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諸星新会長の”オーガスタ詣で”報告、そして選手達に理解して欲しい事

 日本ゴルフツアー機構(JGTO)の新会長・諸星裕氏がマスターズが開催されるオーガスタナショナルゴルフクラブに出向き、世界のゴルフ団体の責任者といろいろな対談をするという記事を投稿しました。

 帰国後、日本ゴルフジャナリーリスト協会会長・小川朗氏とのインタビューでその詳細を語っていましたので紹介します。


〇ジャパンゴルフツアー現在の立ち位置

【小川】 それでは早速、本題に入りたいと思います。就任早々、マスターズの行われているオーガスタ・ナショナルGCに出かけられて、各国のフェデレーションのトップに会われたとか。成果はいかがでしたか?

【諸星】 日曜(4月7日)にこっち(日本)を出て、現地の日曜の夜中に着きました。開催週の月曜日(4月8日)から3日間、毎日世界の主なプロゴルフ・ツアーの幹部諸氏と会議を行いました。初日はワールドランキングのポイントについて話し合う会議でした。うち(JGTO)のツアーの基礎点が下げられちゃいけないんで、これは真剣にならざるをえませんよね。今、(ランキング対象の)ツアーって、世界に26もあるんですよ。今回、26番目のスコットランドのツアーを入れるかどうかが議題になりました。80人程度しかプロがいないツアーですが、結局26番目のツアーとして承認されました。

【小川】 日本のツアーは一昨年の8月にもポイントが大幅に下げられてしまいました。前体制の間に、JGTOはガラパゴス化して日本ツアーの存在感が、がた落ちした感があります。

【諸星】 今回出席できたことで今JGTOが相対的に見て、どう言う状況にあるかがよく分かりました。

【小川】 初日から重要な会議に出られて、残り2日も相当お忙しかったのでは?

【諸星】 次の日から2日間は、昔からあるフェデレーション(インターナショナル・フェデレーションズ・オブPGAツアーズ)の、6つのツアーと個別に膝詰め談判ができました。アメリカ、イギリスヨーロッパのツアーとオーストラリア、アジアツアー、それから南アフリカのサンシャイン。会長になってまだ日が浅いですから、向こうから聞いてきても僕が分からないこともあるわけですが、そこはスタッフが答えてくれましたから、有意義な3日間になりました。少なくとも、多くの種は蒔けたと思います。僕としては長い間スポーツの国際交渉をやってた人間として、久しぶりにああいう舞台で水を得た魚というか、楽しく仕事ができましたね。

JGJAオフィシャルwebサイト(一部加筆)


 一昨年からジャパンゴルフツアーの世界ランクポイントが大幅に減らされたことにより、以下2つの理由により選手層がより薄くなりました。

1.日本の有力選手達が世界を目指すために、必要不可欠な世界ランクのポイントはジャパンゴルフツアーでは稼げなくなる。
 ポイント配分の高いPGAツアーや欧州ツアー(DPワールドツアー)に出向いてしまうため、有力選手達がいないツアーになり更にジャパンゴルフツアーではポイントが稼げない。
2.海外からの選手達も1.と同様な意見で、ジャパンゴルフツアーにそっぽを向いてしまい、世界ランクの低い日本人選手達しか残らない。

 現状韓国男子プロゴルフツアーも、ジャパンゴルフツアーと同じくらいの試合数(22試合)を開催し、DPワールドツアーやアジアンツアーとの共催試合もスケジュールに組み込まれており、韓国ツアーからでも世界を目指せるということもあり、以前に比べれば日本に出稼ぎに来る選手は減少しました。

 長年ジャパンゴルフツアーは”ガラパゴス化”していると言われていますが、諸星会長は海外の声を聞き、改めて認識したことでしょう。

〇もう一度ツアー提携を密にし、新規大会を開催しよう

【小川】 (中略)新任早々お忙しい日々を送られているわけですが、今後の目標はというと、やはり23試合で総額33億円と、低空飛行が続くJGTOの状況を少しでも回復するということになりますか?

