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わたしと彼女の物語を通して:バンクーバー・ダウンタウンイーストサイド(DTES)における薬物依存と法の関係性を考え直す


2023年12月19日

はじめに

このnoteでは、わたしと法そして先住民法の関係性をこれまでの関係を踏まえて再考し、こうした立場にあるわたしがダウンタウンイーストサイド(DTES)で働く中で経験した彼女(アキ、仮名)との記憶を振り返り、いかに法がわたしたちの経験に影響を及ぼしたのかをお話しします。最後に、こうした法の理解を通して私の価値観がいかにわたしのソーシャルワークの経験に示唆をもたらすのかについてもお話します。
ちなみに、このnoteは、私がソーシャルワークの法律の授業で英語で書いたものを基にしています。翻訳の問題上、おかしな日本語があるかもしれません。そちらを踏まえてお読みください。

わたしとカナダ法(Canadian Law)

カナダ法の私の理解は、人文社会学を専攻する留学生時代に深まりました。わたしの個人的な法との関係性はとくに、コロナ禍がもたらした困難の中で明確になりました。大学院で、フェミニズム、脱植民地化、批判理論の概念を用いてセクシュアリティの言説に関する博士課程研究をしていた私は、ジュディス・バトラーの『ジェンダー・トラブル』(1990年)やミシェル・フーコーの『セクシュアリティの歴史』(1976年)といった古典からの影響を多大に受けました。これらの古典は、個人を権力に従属化させる(subjectification)法の役割を批判するものでした。法の排他性に関して知的レベルで理解していた私が本当の法の力を経験するのはコロナが始まってからでした。法の、個人を枠組みの中で定義し、抑圧する性質は、留学生という不安定な身分でコロナ禍を過ごす私を苦しめました。

私はコロナに関する国際的な制約から、海外でのフィールドワーク研究に対する不十分な資金調達という問題に直面しました。その結果、研究を行うことも家族と再会することもできないまま、カナダの土地に拘束されることとなりました。さらに、留学生の身分のためCanada Emergency Student Benefitの対象外となり、これがカナダ法の排他性を更に浮き彫りにしました。この排他性が無力感や無価値感を招き、この時、おそらく人生最大の行き詰まりを感じていました。

ソーシャルワークの学生として法を学ぶ中で、既存の法の理解をなぞるような内容も学びましたが、法が個人を保護するためにどのように機能するかといった新しい側面も学びました。前者として、法の想定する人格が本質的に健全な身体の白人男性であるというものや(Hunter、2013)、法がしばしば個人を彼女ら・彼らの文化的な文脈から暴力的に切り離しすという暴力性(Hightower and Anker、2016)について学びました。こうした法の性質は、特に植民地主義の文脈で顕著であり、それは先住民の勇者Mikomosisがカナダ法の暴力性によって死刑に課されるという実際の物語を描いた『Mikomosis and the Wetiko』(Napoleon et al.、2013)で具体的に示されています。カナダの植民地主義の国家プロジェクトは、インディアン法(Starblanket and Hunt、2020)を通して先住民を彼らの土地から排除することを目指しています。法の、脆弱な人々を周縁化し、人種差別化するという役割は、私の今までの法の理解に沿うものでした。

また、法が個人を危機的状況から保護するために機能する側面の学びを通し、クライアントへの有効な支援のために法的メカニズムを包括的に理解することの重要さに気付きました。例えば、法は個人が自分自身や他者に危険をもたらす場合に介入し、医療ケアへ繋ぐ役割があります(Regehr and Kanani、2015a)。さらに、法は個人の人権が侵される危険を防ぎます(Regehr and Kanani、2015b)。授業で読んだDVを受ける移民女性Nalaがいかに法により保護されたのかという物語は、とくに移民の私の心に響きました。ソーシャルワーカーとしての法律に対する学びの必要性を改めて感じました。法制度の継続的な学習は、リソース不足により搾取される可能性がある人々を保護する上でとても重要となることを、改めて実感しました。

わたしと先住民法(Indigenous Law)

