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絵本づくりと祖父の面影。

この夏は、私にとって何か特別な時間だったように思います。
正直、パタリと文章を書く意欲が去ってしまいました。
noteを開いてもなんだかポカンとしてしまい、何度もそのまま閉じました。
でも、創作意欲の泉的なものは枯れていたわけではなく。
何も全部言葉でやろうとしなくてもいいのか、という境地に至り、音符の力を借りることにしました。

“story”というタイトルでピアノ曲を作ってみました。
(編曲とピアノ演奏は友人にお願いしました。ひろこちゃん、ありがとう。)

この曲のイメージは“いつもの帰り道に突然現れた不思議な本屋”(前回noteに記した『白い本しか置いていない本屋の話』)です。

私の中で、そのくらいのイメージの中で膨らめた曲。

しかし、出来上がったこの曲を繰り返し聞くことで私自身が初めて気づくことがたくさんあり驚いています。

まず、このやや悲しげな曲調。三拍子。妙な異国情緒。
もっと明るい曲で良かったんじゃないの?と自分に投げかけても「いや、これでいいの」と返ってくる。じゃあ、この音の源泉はどこに?

答えは、亡き祖父にヒントがありました。

昔、大好きな祖父からもらって大切にしていたオルゴール。
音楽に合わせて鏡のステージでバレリーナの人形がくるくる踊ります。
曲は、ゴッドファーザー〜愛のテーマ〜。
そして、祖父が好きだったロシア民謡のメロディ。
祖父からよく聞かされた、満州の地の石畳、その上を行くハイカラな馬車。ガス灯。そして街並み。

気づいたら、そんな思い出やイメージたちが曲に反映されていました。

そしてもう一つ。

私が手作りの絵本屋をはじめたきっかけとなった、一番古い体験である、祖父の葬儀を思い出しました。
私は、その席で弔事を読んだのでした。
たくさんの参列者が涙し、また、「私のときにも読んでほしい」というお声まで頂きました。

『私はこんなことが得意なのか。得意なんて不謹慎か。でも、亡くなった人を静かに思い涙できる機会を提供できるとしたらとても意味があるのかもしれない。人々の心の中には、文章に換えられることのない尊い思いが沢山眠っているものなのかもしれない。』

そんな風に思ったことを、ふと思い出しました。
そしてその思いは、まちがいなく、今の絵本づくりの仕事の根底に流れ続けています。ー誰かの思いを預かり、自然な形で書き起こし、それを誰かに届けたい、という思い。

えほんやを始めて1年ちょっと。
気づけば、お誕生日プレゼントや結婚式向け、バレンタインの贈り物など、どちらかというとおめでたい作品をたくさん創ってきました。
そんな中、ふと、悲しみや弔いに焦点を当てた作品にも取り組んで行きたいという気持ちが湧いてきたのです。

そして、今月頂いているオーダーのえほんのテーマがまさに「命」。

この巡り合わせに、静かに感動しています。
毎回確実に、お客様のご依頼に新しい課題を頂き、次のステップに導かれているのを感じるからです。
新たな一冊も、誠実に仕上げていきたいと思っています。

・・・と。

書けなくなって弾いてみたら、ドドドとヒントが押し寄せてきたこの夏。
きっとまた筆を握ったまま無力に立ち尽くしてしまう日もあるかもしれないけれど、そんな時はピアノの蓋を開いてみようかな。

そういえば、ピアノを私に与えてくれたのも祖父でした。

亡くなってもなお、こうして強くあたたかく影響してくれる祖父に心から感謝しています。

とりとめないようで最後一つにまとまった2018年夏!

周りに存在してくれるすべての人にも、心から感謝です。

はなむらここ

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