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地方公立高校と大学の再編

国公立大学の前期日程試験も終わり、また2月から3月へと月日が移り変わろうとしている。3月になれば、国公立大学の中期・後期日程試験、さらには各地の公立高校の入学者選抜が行われ、入試シーズンもラストスパートといった時期だ。

受験生にとって重要な時期だが、こうした入試に携わる方達にとっても悩ましい時期だろう。少子化が急激に進む日本において、志願者の確保と定員の充足は死活問題だからだ。しかし、日本の大学全体でみたとき、少子化への対応は遅れていると言わざるを得ない。2024年度も新設大学の設置が進められている。また、既存大学の定員数もそれほど減っているという印象はない。もちろん、大学内では、定員の増減が学部・学科単位では行われているが、大学全体としてみた時の定員はほとんど減っていないはずである。少子化に伴う大学進学者数の減少に合わせて、大学収容定員の削減をしていくという議論も見かけない。

日本の出生数は、2023年が約72万人である。ちなみに、2023年上半期時点では、約74万人と予測されていた。2023年上半期時点での予測さえも下回る、急激な速さで少子化は進展しているというのが現状である。もはや少子化ではなく、無子化といっても過言ではないかもしれない。

繰り返しになるが、このような状況が意味しているのは、大学入学者数の減少である。以下のリンクは、直近4年分の大学入学共通テストの志願者数が書かれている。それによれば、2021年度(令和3年度)に約53万人いた志願者は、2024年度(令和6年度)には約49万人と、遂に50万人を切るところまで来ている。大学進学者数は60万人ほどである。

ここで、公立高校の状況を検討してみよう。当たり前だが、高校は大学よりも先に少子化の影響を受ける。また、公立の場合、そこで勤める教員は公務員で解雇させることはできないため、各自治体の教育委員会は採用数を慎重に検討していると思われる。また、どこの自治体も高校について、中長期の再編整備計画を立て、学校の統廃合を断行しているところである。

学校の統廃合について、特に地域からの反発もあるが、一定数の子どもがいなければ、効果的な教育を行うことはできないという見解のもと、地元の反対を押し切って再編が進められることも少なくないという印象を受ける。言い換えてみれば、子どもがいなくなっているなか、教育の質をなんとか維持するために、各自治体は半ば豪腕とも言える方法で少子化を見据えた動きをしているとも言えるだろう。

なお、全国の公立高校の募集定員数の合計を調査した統計や募集定員の推移を一元的に掴めるサイトなどは、私は見つけることができなかった。各都道府県の教育委員会等が公表している高等学校学生募集要項などを、個別に確認して集計していくしかないかもしれない。

しかし、公立高校の募集定員が減少していることは、肌感覚では確実である。試しに、人口が増えているとも報じられることもある東京都の募集状況を見てみよう。リンクは令和6年度、つまり最新の募集状況である。それによれば、あの東京都でさえも定員を395人減らしている。10学級の減少とあるから、大きい学校1校分の定員がなくなっているのである。

さて、ここでもう一度大学の定員数に目を向けてみよう。これは少し古い情報だが、平成12年から平成30年にかけての国公私立の各設置区分ごとの定員数の推移を示している。

出典:文部科学省 審議会資料
(審議会名称、開催日不明、「国立大学 入学定員 推移」で検索)

このように大学全体の定員は減るどころか、むしろ増加傾向にある。また、国立大学も漸減といった様相で、18歳人口の減少ペースに見合ったものには見えない。私立大学の公立化という動きもあってか、公立大学も期間中に約1万人の定員増となっている。

この現状を見るに、公立高校が進めているような再編あるいは規模縮小を、大学は行う意志・覚悟を持っているのだろうか。近年では、女子大とか短大を中心に募集停止を発表する学校も目立つようになってきた。また、国立大学でも法人や大学の統合が行われたり、議論されたりするようになっている。とは言え、地方においても高等教育を受けられる環境があるというのは日本の強みでもあるだろう。そのため、地方にもその地域の核となる大学を守りつつ、大学全体での規模縮小を、国公私の区分を超えて議論する必要があると考えている。

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