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映画やドラマとあれこれ その1

暇すぎて適当に見た映画やドラマとあれこれについて
映画『AKIRA』『新感線 ファイナル・エクスプレス』
Netflix『ブラックミュージアム』『ノット・オーケー』『最高に素晴らしいこと』

映画『AKIRA』(1988年)

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AKIRAを観ていない側の人間からすれば、AKIRAはとてもハードルの高い作品である。

時代を超えて神格化されているため、まずファンが怖い
偏見だがエヴァンゲリオンやガンダムと同じで、一言でも作品の悪口を言おうものなら暴徒化した信者にリンチされて殺されるんじゃないかと怯えてしまう。怖い。

次に、自分のセンスが試される踏み絵のような恐ろしさもある。
これほど熱狂的なフォロワーたちを生み、俗にいうオシャレな人たちから支持されているこの作品をつまらないと感じてしまったら、自分がつまらない人間であると言われている気持ちになるんじゃないかと、足がすくんでしまう。怖い。

東京オリンピックが延期になったことだし、いい機会だと思って観てみたけれど、主人公の金田のことを映画の三分の二くらいがすぎる頃でAKIRAだと信じきっていたため、話の流れが全く掴めなかった。やっぱり怖い。

金田≠AKIRAだと気付いた後も、金田よりも友達のテツオの存在感が強すぎて「これじゃあAKIRAじゃなくてTETSUOだよなあ、でもTETSUOってタイトルはダサすぎて売れんわな」みたいなことを考えていたら、何故か宇宙が産まれて終わってしまった。何故だ。

こうして僕はAKIRA好きそうなのにみたことない人というステータスを失ってしまった。



Netflix『ブラックミュージアム(ブラックミラー)』(2017年)

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マッドサイエンティストの発明品・詐欺によって人生を狂わされた人たちと、その復讐が描かれた作品。

その中の一人で、発明品の不具合によって痛みが快楽に変換されてしまった医者の悲劇?喜劇?があった。

彼が快楽を感じるために自分の歯を抜いたり身体をメスで切り刻むシーンは凄惨そのもので、思わず手で画面を覆ってしまうほどなのだが、身の回りの人たちの話を聞いていると、痛みを快楽と感じる人は普通に存在しているのだと知れる。

アブノーマルな秘密として周囲には隠しているだけで、一枚皮をめくってしまえばその辺のAVや官能小説では到底敵わない、超越した性的嗜好を持った人々はごまんといるのだ。

彼らはエクスタシーに達する条件として、殴打や罵声、ここには書けないようなことを必要としているが、彼らが普段おかしな人間かと聞かれれば、そうでもない。ただ、そういう一面があるというだけである。

そう思うと、何食わぬ顔で生活している誰しもが、大なり小なり悪徳めいた秘密を抱えているのだなと思ったりする。

だから僕は滅多なことではひかないようにしている。理解し得ないことは、意味がわからないものとして受け入れる他ないからだ。他人のことを分析して理解しようなんて態度は、おこがましい思い上がり以外の何物でもない。

そういえば昔、「俺最近、遠心力にハマってるんだよね」と語っていた高校のM君、彼は今何をしてるんだろう。



映画『新感染 ファイナル・エクスプレス』(2016年)

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日本お得意のわけのわからない改題によって品格を落とされてしまった哀れな韓国のゾンビ映画。原題は『釜山行き』。『パラサイト』(2019年)に出てた男の子も出てる。

こうした映画を観ていると、映画に必要なのは形式なのだとつくづく思い知らされる。問題を抱えた家族やカップルがある出来事を共に乗り越えることで関係を修復させていくという流れだ。

ゾンビ映画が面白いのは、その大筋を放り投げてしまってもゾンビvs人間の戦いを描かなければならないという宿命があるためだ。

もはやゾンビが主役となってくるので、話の都合は二の次となっていき、主人公たちは明らかに非合理でわけのわからない行動を大真面目に取らなければなくなるのだ。
この筋の通らなさを笑うというのが、ゾンビ映画の楽しみ方だと僕は思う。

その点で、この映画は全く楽しめなかった。
平和な時代に見ていれば良かったのだろうが、全世界でウイルスによる天災が人道的にも経済的にも猛威を奮う今現在に観てしまっては、笑えるものも笑えないからだ。

映画の中で、他人を犠牲にしまくって我が身を守ろうとする最低なおっさんが出てくるのだが、そいつにヤジを飛ばそうという気にもならない。

結局こういうやつが生き残れたりするのかなと思ったり、こういうシーンで僕は彼のような行動を取らないと言えるのだろうかと、不安になってしまったりした。

なんだか悲しい。平穏が一番だ。



Netflix『最高に素晴らしいこと』(2020年)