正直なところ、私は先住民法について全く事前知識がなく、その存在自体知りませんでした。これはいままで私が先住民の法体系に対して無関心な態度でいたことを露呈しました。当初、わたしは先住民法について学ぶことにわくわくしていました。それは今までの私の法の理解とはまったく異なるものだったからです。インタビューやテキストを通して、私は先住民法が人々とコミュニティをその軸の中心においていることを学びました。それはまったく排他的ではなく、対話、協同の意思決定過程、および持続可能性に価値を置いていました。(Napoleon and Friedland、2014; Asch et al., 2021; University of Victoria Law Research Unit、2015)

しかしながら、私のこうした最初の反応は一元的な先住民(Pan-Indigenous)という視点を反映していました。先住民は無機質な単一の国民と見なされ、これらのコミュニティ内に内在する多様性は看過されるという視点です(Snyder et al.、2015)。Snyder et al.(2015)の性暴力と先住民法に関する論文を読んだ後、私は自分の認識が理想化されていることに気づき、先住民法には批判的な視点で接する必要があると認識しました。この気づきは、そのほかの法と同様、先住民法には権力関係が内在し、しばしば問題がジェンダー化されているという点から得られました。

わたしとアキ

さて、わたしとアキのことをお話ししたいと思います。アキとはわたしがダウンタウンイーストサイド(DTES)のシェルターで働いているときに出会いました。DTESとは、バンクーバーのダウンタウンの東側、ガスタウンとチャイナタウンにまたがるイーストヘイスティングス通りの地区を示す言葉です。ホームレスや依存症、メンタルヘルスの問題を抱えた個人のための医療・住宅サービスが集約されており、その利用者が集まる、いわゆるホームレス街として有名な地区です。私が働いていたシェルターも、そうした個人へのサポートを主としたNPOが運営するものでした。


アキは性暴力から逃れるためにシェルターに避難してきた、若い先住民女性でした。滞在中、アキは心的外傷後ストレス障害(PTSD)に対処するためのカウンセリングを受け、心の健康の維持とトラウマに対するコーピング行動として薬物を使用していることを打ち明けてくれました。アキは非常に前向きで明るい女性で、しばしば将来の夢をスタッフに共有してくれていました。希望に満ちていた彼女は薬物使用を辞める決意をしていました。
 
アキの希望で、私たちは依存症の治療センターのサービスを手配しました。そこでは断薬(abstinance)が主な目的で、ある一定の期間そこでのプログラムに参加しながら依存症からの回復を目指す場所でした。アキが治療センターから帰ってきた後、状況は大きく変わりました。彼女はより引きこもりがちになり、スタッフとの交流を避け、自分のユニットに閉じこもるようになりました。それからすぐ、アキは行方不明になりました。私たちは警察に行方不明者報告を提出しましたが、結果的に、彼女は薬物の過剰摂取により、道端で亡くなっているのが見つかりました。

私は、この状況には4つの要因が寄与していると考えます。1) DTESの人々への人種差別化、2) 植民地主義の影響、3) 薬物の犯罪化、4) 回復のための限られた資源です。BoydとNorton(2019)は、違法薬物の使用者は、彼女ら・彼らの生活のあらゆる側面は「法的領域(legal realms)」(p. 265)と結びついていると論じています。これは、アキが法とその権力関係の入り組んだ渦に絡めとられていたということを示唆しています。私は、暴力にさらされた先住民女性への法の影響を考えるにあたり、この法の複雑さを解明する必要があると考えます。また、私の認識がどのような偏見や権力構造の影響を受けていたのか批判的に検討することは、ソーシャルワーカーとしての重要な仕事だとも思います。

