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胎児の反物が着物になって生まれた日。日本はファンタジーな夢の国。〜日本舞踊の表現の面白さ〜②

↑こちらの記事の続きです。

さて、ひい祖母が紡いでくれた反物は、どうなったのかというと、金沢にお住まいの深呼吸着付けの奥かなこさんにお世話になって、金沢で染めていただきました。金沢といえば加賀友禅。絹の反物も染めることができるそうです。残念ながら浜松は木綿の産地で絹を染められる工場も職人さんもいないので、染めるなら京都か金沢(加賀)だそうです。

金沢は引き染めが主流で反物を引き伸ばして張った状態で、染料をつけた刷毛(ハケ)で布を染めていくのが引き染めの特徴だそうです。
薄い淡い色も染め上がった時に奥行きが出るそうなので、そのような色合いだと曇り空が多い北陸の天気でも着物の色だけが派手で浮く。ということもないそうで、その土地ならではの風土に合わせた女性を美しく見せる工夫が技巧としてあるのだなぁとお話を伺いながら、またうっとりとしました。

確かに、土地が素肌という感じなら、白粉もしない素肌に真っ赤なツヤのある口紅とか、ちょっと浮きますよね。パリジェンヌならありだと思いますが・・・!

お陰様で「自分ではこの色は選べないな。」っという色も、絹の艶や糸の質感など複合的なバランスでプロフェッショナルな方々に見立てて頂くことで、似合わないと思っていた色が似合ったりするのだから、本当に不思議!ひい祖母が紡いだ反物はこんな素敵な反物に生まれ変わりました。

奥かなこさんが写真を撮影してくださいました。


まさに、着物って沼の世界ですよね。
そして、驚いたのはお値段。
安すぎて・・・
ここに書くのは控えさせて頂きますね。

奥かなこさんに、心から感謝です。かなこさんから浴衣の着付けを習っている方は、絶対に上級のやわらかものまで着付けを習得されることを、おすすめします♪
技術だけではなくて、着物の背景からわかりやすく伝えてくださいますから。私は復習で何度か受講させて頂き、本当に勉強になりました。


さて、次はお仕立てです。

日本舞踊では裄(袖の長さ)を手のくるぶしが隠れるぐらいまでの長さにするのですが、手が長くて肩幅が狭い私は、肩幅を大きくすると胸元がダボついてしまう。
っということで、自分の理想となる寸法を実験的に踊り用の着物で1回仕立てて、それで踊ったり様々な動作で実験した後に、正式にこちらの染めた反物で着物を仕立てることになりました。

これらの全てのストーリーやこだわりを、全部聞いた上で引き受けてくれたのが、袋井で和裁士をされている塚本さん。

そもそも、私の裄は72センチと男並みでありながら、肩幅は狭いので、全体の裄を長くするには袖幅を広くする必要があり、反物の幅自体が広くなくては足りない。年代物のひい祖母が紡いだ反物は、本来欲しい寸法から数センチ足りませんでした。

▶︎塚本さんのInstagram↓
https://www.instagram.com/kimonotsukamoto/

段々と着物好きじゃないと嫌気が差す話になってくるので、この辺りでやめておきますね 笑。

そんな難しい体型の私ですが、塚本さんにお仕立てをお願いして仕立て上がった着物を着てみると・・・

流石すぎるというぐらい寸法もばっちり!!
糸と布の手縫いの力加減も絶妙で、いつも心地よく肌に馴染むから本当にすごい技術だと思います。

そして・・・纏ってみるとこの着物はずっしりと重い。
反物の時は、軽く感じたのに纏うと、なんとも重い。

あ〜、昔の絹糸は糸も太かったそうだから、これが本物の絹の重さなんだぁと素人ならがも感じたのでした。

でも、その分、重心がグッと下がる感覚がより捉えやすくなって、気持ちが不思議と落ち着きました。

日本舞踊をはじめて5ヶ月。

もしかしたら、この着物を纏うに相応しい人間に、少なからず近づいてきたのかもしれない。

舞台本番の当日。

いつもの美容室で着付けとヘアセットをお願いしていたので、出向いてみると着付けの大ベテランの大先生という方が待っていてくれた。
年齢をこっそり全国公開で言うと70歳ぐらいの方で、日舞のことも詳しい方でした。