【諸星】 会見でも「(1シーズンの賞金総額が)PGAツアーで800億円ぐらい。日本やヨーロッパを全部合わせて1300億円ぐらい。その中でわが国は10年前からずっと33億円」と現状をお話ししましたが、それを打開するのは、やはり環太平洋の各ツアーと連携していくしかないんです。

【小川】 国内のスポンサーだけでは手詰まりであることは、よく分かります。会見では確か「日本からインド、オーストラリアまで合わせると世界の人口の3分の1になる。その辺りでいろんなことが一緒にできれば、世界的なさまざまな企業がスポンサーになるということが考えられる」と仰っていました。環太平洋の大きなツアー構想も描けますよね。

【諸星】 個人的にはまず、韓国、中国、シンガポール、それからオーストラリア、インドまでの各国ゴルフ界のリーダーを招集して話をしてみたいですね。

JGJAオフィシャルwebサイト(一部加筆)

 当時「ワンアジアツアー」という、韓国・中国・オーストラリアを中心としたプロゴルフツアーがありました。
 しかし現存するアジアンツアーとの”対立”が、ワンアジアツアーの発展を妨げてしまい、いつの間にか自然消滅してしまいました。
 そしてアジア・オセアニア各国で独自なゴルフツアーを持っています。
 韓国ツアー、オーストラレイジアツアーが代表例です。
 これらのツアーと提携し、世界的スポンサーを呼び込んだ試合を諸星会長を始めとして各ツアーの責任者が手を取り合い、年に数試合開催できるだけでもツアーの魅力が増すことは間違いありません。

〇JGTOと選手の関係

【諸星】 選手には、海外の試合にどんどんチャレンジしてほしい。それと選手たちが、JGTOと自分の関係ってのは分かってんのかな、とまず思ったんですよ。社団法人の社員って、会社員の社員ではない。要するにそこの会員ですよね。社員は194人のツアープロと、会長である僕だけなんですよ。それを彼らにまず問いかけてみようと思ったんです。JGTOという組織があって、選手であるあなた方が実はすべてのことを決定するオーナーでもある。JGTOは、言わば芸能プロダクションみたいに考えててくれればいいかもしれない。この芸能プロダクションはいい仕事を取ってきて、ちゃんとお金も用意して、広告も出していろんなお世話をする。芸能プロダクションとあなた方が違うのは、雇用関係はないわけで、一人一人が個人事業主であるということ。JGTOは規則を作って様々なことをするけれども、その規則に違反しない限り「出ちゃいけない」とか「出ろ」とか言えないわけですよ。

【小川】 その辺の説明が、選手にしっかりされていなかった感じはしますよね。専務理事や青木さん寄りの理事に対する不満は、選手から本当によく聞きましたから。

【諸星】 僕も何十年前にスーツケース一個で日本を出て、大学院に行ってカナダの刑務所で働いて、また戻ってきて大学院に行って教えたりといろんなことをやったけど、誰にも拘束されず自分一人で道を開いていって生きてきた人間だから、彼らもそれにすごく共鳴をしてくれた感じはしました。だからあなた方たちは全く同じことなんだよ、と。最善の舞台を作ってやるのがJGTOのスタッフであり、役員の仕事であると。そういう関係だからみんなに対して強制力は本当にない。出場停止とか罰則規定あるけど、それはよっぽどのことをしない限り関係ない。それを平易な言葉で伝えたんで分かってくれたんじゃないかなと思います。その後アメリカやオーストラリアの選手もいたんで集まってもらってちょっと話して、僕のアドレスを教えてメールくれって言ったらすごい喜んでくれたんで、良かったと思いますよ。

JGJAオフィシャルwebサイト(一部加筆)

 諸星会長がこのようなことを語らなかったら、選手達は全く知ることもなかったでしょうし、まだ前体制から続く”いざこざ”は解消されずじまいだったと考えます。
 そういう規律をしっかり作ってもらい、選手達のパフォーマンスをより発揮させ、ツアーを活性化されるというのもJGTOの仕事であると思うのですが、現状は…。

 今回の対談で、今までオープンにされていないことを”やっと”少しでもオープンにしてくれた諸星会長に感謝したいです。
 そしてこれまで”失われた25年”を取り返すべく、JGTOの改革が少しでも進んでくれることを願うばかりです。

 


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