれる一冊です。

医療は最後には敗北する、とどこかで以前読みました。
確かに人は必ず死ぬので、医療は死なない人を作ることはできません。だからこそ、患者自身も病を得たときにどう向き合うのか、人生の下り方を誰にどう伴走してもらいたいのか思いを伝えることも大事ですし、それを掬い上げてくれる、雄町先生のようなお医者さんに見守ってもらえるといいですね。

甘いものに目がない雄町先生お気に入りの京都の和菓子、阿闍梨餅や緑寿庵の金平糖など、がたくさん出てきます。
生唾とともに、ちょっと雄町先生、食べすぎやん、糖尿病に気いつけてや!とツッコミたくなります(笑)。


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