会長の一声でプロジェクトが終了して考えたこと
自営業になって1年たったので、ちょこちょこと仕事についても書いていく。
普段は、人事関連のコンサルティングを生業にしている。
基本的には、クライアントと、外部コンサルタントとして契約を結んで、6か月~1年程度の期間でプロジェクトを進めていく形だ。
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この前あった、あるクライアントのお話。
9月から来年3月までの契約でプロジェクトがスタート。社長や役員、担当者など総出でキックオフをし、キーマンとなる社員へのインタビューなどを進めながら、「良いプロジェクトにしましょうね!」と意気揚々と取り組んでいたある日、突然先方から「プロジェクトを中止したい」という話があった。
「何かやらかしたかな?」と思いながら理由をきいてみると、会長から「社内で完結させろ」と指示があったから、ということだった。それ以上は頑として聞かないのだという。
社長はOKだったのだが、会長に言ったらNGが出ちゃった、という話だ。
「結局決裁者会長だったんかい・・・」
と心でツッコミながらも、一応自分なりの提案や見解について述べつつ、そのようなケースではほぼ結論が覆ることがないことを経験からわかっていたので、稼働分だけ請求させていただくとともに、そのプロジェクトは中途半端な形で終了することとなった。
なんだかモヤモヤと思うところがあったので、備忘録的に残しておく。
思考停止のはじまり
元々聞いていた課題は「組織の現状把握をしながら、人事制度(評価や報酬など)を最適化したい」というもの。
社長いわく「ずっと手探りで検討してきたけれど、うまくいかなかったので客観的意見をもらいつつサポートしてほしい」とのことだった。
多分長いこと社内で停滞していたテーマで、自分たちで考えに考えた結果、外部コンサルに依頼するという決断をした様子。
人事制度は労基法などコンプライアンス的要素もからんで、設計にはある程度の経験、知識、エネルギーが必要だ。よって設計部分だけでも外部の知見を使うのは賢明だと思う。
今回のケースで言えば、社長はじめ、プロジェクトメンバーが“考えていない”ということは決してなく、「どうすればうまくいくのか?」と熟慮した結果、社内での知見やリソースが不足していることを認めたうえで、『自分たちだけでは難しい。外部とともに進めることでうまくいく、それが組織をスケールさせる方法だ』と判断したわけだ。
それが、会長の一声でご破算となり、ゼロリセット。自分たちで考えろと言いながら、その考えをつぶしてしまったと言っていい。
そこからまた「どうしよう・・・」のループに入っていく。
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会長というポジションにある人が「外部に頼むなんてけしからん!」「内製が良いに決まってる」となるのはよくあることで、『自分たちのことは自分たちで頑張ってほしい』という、親心でもあり、プライドみたいなものでもあり、そこは理解できる。会長、もしくは組織のトップからの目線、身銭を切って外部へ依頼することへの抵抗などもあったかもしれない。
ただ、走り出したプロジェクトを途中でやめさせることの弊害は大きい。
こういう事が続くと「組織にとって何が最適か?」という観点ではなく、「〇〇さんを納得させるためには?」「〇〇さんのいう事聞いてればいいんじゃない?」という考えをする人が増えていく。
そこからだんだんと思考停止状態に陥り、考えられない組織へと衰退していく。
社長の存在意義
指揮系統の混乱というのは組織やチームにとってかなりの害である。
今回のケースでもし私がプロジェクトメンバーだったら、
「結局どっちがリーダーなん・・・?」と思うと同時に、社長の存在意義について考えるだろう。
役員含め関わっている社員はみな一丸となっていたのだから、やはり本来のトップである社長が会長を説得してほしかったなあと思う。
どんな理由であれ、前向きに進めていたことが頓挫するというのはチームの士気をおおいに下げる。
カリスマ的な強さはなくとも人間的にすごく柔和な良い感じの方だったので、これから頑張って組織を良くしていってほしいと切に願っている。
組織のトップに今必要な“力強さ”と”柔らかさ”
色々な会社の社長と話していると、推進する力強さはもちろんだけど、スケールしている会社ほど社長なりリーダーなりが柔らかいな、と感じる。
外部パートナーを使う、副業を認めるみたいな小さな動きから始まり、競合他社と連携して業界全体を変えていこうとするとか、退職者も含めてひとつのコミュニティとしてとらえるとか、固定的な観念や慣習にとらわれず、フラットな思考でありながら、組織をスケールさせていこうという気概が感じられる。
そもそもの視座と視野が高くて広い。
会社(組織)はトップの器以上に大きくならない、器に応じて大きくなるというのは、つまりそういうことなのだろう。
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色々書いたけれども、私もしがないコンサルの一人でしかなく、社長の気持ちが実感としてとらえられるわけではもちろん無い。
完全に同じ目線というのは難しいとしても、少しでも近い目線で話ができるように日々勉強、日々精進せねばと思う毎日です。
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