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目立つためのメソッド

 日経電子版の記事【黄金のトイレ、海外の人々魅了(古今東西万博考)】は、2010年上海万博で「日本産業館」に出展され話題をさらった「黄金のトイレ」に関するリポートです。



 この記事、「へぇ~、黄金のトイレか……」と思っただけで、あやうくスルーする所でしたが、よくよく考えてみると、高品質な日本製品を売り込むために⇨「黄金のトイレ」で話題をさらい⇨日本のトイレへの関心を高めるというメソッド、『目立つためのメソッド』は、きわめて卓越したプロ―モーション、「黄金」という人類共通と言ってもいい「好き」を巧みに使ったプロモーションである、と気付かされました。

 


 そもそも、どんなに卓越したコンテンツ、プロダクトであっても、世間がその存在に気付いてくれなければ始まりません――

 例えば、経験された事のある方も多いと思いますが、SNSを始めたばかりの一般人が、フォロワー数がまだ0とか1桁の状態で、どんなに卓越したコンテンツ、写真などを投稿しても、そのことだけでPV(ページビュー)数やセッション(訪問)数が急上昇する訳ではありません。そのままでは、誰も気付いてくれないのです。

 ――考えてみれば当たり前の事ですが、コンテンツは、それ自体が勝手にプロモーションしてくれる訳ではなく、『目立つためのメソッド』を必要としているのです。



 SNSの例で最も単純な解決策はフォロワー数を増やす事かも知れませんが、これは実際には難しく、卵が先か鶏が先かではありませんが、フォロワー数を増やすには卓越したコンテンツが必要、されど、コンテンツを見てもらうにはフォロワーが必要、と堂々巡りで、それこそ何かのきっかけでバズる様な僥倖を頼むしかないのか……

 そんな場合の『目立つためのメソッド』の一つとして有名なのが、フォロワーの少ない一般の投稿が爆発的な人気になりうる、TikTokの独自のAIアルゴリズムを使った「おすすめ」機能ではないでしょうか。このアルゴリズムは、文字通り『目立つためのメソッド』であり、フォロワー数に関係なく面白い投稿が発掘される仕組みなのです。

(付記:TikTokのアルゴリズムの生み出す『共感』については、下記の拙稿でも考察しています。)



 今、消費者一人ひとりが各々の体験価値を追求する『コト消費』の時代に、細分化されるスモールマスな市場を生き抜くには、そのスモールマスを狙って開発したプロダクトをいかにして消費者にアピールしていくのか、モノ消費の時代以上に『目立つためのメソッド』、コト消費の時代の黄金のメソッドが求められているのだと思います。そこでバズることで、スモールマスという想定がマスなものへと飛躍するポテンシャルだってあり得ます。
 逆に、プロダクトを開発するために、誰も気付いていないような埋もれたアイデアを『目立たせるメソッド』も、また必要に違いありません。



#COMEMO #NIKKEI

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