「え、この着物、重いかしら」っと先生。

どうやら、そんなに重くないらしい。

「え、重くないですか?」

「・・・。」

舞台が終わって、落ち着いて思い返してみると、私は、ひい祖母の想いや祖母の想いを「重さ」として感じていたのかもなと。

舞台は5月7日。

5月5日がウエサク満月で、この日は天上と地上の間に道が開けて強いエネルギーが降り注ぐという日でもあるらしい。
スピ系限定の怪しい話ではなく、京都の鞍馬寺やヒマラヤ山中や東南アジアにもなどでも「ウエサク祭」といって、「満月祭」が行われるそうです。

ippon bladeの新たな進展の時も、いつもウエサク満月と重なるそうです。
石川県では大きい地震があったりして何か大きな変化が起きているような不思議な日でした。

5月6日、ウエサク満月の余韻を残した舞台前日の夜。

寝ていると、意識は起きたまま身体は眠っていて、突然真っ暗闇の中に落ちていきました。

あ、突如、怪しい話になってすみません。
話半分で聞いてくださいね 笑。

そして、私が寝ているすぐ横に、妖怪の手のようなものが出てきて、バタバタと動き始めるのです!
追い払おうと修験の真言を唱えながら必死に手を押さえつけて格闘する私。要するに妖怪の手を追い払おうと私が手で、妖怪の手を押さえ込もうとしている構図。
(っというか、誰が想像してくれるんだろうこの状態)

それでも、まだ妖怪の手がジタバタするので、もう諦めて隣の部屋に行こうとしてドアノブに私の手が触れた瞬間、また布団の上に戻されて、身体が動かない。

「夢なんだから覚めてくれよ!」っと叫びながら、私の身体を押さえ込む何かと格闘し、なんとか起き上がって部屋の出口付近に辿り着き、ドアノブに手をかけると、今度はいきなり足の方から真っ逆さまに部屋の真ん中で宙吊りにされて、布団の上にバタンと落とされた。

それなこんなを3回ぐらい繰り返して、早く夢から覚めなければ!!っと必死になって動かない身体を動かそうとしていると、やっとアラームが鳴った!!

よかった、夢だった・・・。

本当に怖かった。

よかった、夢で。

たぶん。夢・・・。

自分が想像するよりも、舞台に立つことをとても緊張しているのだろうか。

うまく熟睡もできないまま、睡魔に襲われる心の余裕もなく、あっという間にリハーサルが終わり、本番が終わった。

でも、もうこれまでの軌跡や、舞台前日の不思議で恐ろしい体験も、舞台当日の1日を思い返してみても、一言、これしかない!

日本ってなんてファンタジーな素敵な国なんだろう・・・


自分の踊りといえば、もちろん色々と思うことがたくさんあって、後で動画を観るのも恥ずかしいぐらいだったけれど、観にきてくれた方々のためにブログに反省は書かないことにして、次の課題にします。先輩の子供たちの本番での踊りは流石だな〜!っという日本の子供の可愛らしさと情緒があったし、ベテランの方々の古典の踊りは皆さんの人生の背景を感じる落ち着きと、どう頑張っても長年続けないと表現できない首の微細な動きなんかは、本当に素晴らしかったです。
「日舞は首振り3年」らしい。桃先生は「首振り3年以上」っと仰ってましたが 笑。

そして、龍邑桃先生の舞台は、それはもうとてもとても美しくて・・・体幹から末端までの全ての身体の動きが、自然の中に揺らぐ木々のようで表情もとっても豊かで物語を感じました。

古典と創作で雰囲気がガラッと変わるのも、また観る人の心を揺さぶるものがありました。

特別出演の大前光市さんの舞台は、この世のものとは思えない不思議な空気が流れていました。
日本のおどろおどろしい息を呑むような世界観というか、でも、なんだか息を潜めながら見てしまう、その中にある美。脳裏にずっと残るような舞台。また、演目によってガラリと空気感が変わるので、これまた違う印象を受けるのですが、、、。

もう、そんな大前さんと桃先生の舞台は・・・

素晴らし過ぎて語彙力ない私には言葉にできません!