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エル・ファニングのアイドル映画
それ以上でも以下でもない、毒にも薬にもならない映画だが、オタクなエル・ファニングが見れるので一見の価値あり。

好感が持てるのは、エル・ファニングは根暗なナードとして描かれているが、ちゃんとモテていることだ。

概してこのような「自らの殻に閉じこもって友達もできず周囲から見向きもされない私の前に王子様が現れて恋に落ちちゃったわ、彼との幸せな生活の中で笑顔と人生の喜びを知ったのだけど…」みたいな映画は、主人公に華のあるスター女優を起用するくせにそいつは映画の中で全くモテていないという矛盾の上に成り立っている。

日本の昔のドラマでいえば『野ブタ。をプロデュース』(2015年)の堀北真希がモテないというアレだ。現実感がなさすぎてイライラする。てめえらどの世界で生きてんだよ?!!?!と叫びたくなる。
その点で、この映画はちゃんとできている。

エルファニングは、「こんなつまらない私に構わないでよ」、という態度をとっているのだが、ちゃんと自分が可愛いことを自覚しているからだ。

やっとのことで彼女をデートに連れ出した男の子に「あんまり調子にのらないでよね」というシーンなんかリアリティに溢れているし、

「あいつのことをわかってやれるのは俺だけだ」と臭いセリフを吐くような、友情と恋情を履き違えてこじらせた正義漢が恋敵として出てくるところも良い。

ただ、最初に述べたように映画としては面白くともなんともない

死が物語を動かしていくのだが、前置きが不充分で観客を置いてけぼりにしてしまうのだ。
なんとか話を成立させるために殺すしかなかったんだよ文句ある?、と逆ギレしてる匂いすらある。

後で調べてみたら、小説が原作らしい。どうりで話がツギハギで、のめり込めないわけだ。
きっとかなりの部分が、”余分なこと”として原作から削り取られてしまい、摩擦のないつるつるの形式的なお話だけが残ってしまったのだろう。


余分なことこそが、心に毒や薬として作用して、その映画を特別なものにしてくれるのに。



Netflix『ノット・オーケー』(2020年)

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Netflixのモンスター番組たち、『ストレンジャー・シングス』(2016年〜)と『このサイテーな世界の終わり』(2017年〜)と『セックスエデュケーション』(2019年〜)を足して50で割ったような視聴者を小馬鹿にした作品。

ちゃちなハンバーグとオムレツとエビフライを一つのプレートに載せたお子様ランチのように低俗なドラマである。

やることなすこと全てが露骨だ。
主演は『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』(2017年)の子役二人、美術は古き良きアメリカンスタイル、Netflixお決まりの同性愛を盛り込んだ学園ラブコメ、そんなの観るに決まっている

悔しい。くだらないのに観ちゃう。シーズン2も絶対観る。お子様ランチは素晴らしい。

ところで、Netflixのオリジナルに必要不可欠なのはホモやレズ、バイといったLGBTに属する人々である。どっかの利権団体とがっぷり組んでるのか?と疑いたくなるくらい、必ずといっていいほど同性間の恋愛が描かれる。

Netflixの面白い点は、決してLGBTを主題としないところである。話の本筋とは関係のないサブエピソードとしてさりげなく当然のように彼らが登場することが多い。

ホモやレズ、オカマの恋愛や苦悩を主題とした映画は2010年代、ミニシアター系のおしゃれ映画界で流行した。

アカデミー賞を取った『ムーンライト』(2016年)や、『アデル、ブルーは熱い色』(2013年)、『わたしはロランス』(2012年)、『リリーのすべて』(2015年)、『チョコレートドーナツ』(2012年)、『君の名で僕を呼んで』(2017年)等、挙げ出せばキリがない。名作揃いである。

これらの映画は、LGBT特有の感覚、他者との違いに苦しむこと、周囲の不寛容によって排除されてしまうこと、非日常の冒険を楽しむこと、つまりストレートとのギャップによって生まれるドラマ性を描いてきた。
実社会と対比される存在だったわけである。

しかし、Netflixの『セックスエデュケーション』や『ストレンジャーシングス』、この『ノットオーケー』においても、彼らは実社会に溶け込んだ存在として描かれている。ハレであり好奇心の対象だったLGBTが、ケであり日常の平穏なあれこれの一部になったのだ。
トレンドからスタンダートへの転換だ

こうして今でこそ同性愛は社会運動の成果もあって広い地域で受容されつつあるし、僕も自然なものとして受け入れることができるけれど、生まれる国や社会が違えば彼らの存在そのものが犯罪なのだから恐ろしい。

ちなみに、2016年時点においても同性愛を犯罪としている国は73カ国で、うち4国は死刑が適用されている。宗教観が大きな影響を及ぼしているとはいえ、なんともおかしな話だ。

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