1)DTES(ダウンタウン・イーストサイド)のコミュニティの人種差別化

最初に、アキが行方不明になり、路上で亡くなった際の警察とのやり取りについてお話したいと思います。警察のしつこいほどのDTES地域住民の人種差別化と犯罪化は、アキが正当なサービスを受けることの妨げとなっていたと言えます。警察がアキの行方不明に関する調査のためにシェルターに到着した際、私は彼女の薬物依存についての懸念を彼らと共有しました。それに対し、警官は軽蔑的に「ここではみんながヤク中だろ」と言い、にやりと笑いました。その瞬間、私は彼らがアキを真剣に捜索しないだろうと察しました。なぜなら、警官はおそらくアキが「彼女の前に失踪した多くの先住民の女性と同様、ドブの中から現れるだろう」(Williamson、2014)と思っているのだと感じたからです。
 
私はDTESで働いているとき、よくChan and Chunn(2014)の言葉を思い出します。それはDTESはゴミのように使い捨てできるコミュニティとして人種差別化され、非人間化されているというものですーーーこれはDTESの物悲しい真実なのです。彼女ら・彼らは危険な環境にいる個々の人格ある人間として見られるのではなく、本質的に危険であると見なされ、それゆえに「理想的な」犯罪者と決めつけられています。1970年代後半、バンクーバー警察は先住民の女性が多数失踪する事件(MMIW:Missing and Murdered Indigenous Women)を当初調査しませんでした。それはほとんどの女性がセックスワーカーであり、「理想的でない」被害者と見なしていたからです。残念ながら、この侮蔑的態度は今日も続いています。メディアもDTESの犯罪化を再生産しています(Boyd et al.、2015)。実際、DTESの住人を同じ人間ではなく、ゾンビや犯罪者と呼ぶ一般人も多くみてきました。私はソーシャルワーカーとして、警官の人種差別的な態度を改めるようその場で指摘するべきでした。それは彼らが自らの偏見と向き合う契機となり、アキが人としてまっとうなサービスを受ける機会となるものでした。

2)植民地主義の影響

第二に、植民地主義の影響はアキの運命に大きく影響を及ぼしました。特に先住民コミュニティへの依存支援の不足においてです。アキが薬物過剰摂取で亡くなった際、私の先住民の同僚は「これは殺人だ。また先住民女性が植民地主義によって殺された」と訴えました。同僚の主張の妥当性を認識しながらも、私は当初、植民地主義とアキの入り組んだ相互関係を十分に理解していませんでした。植民地主義の歴史を振り返ると、先住民文化の破壊は毛皮貿易によって18世紀後半にアルコールが導入されたことから始まりました(van der Woerd et al.、2010)。

植民地主義が、コミュニティの依存問題を育む一因となったのは言うまでもありません。インディアン法、寄宿舎学校、60スクープ(里親問題)、そしてミレニアムスクープと今日に続く壊滅的な植民地主義の影響は、先住民のコミュニティに世代間のトラウマを植え付け、先住民の依存問題の根本にあるといえます(Russell et al.、2016)。寄宿舎学校では15万人の先住民の子供たちが取り上げられ、抵抗すれば刑務所に入れられ、寄宿舎学校にて言語と文化を破壊し白人文化に同化する教育が行われてきました。そこで3200名以上の子供たちが栄養失調や感染症で亡くなり、生き残った子供も虐待や親の愛情から引き離されたトラウマで薬物やアルコール依存症に陥りました。そうしたトラウマの連鎖は世代を超えて今も起こっており、現在、保護中の子供と青少年(CYIC: Children and Youth in Care)の54%、ホームレスの40%は先住民です。こうした植民地の貧困、依存症の連鎖から逃れることはとても難しいです。

政策立案者が十分なサポートを提供しないことにより、先住民が日常的に直面する依存問題は悪化の一途を辿っています。先住民はカナダの人口のわずか2.6%を占めるにもかかわらず、薬物過剰摂取(OD)による死亡の10%を占め、ODによる死亡のリスクが非先住民よりも5倍高いことが示されています(Lavalley et al.、2018)。先住民コミュニティのOD問題の根本的な構造に対処するための政府の支援が不十分であることは明らかであり、最終的には植民地主義問題に加担する私たち開拓者や入植者(settler)に責任があると言えます。こうした学びを通し、私はなぜアキが植民地主義の犠牲者であること、その悲劇的な最期にSettler(入植者)としての私の役割があることを理解しました。

