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退職の練習㉛ワンタンメンという呪文

 退職して荷物が片付いてから、毎朝、お気に入りの温泉に通っている。
 初めは、そんなに毎日行くのもなんだから、家のお風呂にも一週間に三日ぐらい入ろう!と計画を建てていたのだが、そんな計画はすぐにふっとんだ笑。こんな気持ちいいことを我慢する必要がどこにあろうか。

 私は自由人なのだ。

 毎朝、通勤の車に混じって、温泉に出勤する。
 車の渋滞状態で、温泉には20分で着くときもあれば、30分かかるときもある。ダンナが運転しているので、私にとっては、読書の時間になっている。片道30分なので、罪悪感なく、本を読んでいる。しかも、本を読んでいると、トロイ車にイライラもしないw。
 他人の車を煽ることが、ニュースになっているが、自分が煽られる側か、煽る側かというと、実は、煽る側である笑(煽ったことはありませんw)。
 通勤時間が片道1時間の距離の職場の時に、毎日2時間、24時間からひかれていくのが悔しくて、早朝に家をでたりしていた。
 トロイ車や、信号機が無いと、私は、30分で職場に着けるなと思った。
 ところが、帰りの時間だけはどうにもならない。16時45分退下という、どう考えても通勤ラッシュの時間である。
 私の住む市に入る前は、17時過ぎで、渋滞も渋滞で、45号線はとろとろと進む車で一杯だった。そうとうイライラしていたけれど、一度だけ、オモシロイシーンを目撃した。なんと、ハンドルの上に漫画本を置いて、読みながら運転している人がいた。ジャンプだったのか、何かわからなかったけど、そうしたくなる気持ちが痛いほどよくわかった。

 ウケる!
 漫画を運転しながら読もうと思うぐらい、誰もがこの時間をイライラして我慢しているんだ。

 その体験が元になっているせいか、自宅から、最短で8分という全く自分の家から近い職場に転勤したのに、その精神だけは残り続けた。
 家を出るのは相変わらず7時前。10分ぐらいで、飛ばして職場に着きたい。トロイ車が我慢ならないのでそうしている。こんなに近くても渋滞時には、車の中で20分~30分かかるのである。そんな無駄な時間が嫌だ。
 帰りも、「マジ、みんな早く家に着きたくないのか?」とか、つぶやきながら、2車線になると、これみよがしにウインカーをつけて追い越し、ぶっ飛ばして走る。
 なんか、自分で書いていても鼻持ちならない運転であるw。

 飛ばし屋の、あやのんである。

 ダンナの穏やかな運転も、ちょっと、イラっとしたり笑。いやいや口出ししないで、大人しく読書しておこうと思っている。

 ま、しかし、うちのダンナの運転は、上品で、気品があると思うが、しかしそんな彼にも弱点があり、流石に信じられないぐらい自分とペースの合わない車には、文句たらたらである。その気持ち、よくわかる!痛いほど。

 しかし、よく考えてみると、いつもそのダンナの文句を聞かされるのは、その空気を読めない車ではなく、助手席に座っている私である。
 前に何かの本で、自分の言う言葉には気を付けたほうがいい、主語が全部消えて、自分に返ってくるからというフレーズを読んだ気がするが、まさにそれが自分の目の前で起こっている。

 君の罵詈雑言を聞くのは、そのトロイ車でなく、隣にいる私で、なんか、毎回、ダメージを受けるぞ?

 それに、イライラする周波数を出していると、ラジオと同じでイライラする出来事をキャッチしてしまうって本も読んだ。
 ダンナがイライラしてしまうから、イライラする車が、やってくるのではなかろうか。

 私は、相手の機嫌をなるべく損ねないように、そんな話をさらっとして、イライラしたら、自分の大好きな食べ物の名前を言うのはどうだろう?と提案した。

 ダンナが運転していて何か言い出した時、私は静かに、
「ワンタンメン」と答える。
 するとダンナも、ハッとしたのか、
「炒飯、大盛り!」と言い直したりしている。

「野菜炒め定食!」
「麻婆飯!」
と2人の好きなメニューが、しばらく飛び交った。

 この作戦いいかもしれない。
 相手に文句言うのやめなよって、注意するのではなく、
 厳かに、
「ワンタンメン」
って、好きなメニューの名前をいうこと。

 イライラすることが、速攻、美味しいことに変わる!
 そして、それをつぶやいている自分たちに笑えて来る。

 まるで魔法みたいな呪文。

いつもワンタンメンが来ると速攻食べていて写真など撮ったことないw
ネット上で、チャーシュー麺しか見つかりませんでした。
珉珉は、チャーシューが美味いです!