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【映画13】オッペンハイマー(2023)

オッペンハイマー。原爆の父。
存じていましたが、詳しくは知ろうとしたことがありませんでした。

原爆については日本人として学校でも習い、毎年夏にはテレビなどで流される映像や写真たちのおかげで、どれだけの惨状だったか分かっています。
しかし、それを作ったほうは、アメリカ側の状況はどうだったのか。

物事を知るためには、両側から見る必要があると言います。

そのため、原爆を唯一落とされた国、日本に生まれた者としてこの作品は観ておかなければと考え、映画館に観に行くことにしました。



※この記録には多少のネタバレはありますが、重大なものを含んではおりません。しかし、まっさらな状態で視聴したい方は、鑑賞後に読むことをオススメします。





◆あらすじ

時代は第二次世界大戦下のアメリカ。水面下で進められる極秘プロジェクト「マンハッタン計画」にJ・ロバート・オッペンハイマー(キリアン・マーフィー)は科学者として参加する。他の優秀な科学者と共に世界初の原子爆弾の開発を進め成功するのだが、その後の苦悩や戦後の情勢が彼を苦しめるのであった。


予習が必要だったかもしれない

冒頭に書いた通り、オッペンハイマーについて予備知識がない状態のまま観に行ってしまったので、序盤のほうはあまりついていけませんでした。
作品は、2つの時系列を行き来しながら物語は進んでいきます。原爆を作っていく過程と、原爆投下後の戦後の2つの時間軸です。困惑はしましたが、他の方のレビューに「もし時系列どおりに物語を進めていったら後半がものすごく退屈になる」と書いてあったのを読んで納得しました。
私にとって大変だったのが、登場人物の多さです。アインシュタインくらいしか分からなかったので、オッペンハイマーの周りにはどういう人物がいたのか事前に少しは調べていくべきだったと思いました。時系列だけでも混乱してたので。また、ロバート・ダウニー・Jr.が今作でアカデミー賞の助演男優賞を受賞したことは存じておりましたが、こういった形で出てくるとは。(気になる方はぜひ劇場へ)

アメリカの視点からみる原爆

内容としては予想どおり、あくまでオッペンハイマー博士の半生について描かれた作品でした。事前に少しレビューだけは見ていたので、日本人が求めていたよりも原爆の描写がそれほどなかったことは知っていました。まぁ、それも当然だよな、と。だってあくまでもこの作品はアメリカ側から見た様子だったので。
オッペンハイマー側としても多額の資金を費やした研究であるため、成果を問われ、かつ失敗するわけにはいきませんでした。もし、開発できなかったとしても他の国が作ってしまう。それよりも先に作り上げなければ。
そして実験が成功したあとの、気持ちのゆらぎ。原爆が落とされたあとの葛藤。
ある、新しい兵器を作り上げてしまった博士の作品としてはとてもよく描けていたと思います。
ただ、やはり私は日本人なので。
落とす場所を選考している会議や、原爆が落ちたことが報じられて喜ぶアメリカの人々の姿を見るのは、何とも言えない気持ちになりました。

日本人としてのアイデンティティ

鑑賞する前は、この作品のことを自分がどのように受け止めるか分かりませんでした。日本人、アメリカ人という視点だけではなく、あくまで冷静に俯瞰して観るように努めてはいましたが、後半は常に胸の中をモヤモヤした感情が渦巻いていたのも事実です。
戦争を実際に体験してはいませんが、やはり今まで教えられ想像したことが自分の中にしっかり根付いているのだなと感じました。
作品のおかげで、原爆の父と呼ばれた人がどういう人物であったか(すべてが事実であるかは分かりませんが)知ることができました。人間である以上、完璧な人はおらず天才であっても欠点はあります。周りの様々な状況もあり、戦後に至ってもさらなる苦悩が待ち受けていたことは、「大変ですね」という言葉一言では言い表せないものがありました。
他の作品であれば、違ったかもしれません。でも、この作品でどうしても同情する気になれなかったのは、日本人としてのアイデンティティがあったからなのでしょう。
観ながらも、様々な感情が渦巻いていましたが、観た後も「なぜこんな風に感じたのだろう?」など、自分の内面と会話しながら答えを見つけていきました。

◆総評

上映時間三時間という、なかなか長編な作品ではありましたが、興味をもって鑑賞すればそれほど退屈には感じませんでした。
アカデミー賞を受賞しなければ、日本への公開が見送られていたかもしれません。結果として、私は観ることができて良かったと思っています。多くのアメリカ人からすると原爆がどんなものか知らず、少し大きな爆弾としか思っていないらしいのです。それがこの作品を通してより多くの人が少しでも興味を持ち調べることで「もう二度と同じことを繰り返してはいけない」と感じてくれたなら。実際に、この作品がきっかけで広島の原爆資料館を訪れた海外の方もいることをニュースで見ました。そういう意味でも意義があった作品だと思います。

こんなに自分の内面をかき乱された作品を観たのは久しぶりでした。一人では耐えきれそうにないので、他の方々のレビューも観ながら色んな意見を取り入れて頭の中を落ち着かせようと思います。




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