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テクノロジーと社会

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#日経COMEMO

AI発注の課題と可能性

 コンビニをはじめとした小売り各社が、一斉にAI発注へと舵を切っています。日経新聞電子版をざっと見ただけでも、次に掲げたような記事が目に飛び込んできます。    AIが発注に関与する、発注すべき商品とその数量を提案してくるという事は、使う側、発注者にとっては、当然そのAIの能力が気になってくるところではないでしょうか。AI=発注の神様ではない訳で、AIだからと言って無条件に信じることはできません。  そのAIの能力、レベルを決定付けるのは、そのAIがどんなアルゴリズムで作動

《親ペン雑記#10》リスクとマナー~スマホという名の新しい習慣~

 街中でふと異様な人の動きに気付くことがある――まるで私などいないかのように真っ直ぐと狙いを定めたかのように接近してくる人影——。歩きスマホだ。イラっとする。自分が避けずとも周りがどいてくれるとでも思っているのか。何と愚かで無作法な……。ふと、このままぶつかってやろうか、などと悪魔の囁きが耳元に聞こえる。そんな囁きを聞いたことのある方は多いだろう。悪いのは向こうじゃないか……。だが、結局、妄想から覚めて、文化人たる自分の方で不愉快な回避行動をとる羽目になる(妄想のままに本当に

《親ペン雑記#6》不老不死をめぐるディスクール

 暇を見て日経電子版の古い記事を読み返していると、面白い記事に出会うことがある。いろいろな意味で、最新の情報ばかりが必ずしも有益という訳ではない。  SF小説好きの筆者にとっては、下に挙げた2018年4月の記事【未来での蘇生を願う ロシアで冷凍保存され眠る人々】などとても興味深いものだ。記事によれば「遺体は完全に血液を抜かれ、マイナス196℃の液体窒素に逆さまに漬けられた状態で、100年先まで保存される」とあり、未来の科学の進歩に蘇生の可能性、夢を託したものだ。ちなみに、現時

《親ペン雑記#4》現代セルフレジ考

 スーパーやコンビニで自ら商品をスキャンしたり会計をしたりする姿、セルフレジもすっかり見慣れた光景になってきた。少し前の日経電子版の記事【セルフレジの利用客6割に スーパーも導入、民間調査】にもその普及拡大の様子が描かれているが、コロナ禍にあって顧客と店員の接触を減らす効果への期待などが背景にあるようだ。  しかし、このようなセルフレジの潮流は、コロナ禍で加速された側面は否めないにしても、そもそも商品を読み込んで(スキャンして)⇨会計するという時間のかかる旧態依然とした決済

《親ペン雑記 #3》プログラミング教育の必要性

 少し前の日経電子版の記事【IT人材育成、世界が競う】では、世界各国でプログラミング教育が広がる中、特にIT系人材の不足が深刻な日本の現状が憂えられている。  以前《親ペン雑記》で、コンビニという所には社会の縮図のような性質があって、様々な人間模様が観察できる、と言ったことがあるが、先日、まさにこのプログラミング教育の必要性を痛感させられるような現場を目撃した。  それは、私の前でお会計をしていたおばあちゃんなのだが、手持ちの電子マネーに残高が不足していたらしく、チャージす

《親ペン雑記 #1》今求められる『高齢者リテラシー』~ITリテラシーより高いプライオリティが~

 最近、ふと立ち寄ったコンビニで考えさせられる現場を目撃した。  昼のピークとあってかレジ前に長い行列ができているのだが、そこはプロの販売員さんだ、サクサクと流れて着実に順番が近付いてくる。……と、突然流れが滞ったことに気付いた。手にしたスマホから視線を上げると、セルフレジに四苦八苦するおばあちゃんに店員さんが一生懸命使い方を説明していた……  『ITリテラシー』という言葉があるが、セルフレジを使いこなす事なども、さしずめその初歩的な一つに違いない。が、高齢者にとって、その

《連続投稿480日目》AIが伝授する熟練の技

 日経電子版の記事【トマト収穫増の秘訣はAI NECとカゴメが営農支援】では、衛星写真や産地に設置したセンサーなど(=IoTデバイス)から⇨1000種類を超えるデータを収集し⇨『デジタルツイン(=センサー等でリアルの世界を取り込み、デジタルの世界にコピーする)』をAIで解析して⇨最適化するトマト栽培がリポートされています。  そもそも、このようなAIの活用が行われる背景には、熟練の技をマスターして継続的に実績を向上させていく事には様々な困難が付いて回るからだと考えられます―

