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『腫れ物』

歌唄いの声は割れて
セミの死骸の蝉時雨
いつまでも地につけない
つけられない
苛立つ愛をもてあまして

遠ざかる夕立のなか
立ち尽くす君の
赤く染まる青空
たなびく焦燥

線路上に転がった
あこがれを見おろして
鳴くことを赦して
諦めを嘲笑って

四つん這いのまま
殺してください

物もらいの声は枯れて
乗り捨てた電車の影
わだかまる血に触れない
触れられない

沸き立つ飢餓はもみ消されて
舞い上がる埃のなか
さしのべた君の
暗く濡れた手のひら
錆びれた妄執

夏の庭に群がった
子供らを見下ろして
泣くことを許して
腫れた目で笑って

額づいたまま
震えてください

水もしたたる真っ白い豆腐がひどく焦った様子で煙草屋の角を曲がっていくのが見えた。醤油か猫にでも追いかけられているのだろう。今日はいい日になりそうだ。 ありがとうございます。貴方のサポートでなけなしの脳が新たな世界を紡いでくれることでしょう。恩に着ます。より刺激的な日々を貴方に。