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『タクシー』

著名な占い師に薦められ、タクシーの運転手に転職した。始めた当初は生活も不安定だったが、とある客を乗せてからは事情が変わった。

その客はすでにこの世の者ではなかったが、連日貸し切り乗車であちこち巡り、実に羽振りがよかった。

あちら側の世界にも口コミというのは存在するようで、その日からというもの次々と現れるようになった青ざめた上客たちを相手に、私は“思い出巡り”を手伝った。

彼らの間で私は今、“故人タクシー”と呼ばれている。

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水もしたたる真っ白い豆腐がひどく焦った様子で煙草屋の角を曲がっていくのが見えた。醤油か猫にでも追いかけられているのだろう。今日はいい日になりそうだ。 ありがとうございます。貴方のサポートでなけなしの脳が新たな世界を紡いでくれることでしょう。恩に着ます。より刺激的な日々を貴方に。