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【第2回 後編】 あるものをより良く活かして

【第2回 前編】新しい形、予約型ショップでは広島と奈良にあるイトバナシの予約型ショップについてご紹介しました。どちらも古民家を活用しており、落ち着いた空間となっています。
後編では、それぞれのショップ空間がどのようにしてできあがったのか、作業工程のドキュメンタリーをお送りします。

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ー五條ショップとこのほたる荘2階の志和アトリエ、両方のお店空間ができるまでについてお聞かせください。

まず奈良の五條のお店ですが、イトバナシのスペースとしてすでに借りていたんですね。1年前に事務所としてオープンさせていて、そのスペースの3分の2くらいをお店にリフォームしたので少ない負担で始めることができました。照明を付け替えて、什器を少し入れたりして。
五條ショップの改修は取り掛かりやすかったのですが、こっち(広島志和)は結構大変だったんです。さっきも言ったようにほたる荘の管理もやっている杉川さんに「この2階が空いてるからいいんじゃない?」って提案したんですけど、杉川さんは作業を始める前から改修のプロセス全部とその大変さを想像できたようで、ずっと「ほんまにやるん?え、ほんまにやるん??」って言ってましたね(笑)
私はやったことがなくてわからないから「うーん、できるんじゃない?1ヶ月くらいでいけるんじゃない?」なんて怖いもの知らずで言ってたんですけど、「いや、これ大変やぞ。土壁全部塗るのマジ大変やから。」と言われながら、「いや〜でも杉川さんができるじゃん」なんて返して(笑)
それに、さっき話した田村さんも徳島でカフェ&ゲストハウスをやっていたんですよね。2人とも古民家リノベーションの経験があって「改修できるよ」って言うから、「じゃあやろっか」って。

—スタッフさんたちの経験があったから、ショップ空間を作ることに現実味があって改修に踏み切れたんですね。実際にはどのくらいの期間がかかったのでしょうか。

5月にやろうって決めて、6月、7月…3ヶ月くらいかな?もちろんコロナには気をつけつつ、ご近所さんや広島大学の学生たちも手伝ってくれました。

—3ヶ月も!その間はどういった作業をしていたのでしょうか。最初は何から取り掛かりましたか。

一番最初は、ゴミ出し(笑)
蔵の2階のこの空間は物置になっていたので、使わなくなった畳とかがぶわーって置かれてて、いらないものを納屋にとにかく移動しました。重いものは力持ちの留学生がいて、その子が全部出してくれました。
まずは物出しをして…それから掃除かな。とにかく掃除。土壁だから埃や藁がたくさんついていて、磨いていきました。大きな脚立を置いて、学生たちが天井も壁もぜんぶ、埃まみれになりながら磨いてくれて。作業メンバーの中に料理好きな女の子がいて、みんなの分のご飯を作ってくれたんですよ。
掃除が終わったら床ですね。床が不安定だったからまず床を張り替えて、足場が安定したから柱に自然塗料を塗って、壁に漆喰を塗って…内装終わったら大体完成のようなものなんだけど、あとはそこの上の窓をぶち開けて(笑)

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—ぶち開けて(笑)想像するだけですごい作業量ですね。
その作業を終えてようやくここの空間もできたわけですが、五條ショップと広島志和アトリエ、それぞれの良さや共通点、違いなどはありますか。

共通点と違いか…共通点はどっちも築100年以上経っててすごく古い建物ってところですね。ほたる荘は蔵で、五條は町家なんですが、「その場にあるものをよりよく使う」というのが共通点としてあって。これって実は刺繍と同じなんですよ。1000年くらい続く刺繍を今の人たちが着られるデザインにして使う、「すでにあるものをより良く」っていうのが私自身の中のデザインするときのコンセプトなんです。それが志和と五條、2箇所のお店空間をつくるうえでもできているので、共通点としていいなぁと思っています。「あるものをより良く使えるようにする」っていうのがひとつありますね。
違いは…五條のほうが歴史ある通りに面していて観光客の人が散歩していても入ってこれる場所なんですね。だから、ふらっと立ち寄れるようなオープンな雰囲気で観光の一部にもなると思っているんです。それに対して、志和は観光通りでもなく、ぽつぽつと古民家がある中のひとつで、しかも玄関から一番遠いスペースに入ってきてもらわないといけない秘密基地のような場所だと思います(笑)
だから、わざわざ来ていただいた人にほたる荘全体で楽しんでもらえるような場づくりができるといいな、と思っています。「ほたる荘全体がひとつのエンターテイメント」といった感じで。