いつか皆さん、絶対に観てください♪

もうお一人の特別出演の岩本康平さんの舞台は、竜が踊っているかのように流線が美しく躍動感溢れ、康平さんの人生や人柄が溢れる舞台でした。

▶︎岩本康平さんのInstagram↓
https://www.instagram.com/koheiwamoto/

総じて、普通に観客としても見応えがあって素晴らしい1日を、過ごさせていただきました。(出演者がこんなに普通に楽しんでいていいのかわかりませんが・・・笑)

京極夏彦や宮部みゆきなど、20代前半は周りの女子たちがSMAPにハマっている頃、時代小説と妖怪ものにハマっていた相当変だった私。
あ〜、江戸時代にタイムスリップできるのなら、してみたい。この目でその世界を見てみたい。
そんなことは一生、叶わない夢。

でも、この日は、時代小説の中の住人になれたような夢のような1日でした。

私の拙い踊りも皆さんに観ていただけて、喜んでもらえて本当に嬉しかったです。

心からお礼申し上げます。

少しずつ上手になっていけるよう精進したいと思います!

師範の龍邑桃先生には、唄の選曲から毎週のお稽古、衣装に関することまで、多方面でサポートして頂き、私自身、全く想像もしていなかった点と点がつながる体験が訪れる機会へと自然と導いて下さったことに心から感謝です。

当日、緊張している私を子供たちがたくさん話しかけてくれて和ませてくれたし、ベテランの皆さんは、とても優しくカッコ良すぎる背中でいろいろと教えてくださいました。特別出演の大前さんと康平さんには、たくさんの刺激をいただきました。「表現」することの面白さに触れることができ、私の価値観がひっくり返ったことは間違いありません。


パートナーの天ちゃんも、いつも通りずっと側で、我が娘を見守るように支えてくれたし、母もお手伝いにきてくれて、「あんた着物が良かったよ。」っと着物を褒めてもらえたし、嬉しかった 笑!


そして、最後に「表現」は、舞台に立つ方々だけのものではなく、もっと気軽なものであっていいのだと。

日頃からランニングにもippon blade FLOWにも「表現」を意識していこうと思いました。

Ippon bladeで走る時、草木になってみてもいいし、ペガサスになってみてもいいし、龍神になってみてもいいし、風になってみてもいい。
そんなぶっ飛んだ想像でなくても、誰かに観られていることを少し意識して美しく走ろうと背筋を伸ばすように心がけるだけでも、気持ちが入ったランニングになる。

気持ちが入ったものは、誰かの心を自然と掴む。

そうやって走れば、路上が舞台になる。

それらは、一般的な美しさの概念に限定されず、人間の嫉妬や情念や、狐や狸や妖怪たちや、幽霊になってしまう女性の想いなども、唄と踊りで表現されると、誰にでも潜む「魔」をおおらかに肯定してもらえるような日本舞踊の包容力のように、自分で自分をそんな風に客観的に捉えて表現を楽しむのも面白いかもしれない。なんにでもなってみればいいし、なんでもやってみればいい。

技術や結果ではなく、何か少し欠けていても美しいと感じられる侘び寂びの感性を私たち日本人は潜在的に持っているのだから。

ひい祖母が紡いでくれた反物から仕立て上がった着物は、未だにずっしりと重い。

約40年間、胎児のように待っていた反物は着物になってこの世に生まれて、これからはこの着物を纏う未熟な私と共に成長していく。

ひいおばあちゃん、おばあちゃん、天国から観ていて、今、どんな気分?


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<告知>

■日本舞踊家・龍邑桃先生を講師にお招きして「日本舞踊から学ぶ「日本人の美しい基本所作」講座をオンラインにて行います!
TENARIのWSなどを受講したことのある方限定になりますが、一般募集が5月12日(金)〜5月14日(日)までありますので、ぜひご応募お待ちしています。

■袋井市の法多山尊永寺にて、イロトリドリ〜あなたの知らない浜松注染の世界〜
が開催されます。

そちらでも、日本舞踊・龍邑流が出演させていただくことになりました。
なんと、舞踊家の大前光市さんも出演されます。
お二人の舞台は前衛的で心に残る素晴らしい舞台ですので、ぜひ観にきてください♪
世界が確実に広がります!
↓大前光市さんのブログはこちら


■来たる5月28日(日)浜松市北区細江町気賀
みをつくし文化センターにて初心者向けと経験者向けに分けてワークショップを開催します!
こちらも、ippon blade代表小平天氏とAyari✼のコラボWSとなりますので、様々なバリエーションが飛び出すはずです♪
この日だけの化学反応をぜひ楽しんでください。

■待望の「疲れない動けるからだになるTENARIオンラインスクール生」13期生募集を5月後半にします♪
オンラインレッスンという概念を超えた体験がここでは待ってます。
ぜひ、エントリーお待ちしてます!


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