3) 薬物の犯罪化(Criminalization)

第三に、薬物の犯罪化とそれに伴う薬物使用に対する偏見は、私のアキへのサポートの方法に大きく影響を及ぼしました。ハームリダクション環境でサポートワーカーとして働く私は、薬物使用者に対して先入観によらない(non-judgemental)支援をすることが仕事です。アキがはじめ薬物使用に関する自分の経験を共有することに躊躇していた点からも見られるように、彼女は薬物使用に対して後ろめたさを感じており、一貫して薬物を完璧に辞めたいという意向を示していました。私はそうした彼女の意向に従って、治療センターへの手続きを手配しました。アキと私は、薬物からの回復(recovery)の潜在的な利点を共に理解していました。私は彼女が治療センターに入ったことをほんとうに嬉しく思いましたが、その気持ちの裏側にはやはり、薬物使用は根本的に害のあるものであるという根深い偏見がありました。

カナダの薬物政策に組み込まれた歴史的な人種差別は明白であり、それは1908年のアヘン薬法(The Opium Act)から始まっています。その歴史の大部分で、薬物予防政策は保健福祉ではなく刑事司法の領域に位置付けられ、依存症の回復の治療よりも厳罰措置が優先されてきました。1990年代まで、Abstinence (薬物やアルコールを一切絶つということ)がしばしば治療の唯一のアプローチでした。Harm Reductionモデル(一切絶つのではなく、使用における害(感染症やOD)を取り除く動き)は、ODによる死亡が増加する中の対応として、市民活動家の草の根の運動として1990年代より始まりました。安全な注射針を配布したり、非公式の接種施設を設立するといった活動は、大衆はもちろん政治家からも注目を集めました(Boyd et al., 2018)。

Boyd et al.(2018)は、「現代の厳罰的な麻薬禁止法と政策は、過剰摂取死(OD)、人権侵害、スティグマ化、有効な健康およびHarm Reductionサービスへの障壁など、その非効果的で有害な影響がますます認識されている」と主張しています(p. 94)。Harm Reductionモデルは現在、連邦政府の薬物政策の4本柱の1つとして挙げられていますが、昨今の情勢を踏まえても、保守政権の影響による政策の転換の可能性は多分にあります(Hyshka et al., 2017)。こうした政治的および歴史的な薬物の犯罪化は、私とアキがAbstinence(断薬)のみを盲目的に選んでしまった結果に大きく影響していました。

4)依存症からの回復の限られた資源

最後に、アキがODに至るにあたって、いかに薬物からの回復に関しての限られたリソースが彼女とわたしの経験の中で大きな役割を果たしたかについて、お話ししたいと思います。治療センターでのプログラムを完了した後、アキは薬物の使用を再開しました(Relapse)。こうしたRelapseは、薬物依存の治療で長く断薬している際、薬物に対する身体の耐性が低下し、しばしばODにつながります。フロントラインワーカーやDTESコミュニティの間ではよく知られている課題ですが、アキに対するフォローアップのサポートやアフターケアが著しく不足していたことは大きな問題でした。治療センターのスタッフだけに責任を押し付けるのではなく、ここではむしろ、薬物依存治療プログラムへの政府の適切な資金提供といった、より広範な制度上の問題に焦点を当てることが重要だと考えます(Marsh and Fair, 2016)。

依存症からの回復を考える際には、Abstinence(断薬)に基づくモデルが唯一の選択肢ではないことを認識することがとても大切です。Abstinenceは回復の手法としてメジャーであるにもかかわらず、治療センターにいる人々のうち、わずか52%が依存症からの回復をAbstinenceと定義しています。生活の質の向上、Harm Reductionプログラムへの参加、社会的なつながりの修復、雇用の機会、そして個人として独立した生活を送れるようになることが、より広い意味での依存症からの回復の定義となります(Canadian Centre on Substance Use and Addiction, 2017)。

