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【本】ゾンビ・パラサイト

私たちは自分の意思で行動していると信じています。でも「行動にどれくらい自分自身の意思が反映しているのか」というのは心理学でもとても大きな問題です。

「自分の意思で行動しているのが当たり前じゃないか。自分がこうしようと思ったから,いまこれをしているんだ」と思うかもしれません。

でもたとえば,自分がいまこの文章を読みはじめたという判断に,どれくらい自分自身の意思が反映しているといえるでしょうか。

たとえばどこかのリンク元から何気なくこのページに飛んで読み始めたらいきなりこんなことを聞かれて,それに対して「最初から読もうとしたに決まってるじゃないか」なんていうふうに,後づけで考えたりしていないでしょうか。最初からそうしようとしていたのではなく,聞かれたからそう思っただけなのかもしれません。

自分の意思が行動に反映しているのかどうかというのは,それはそれで大問題なのですが,今回紹介する本はその大きな問題に私たちを直面させ,当たり前だと思っている常識を揺さぶり,不安にさせてくれます。

それはこの本です。
『ゾンビ・パラサイト:ホストを操る寄生生物たち』 (岩波科学ライブラリー)

この本には,寄生することで本体の行動をコントロールする寄生生物の例が次々と登場します。

寄生する,というとやはり寄生虫のようなイメージがあるかもしれません。

でもたとえば,アリを温度と湿度がちょうど良い場所の葉っぱの裏に誘導し,アゴで葉っぱに噛みつかせ,その状態のままアリを殺し,そのちょうどよい環境でアリの体に菌糸をのばして繁殖する菌類の話を読むと,そのもともと抱いているイメージは大きくひっくり返されます。

そして本に出てくる最後の例は人間です。人間に感染して深刻な問題を引き起こす可能性があり,実際に多くの人々に感染しているのがトキソプラズマです。これはまだ可能性に過ぎないという点は,いちおう安心させられます。

ちなみにトキソプラズマについてはこちらの記事もどうぞ。

薄い本なのですぐ読めてしまいますが,我々が何気なく信じている自由意思にもつながり,自分自身を問い直すきっかけとしてもおすすめの本です。

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