『自動運転』の現実路線

 日経電子版の記事【ボルボ「もうレベルの話はしない」 自動運転で大転換】は、ボルボが、米自動車技術会(SAE)が定めるレベル0からレベル5までの自動運転レベルという視点での開発やユーザーへの訴求をやめた、というリポートです。  確かに、記事にもあるように、自動運転レベルの区分はテクニカルな視点でなされており、これが(レベル0も含めて)6段階もあっては、ユーザーにとっては非常に分かりにくいものと言わざるを得ません。それどころか、自分の運転する車のレベルが正確に理解できないとリ

変化を生き抜く『高速開発』の仕組みと課題

 日経電子版の記事【エレコム、不断の高速開発 デジタル機器で首位4割】は、年間4千もの新しいプロダクトを生み出す『高速開発』で変化を乗り切る企業のリポートです。  記事から『高速開発』のエッセンスを拾ってみると―― ▶『高速開発』とは(1)『メール上申』・・・商品化を決裁する役員会議を廃し、メール1本で            決断。 (2)『企画書のフォーマット』・・・製品の規格・コスト・販売計画等を            まとめてメール上申、根回しは一切なし。 (3

コンビニの魅力

 2月15日の日経電子版の記事ですが、【「悪魔のおにぎり」 120万個完売の破壊力 あなたの知らないコンビニ(2)】は、コンビニにおける食の分野の商品開発に関するリポートです。  そもそも、コンビニの最大の魅力とは何でしょうか?――24時間営業でしょうか?独自のスマホ決済サービスでしょうか?……どちらも、社会問題化すると、ブランド毀損となって自らの業績を悪化させかねませんが、だからと言って、それらがコンビニの魅力のコア部分かというと、それは明らかに違います。――小売店として

2タイプのイノベーション~現在課題と未来課題~

 日経電子版の記事【「野心的研究」に1000億円 テーマ、一点豪華主義で】は、国家的なイノベーションへの取り組み『ムーンショット』に関するリポートです。  この記事を読んで改めて思ったのは、ごく大雑把に、イノベーションには2タイプあるのではないか――『現在課題のイノベーション』と『未来課題のイノベーション』ということです。 ▶2タイプのイノベーション(1)『現在課題のイノベーション』・・・今ある課題への解となる                   イノベーション。 (

無限ではない電力とビッグデータの時代~フォトンの実現するデザインの革新~

 日経電子版の記事【「スマホの充電、年1回」NTT研究陣の野心】は、ビッグデータ時代の意外な盲点と、そこに隠されたチャンス、広大なブルーオーシャンに気付かせてくれる好リポートだと思います。     まず、記事から、ビッグデータ時代に起こるであろうシナリオを整理してみると―― ▶ビッグデータ時代に想定されるシナリオ(1)IoTによって、生成利用されるデータが指数関数的に増大。  ⇩ (2)データを送信・処理・蓄積するIT機器の消費電力量が爆発的に増大。  ⇩ (3)IT需

小説のメタモルフォーゼ~媒体と文体~

 日経電子版の記事【文字数半減 スマホが変えるウェブ小説 チャット形式も 多メディア展開に威力】は、スマホという媒体での読書行動が、小説の文体そのものに影響を及ぼしている状況をリポートしたものです。  単行本・雑誌・新聞・パソコン・スマホ……その媒体の持つ特性、あるいは制約が読書行動、読書という体験価値に微妙な差異を生じさせ、それが文体の変化=『文体の媒体への最適化』へと繋がることは、ある意味必然の事ではないでしょうか?  例えばスマホでの読書の場合―― ▶スマホでの読

ペットの世界のAI健康管理がやがて人間の世界にも……

 日経電子版の記事【体調管理、ペットにAIを トイレにセンサー、活動量計… 延びる寿命 生活習慣病防ぐ】は、ペットにまつわるサービスにAIを活用する取り組みに関するリポートです。  そもそも、人間にとってペットという存在が擬人化していくにつれ、様々なサービスが登場してくる背景には、おおむね4つの要素が絡んでいるのではないでしょうか―― ▶ペットをめぐる4要素(1)『ペットの家族化』・・・ペットは家族の一員。 (2)『ペットの長寿化』・・・人間同様に様々な生活習慣病のリス