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『第一主義』のパラドックス~注目のダボス会議~

 今年も世界経済フォーラム(WEF)主催の年次総会、ダボス会議の季節がやってきました。今年のテーマは「第4次産業革命時代におけるグローバル構造の形成」とのことで、AIやIoTといったイノベーションアクセラレータによって地球規模の課題に取り組み、新しい国際協調の枠組みを模索しようとしています。

 日経電子版の記事【ダボス会議(22~25日) 国際協調立て直しへ討議】によれば、そんな中で注目されているのが、『自国第一主義』を標榜するブラジルのボルソナロ大統領の演説です。初日に行われるこの演説を巡って、どのような議論が交わされるのでしょうか?


 この機会に改めて私達の周囲を見渡すと、『第一主義』や『至上主義』といった一見過激なテーゼ、イズム、主義主張が、実はごく普通に闊歩していることに気付きます。『株主至上主義』や『顧客第一主義』などです。

 また、注意しなくてはならないのは、その表現に『至上』とか『第一』と付いていなくても、『主義』とあるだけで『至上』、『第一』のニュアンスを漂わせる言葉がいくらでもあります。ビジネスシーンだけをとっても、『実力主義』、『能力主義』、『成果主義』などです。

 『〇〇主義』という概念には、本質的にバイアスの掛かり易い性質があり、まして、『○○第一主義』や『○○至上主義』ともなると、限りなく『唯一主義』に傾斜していくように思えます。『ファースト First』が『オンリーOnly』になってしまうのです。


 ここで一歩下がって全体を俯瞰すると、例えば『企業』の場合、『企業』という存在は、決して『株主』や『顧客』だけで成立している訳ではありません。『企業』にはそれを取り巻くステークホルダー、利害関係者が存在しているのは言うまでもありません。顧客・従業員・株主・債権者・仕入先・地域社会・行政、等々です。

 例えば『株主』だけを突出して優遇すれば、短期的には株主の利益となるかも知れませんが、中長期的には他のステークホルダーのネガティブなリアクション、顧客のロイヤリティー低下、従業員の意欲喪失、地域社会の反発などとなって返ってくる事になります。

 そして、それは取りも直さず、その『企業』の業績低下となって現れ、ブーメランのように『株主』に返ってくる(減配など)のです。『株主』への還元はもちろん大切ですが、それ以上に大切なことは『企業』としてのバランスのとれた成長です。『企業』がなくなってしまっては、元も子もありません。

 

 『(第一)主義』には当然それなりの意義がありますが、行き過ぎには注意が必要です。一見もっともな『顧客第一主義』なども、特定の顧客にだけ偏ったり、顧客の要望に沿うあまり一線を越えてしまったり(損失補填など)しては、『企業』経営とは言えません。

 『企業』について見てきましたが、国際社会も全く同じだと思います。全てのステークホルダー、国家間の国際協調によって地球規模の課題に取り組み、バランスの取れた最適化を探求し、持続可能な社会、スマートな社会を実現することが求められています。

 行き過ぎた『第一主義』は、その言葉とは裏腹に、中長期的な将来の『衰退』へと続く道のように思えます。『第一主義』が行き過ぎると、それを信じた者にとっては思いもかけず受け入れがたい結果=『衰退』というパラドックスと直面することになるかも知れないのです。

 

 

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