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食事とは心の様相のあらわれなのかもしれないと思った話

フルーツパーラーに入って、ランチを食べた。

私以外にも、女性の二人連れと女性一人客が沢山いる。
注文したものが来るまでの間、店内の客を眺めてあることに気づいた。

二人連れはもう確実に喋り倒している。
私の近くのテーブルに居た二人連れは、延々家電の話をして大盛り上がり。
見える範囲の二人連れは、どのテーブルも楽しそうに口がぱくぱく動いていて、もう話が盛り上がって盛り上がって止まらない感じなのが見て取れる。

そしてその間に挟まるように、一人で来ている女性客もたくさん居た。
そして、その殆どがスマホに釘付けになっている。


運ばれてきたランチプレートを前に、イヤホンを両耳に差し込んで目はテーブルに置かれたスマホの画面をガン見しながら、片手間のようにフォークで運んだものを咀嚼している女性が目の前のテーブルに居た。

私が料理人だったら、この人に食わせるタンメンはねぇな。と思った。


他のテーブルに目をやると、まだメニューが来ていない人たちが、スマホの画面を眺めている姿ばかりが目にとまる。
スマホを眺めず、スマホを眺めている人たちを眺めているのは私くらい。


めちゃくちゃ楽しそうに大盛りあがりしている二人連れのテーブルと、食べていようがいまいがひたすらスマホを眺めている一人客のテーブルとの温度差がすごかった。


フルーツパーラーには一人で来るもんじゃないな。

一人で来ていた私はしみじみとそう思いながら、ランチプレートを平らげた。


そしてバスに乗り込んだ。
バスが発車すると、背後からパリパリパリパリパリパリパリパリとすごい音とともにスナック菓子のにおいが漂ってきた。
パリパリパリパリパリパリパリパリ
パリパリパリパリパリパリパリパリ

いつまで続くのだろうか。

パリパリパリパリパリパリパリパリ
パリパリパリパリパリパリパリパリ

振り返るまでもない。
多分私の後ろにはクッキーモンスターが座っている。

パリパリパリパリパリパリパリパリ
パリパリパリパリパリパリパリパリ

バス停を何個も通過した。
同じく、クッキーモンスターも止まらない。

パリパリパリパリパリパリパリパリ
パリパリパリパリパリパリパリパリ

漂うスナック菓子臭

パリパリパリパリパリパリパリパリ
パリパリパリパリパリパリパリパリ


いや、どんだけ食うんだよ。
ていうか、どんだけ大袋だよ。

バスに乗る時間なんて、ほんの数十分だ。
何故家についてから食べずに今このバスの中で食べる?

背後のクッキーモンスターは、小さな子どもではないことは薄々感じている。
みなさんが今想像しているような感じの方だと思う。
振り返りたいけれど、なんとなく躊躇する。
見たいようで見たくない。


パリパリパリパリパリパリパリパリ
パリパリパリパリパリパリパリパリ

クッキーモンスターがまだまだ食べ続けているうちに、私が降りるバス停に着いてしまった。

私は背後を振り返らずに降りた。
そして、私の背後の座席のクッキーモンスターを、バスの外から確認した。
想像通り期待を裏切らない姿がそこにあった。


食事というものは、一人のときにはこんなに病んでしまう事もあるものかと、なかなか驚いた一日だった。


スマホを眺めながら食べの人は、食事を単なる栄養補給にしているようだったし、クッキーモンスターはもはや栄養補給とは真逆のスタンスで食べているようだった。



私はどうだろう。
私は食べることを、心から楽しめているだろうか。

幸せに生きるということは、ひとつひとつのちいさな感動の瞬間の積み重ねなのかもしれない。


それであるならば。
我が身を振り返った、そんな一日だった。

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