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オープンイノベーションの時代のオープン戦略とクローズ戦略

 日経電子版の記事【カリフォルニアの大農場主、黄金で破滅する  あの天才がなぜ転落?(第1回)】・【大農場主サッターを滅ぼした「クローズ戦略」  あの天才がなぜ転落?(第2回)】は、19世紀半ば、カルフォルニアのゴールドラッシュのまさにその砂金が発見された土地の大農場主が、予想に反して没落していく経緯を経営学的に読み解いたもので、プチ伝記を読むような醍醐味も併せ持っています。



 一読して思うのは、大農場主サッターのケースは決して他人ごとではない、という事です。――自分の所有地で金脈が発見されたら『クローズ戦略』を採ろうとするのが自然で、まさかアウトローと化した採掘者たちが殺到し収拾がつかなくなる、とは思い至らないかも知れません……。

 19世紀の当時では、広大な土地を守るセキュリティーのテクノロジーも、権益を十分に保護できる政府も存在せず、『クローズ戦略』はそもそも成立しえないリスキーな選択だった訳です。記事では、この事例も含めて、オープン戦略、周辺ビジネスに勝機を見い出すピック&ショベル戦略などの印象的な事例が挙げられています――

▶クローズかオープンか……

(1)『クローズ戦略』で失敗~大農場主サッターのケース~

(2)『ピック&ショベル戦略』で成功
           ~衣料品店主リーバイ・ストラウス~

   ゴールドラッシュの時、砂金そのものではなく、その周辺ビジネス
  として、「丈夫なズボンが欲しい」というユーザーの切実なニーズ
  に応える。

(3)『オープン&クローズ戦略』で成功~半導体メーカー・インテル~
   パソコンの設計情報を受託生産企業に提供しオープンにする一方、
  中核となるCPUについてはクローズ戦略を徹底した。その結果、
  受託生産企業が急成長⇨CPU需要の一層の拡大⇨インテルに大きな
  利益。

(4)『オープン戦略』に切り替え~トヨタ~
   開発の困難な燃料電池車の特許をあえて公開⇨同業他社の参入を促す
  ⇨燃料電池車の市場が拡大⇨結果的に自社に有利に働く事を狙う。



 『オープン』と『クローズ』を状況に応じて使い分け、組み合わせることで、利益の最大化を図ることは、その利益を次なる飛躍への原資とするためにも極めて重要な事は間違いありません。場合によっては、『クローズ戦略』は視野の狭いものかも知れず、より俯瞰的に情勢を読み解いて、柔軟に『オープン』と『クローズ』を最適化させる思考が求められていると言えそうです。

 オープンイノベーションの時代と言われる今だからこそ、企業の生命線である技術リソース、技術的な機密情報の取り扱いには、絶妙な匙加減が必要なようです。




#COMEMO #NIKKEI

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