—ありがとうございます。お店のある地域の特徴まで活かして、それを反映した空間づくりができるとさらに素敵になりますね。「あるものを使ってより良く」というのはかなり難しくないですか。

そうですね。ほたる荘を改修するときもだいぶ悩みました。「ここの柱を塗るか塗らないか」とか「本当に漆喰にしてよかったのか」とか、こんなに悩むのは久しぶりだな、というくらい。
“あるものをより良く”って結構難しくて、センスが試されるような気がします。壊して作り直したり完全に新しくしたりする方が簡単だったりしますね。

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—最後の質問です。お店のある「田舎」、すなわち【ローカル】 が特徴的だと思うのですが、【ローカル】にかける思いを予約型ショップの可能性と合わせて伺いたいです。

私は、【ローカル×グローバル=グローカル】というのが面白いポイントだなと思っています。
【グローカル】と言葉で言うのは結構簡単で、「田舎に留学生を呼んで国際交流」といったコンテンツは非営利でもできると思うんです。でも、「ローカルに入り込んでビジネスをしながらグローバルにやっていく」ということで成功している組織はまだそんなにないなと思っています。
「IT企業が本社をローカルに置く」というのもありますが、そうじゃない、ものづくりをともなう活動を形にできたらすごく面白くて可能性あるなと考えています。「ローカルとグローカルの掛け合わせ」を、単に言葉遊びじゃなくて、リアルを伴う活動として本気でやっていきたいと。この志和のほたる荘でも、奈良の五條でも、年齢関係なしに新しいチャレンジができる文化を醸成していけばその可能性はたくさんあると思っています。すっごい田舎なんだけど、ちゃんと世界展開していてしっかり売り上げを出せる、というところまで成長したいですね。

―「田舎にありながら世界展開」。従来のイメージを覆すようでおもしろいですね!

「東京行ってパソコンを開いてこそグローバルだ!」といったイメージがまだありますが、若い人の地方への移住も進んでいるし、パソコンとWi-Fiさえあればどこでもできますよっていうのが今のスタンダードだと思うんですね。こんなぱっと見「誰かいるんかな?」と感じる古い家の中で、海外から来た製品を扱っていて、海外との会議を活発にしていたら面白いですよね。どことでも繋がれるしいろんな世界に展開していけるんだというのを示せるといいな、と思っています。

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(写真撮影:廣瀬佑太)

後編も読んでいただきありがとうございました!
第2回は2つの記事にわたり、イトバナシの予約型ショップについてご紹介しました。
最終回となる第3回は「イトバナシができるまで」。
アパレルブランドitobanashi、株式会社イトバナシが誕生するまでと伊達さんの学生時代、そして今後の夢についてのお話をお届けします。
12月中旬に公開予定です。おたのしみに^^

【第3回 第1編】イトバナシができるまで

<【第2回 前編】新しい形、予約型ショップ

<五條ショップ写真>

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(写真撮影:松山晴香)

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<イトバナシの店舗紹介動画>

広島志和アトリエ、五條ショップについてitobanashiさんからも紹介動画を出されているのでご紹介しておきます。

イトバナシ広島志和の紹介動画はこちら!
伊達さんが「玄関から一番遠い」と言っていた蔵2階までのご案内。
そして改修のこだわりポイントについて伊達さんご自身が語ってくださっています。
イトバナシ奈良五条の紹介動画はこちら!
なんと伊達さんが英語でご案内するEnglish Versionも!日本語字幕が付いていますので聞き取りに自信がない方でもご覧いただけます。日本語バージョンと見比べてみるのも面白かったです。

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イトバナシ奈良五條・イトバナシ広島志和はオープンデイ以外はご予約でのご来店が可能です。予約可能日はこちらのカレンダーからご確認いただけます。
ご予約ご希望の方は、イトバナシの公式LINEグループよりご連絡ください。

▼イトバナシ奈良五條 / 刺繍と暮らしの研究所

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〒637-0041
奈良県五條市本町2丁目5-19 みよし邸 1階

*お車でお越しの場合
お隣のレストラン、源兵衛さんの駐車場にご駐車下さい。
*公共交通機関でお越しの場合
JR五条駅から徒歩15分。

▼イトバナシ広島志和 アトリエ

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〒739-0269
広島県東広島市志和堀469ほたる荘 蔵2階

*お車でお越しの場合
裏庭の駐車場に5台駐車可能。満車の場合はお声がけください。

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【魅力発掘家】として、様々な"魅力"を発掘中です。 コトバにすることで発掘したものに磨きをかけ、記事を通してより広く届けることでさらなる魅力へとつながってほしいなと思っています。