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僕とちくわの不思議な数ヶ月

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ちくわを食べたくなるお話です。
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#短編

1、不思議なちくわ

ちくわを使ったメニューの中で、一番好きなものは、ちくわの磯辺揚げだ。単品でもいいが、うどんにいれると格別で、フードコートのうどん店に行くと僕は必ず選び取る。

ちくわはおでんに欠かせないし、母さんが言うにはお弁当の一品としても便利らしい。ご当地の噂を紹介する某テレビ番組では「ちくわパン」というものが紹介されていた。機会があればぜひ食べてみたいものだ。
そんなふうに多種多様に活躍しているちくわだが、

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4-4 ちくわの予言

自転車を漕いで、漕いで、僕は優里奈の家に向かった。インターホンを押すと、優里奈のお母さんが出た。
「優里奈さん、いらっしゃいますか?」
「学校に行きましたけど?」
不審げに答えるお母さんのこの様子だと、最悪の知らせは届いていないようだ。ということは…まだ間に合う!
 インターホン越しにお礼を述べ、今度は駅に向かって自転車を飛ばした。ほんの数分の距離がもどかしい。
頼む、追い付いてくれ。

駅前に到

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5.ちくわの最後

5.ちくわの最後

…彼女の危機を救えたのだから、よしとしよう。
何度も自分にそう言い聞かせて、撤去先から自転車を取り戻した時には、とっくに昼を過ぎていた。
このままゲームセンターで時間をつぶしてから帰ろうかと思っていたら、ケータイに伊織からメッセージが届いた。

『大災害の意味がわかった』と、書かれていた。

下校する生徒に紛れて、僕は再び学校に戻った。伊織の指示通り保健室に向かうと、彼はベッドの上で頭に包帯を巻い

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