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「帰ってきたヒトラー」

原題:Er ist wieder da
監督:デビッド・ベンド
製作国:ドイツ
製作年・上映時間:2015年 116min
キャスト:オリバー・マスッチ、ファビアン・ブッシュ

 社会性がある映画の場合は同じ事象を描いても製作国が加害者側なのか被害者側かで顕かに変わるため先ず製作国を確認してしまう。今回など特にだ。これまでヒトラーは知名度はあってもその生きざまを描くのはかなり禁忌の時間があった。記憶にあるのは『ヒトラー~最期の12日間~』(2004年独・伊・オーストリア)、『わが教え子、ヒトラー』(2007年独)は描き方で非難を浴びている。仮令風刺であってもこの材料は料理しづらい。
 主役O.マスッチ氏のインタビューにもあるよう撮影開始から終わりにかけて様々あり、ヨーロッパでは撮影後翌年パリ同時多発テロが起こったことを始め、難民問題も深刻化し時代は右に流れようとする空気がある。こうした空気の中でドイツ国民に限らず過去を学んできた筈の私たちが「現代(今)なら帰ってきた彼をどう捉える」のか。

 予告でユーモラスにメールアドレス設定場面があった。昨日観た映画ノ(ック・ノック)も結果的には同じSNSの怖さがあった。今回ヒトラーがこの凶器SNSを手に入れた場合どう使いこなし、その制圧のスピードを短縮するのかと興味があったがその部分に関しては映画はさほど描かれなかった。
 しかし、上記挿入写真のように一般市民の中での撮影の大半はゲリラ的に台本も無しに行われた為、撮影のどの地でも撮影クルーが居ようがこのような風景が約25,000回展開されSNSで「現実(社会)」でも制作と同時に拡散していくという面白さ。

 特殊メークに2時間もかかる為に簡単には落とすことが出来ず「ヒトラーの姿」で居続けることで彼が身を持って知った右への加熱温度が怖い。実際、映画の中で彼が市民に質問を投げかける中にアドリブで排他的な言葉があった。
 ヒトラーの怖さ以上の存在として「SNS」がある為に彼が希釈されたように見えもした。だから、映画化が受け入れられているのではないのか。
 冒頭の写真は映画のほぼ終わりの一枚。この一枚が語り描く怖さ、つまり彼がネット社会を手にしようと、そして親衛隊なくともこのSNSと共に往時のヒトラーに返り咲こうと見えたのは私の深読みか。
★★★☆(0.5は一般市民の撮影で得られた諸々)


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