アキの依存症からの回復に関する私へのアプローチを顧みると、知識不足のせいでAbstinence(断薬)にのみとらわれていました。しかし、提供すべきは、彼女の総合的な生活の質を向上させる可能性のある、より広範囲の回復の選択肢でした。このためには、文化的に安全で、トラウマに配慮した依存症からの治療のリソースがより利用可能であることが必要ですが、現在の回復への治療は依然この領域が未発達であります(Pilarinos et al., 2020)。ソーシャルワーカーとして、脱植民地的な先住民へ配慮した依存症からの回復のアドボケイトが求められていると考えました。

いまここのわたし

アキとの経験を振り返ることる作業を通して、わたしはとても感情的になりました。これは単にアキの悲劇的な死の追悼というだけでなく、私の知識不足とサポート不足がいかに彼女の早すぎる死を招いたかを浮き彫りにするプロセスでもありました。この物語が照らし出すように、薬物規制は効果がないだけでなく、特定の個人の利権を増幅させる一方で、富裕層に不当な利益をもたらしています。懲罰的な法律は、十分なケアを提供するどころか、社会的弱者や依存症の問題に取り組んでいる人々をさらに周縁化し、危険に晒しています。この振り返りで明らかになった通り、法律はイデオロギー的国家装置(Ideological State Apparatuses)として機能し、人々の価値観、政治・歴史に対するものの見方を形作ります。これはだれもが日常生活で深く絡み合っている領域なのです。

ソーシャルワーカーを志す私にとって、法律の知識や歴史を把握するだけでなく、意思決定プロセスに影響を与える根本的なイデオロギーや権力関係のダイナミクスがどのように形成されているかを理解することは不可欠であります。これは、アキの物語でも示された通り、法が生権力(Bio Power)を握り、個人の命を左右する側面があることを踏まえると、いくら強調してもし足りない重要なプロセスです。

私は、アキのSNSの投稿のスクリーンショットを携帯に保存しています。これは職員としてすべきではないことであると認識しています。その投稿の中で彼女は、私の作ったお好み焼きの写真を載せていて、その美味しさの中にたくさんの愛情を感じたと書いています。このことを思い出すたびに私は泣いてしまいます。私はキッチンにあそびにくるアキにいつも、私は料理に愛情を込めていると伝えていました。それはシェルターに住む人々の健康や幸せに貢献するわたしの数少ない方法の1つでした。こうしたことを踏まえて、わたしが今心に決めているのは、クライエントのリーダーシップを支援し、より入念なリサーチと繊細さで彼ら・彼女らに愛情のこもったサービスを届けるソーシャルワーカーになることです。

おわりに

自分自身を振り返り、法について深く考えたこの本稿は、考え方の転換、そして法的な構造が個人に与える影響の大きさを再認識し、実際の問題と併せて考える契機を与えてくれました。私と法の関係を振り返ると、パンデミックの混乱期に、私は留学生としてカナダの法律の排他性に直面し、自分の地位の脆弱性、そして無力感を味わった経験が浮き彫りになりました。また、ソーシャルワークの法の授業では、法律がどのようにして脆弱な人々を周縁化し、人種差別化するかを明らかにし、特に植民地主義の文脈でそれが顕著であることを示しました。そしてアキと私との記憶を辿ることで、法的システムとその折り重なった歴史の複雑さを紐解くことができました。法や歴史を再考することで、アキが十分なサポートを受ける可能性を妨げる制度的な偏見や先入観を明らかにしました。

アキの物語を反映する中で、社会的に抑圧された人々のために効果的にアドボカシーをするためには、法に対する包括的な理解が必要であるという認識が芽生えました。ソーシャルワーカーとして、私は従来のパラダイムを超えて法の力関係を理解し、クライエントを十分にサポートする必要があります。そうした意味で、本稿を書くにあたって、この経験は私の見方を形づくるだけでなく、ソーシャルワーカーとしての責任感を持つ機会になりました。社会正義(Social Justice)を目指すためにも、既存の規範に挑戦し続け、より包括的で人々に寄り添った法の活用をするため、自身の思考プロセスをクリティカルに再考しつづけていきたいと思います。

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