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エッセイ【魔法の左足】【みんなでミナデイン】

文学サークル「ペンシルビバップ」は2023年11月11日(土)に開催
される「文学フリマ東京37」に参加します。

【文学フリマ東京37の概要】
🕙11/11(土) 12:00〜17:00開催
📍東京流通センター 第一・第二展示場
🚝東京モノレール「流通センター駅」徒歩1分
✅入場無料✨

文学フリマ公式サイトから引用

『魔法』をテーマにしたエンタメ小説・純文学・詩・エッセイ・短歌を詰めた文学総合同人誌をもっていきますので、当日ご参加される方はお気軽にお立ちよりください。ブース「き-14」でお待ちしております。

※ペンシルビバップとは……
2013年から活動している、東武の主催する文学サークルです。毎回テーマをひとつ決めて、メンバーそれぞれがエンタメ小説・純文学・詩・エッセイ・短歌を作成して、それをひとつの本にまとめています。今回で36号。
100号を目指して活動を続けています。

今日は新刊『魔法』の中から、私の書いた2本のエッセイの試し読みを掲載します。

【魔法の左足】
           東 武
 
 このエッセイは東武の提出でお送りいたします。
 
今回のテーマが魔法なので何か魔法に関係するような出来事あったかなー、と最近の出来事を思い返してみると、ありました。皆さん、魔法に掛けられたような経験がありますか? 私は二回あります。
 
 一度目は五年くらい前。職場へ向かう電車の中で「そういえば聖飢魔Ⅱの曲って蝋人形の館しか知らないな」と何のキッカケもなく急に思いました。他にどんな曲があるんだろうとユーチューブで検索し、
『EL DORADO』という曲のPVを観て、家に着く頃にはAMAZONの即日配送の魔の手で三枚のアルバムが届けられておりました。デーモン閣下の十万歳を超えているとは思えないパワフルな歌声に魅了されたわけですが、彼は悪魔ですからね。聖飢魔Ⅱの曲を知らない人間をいきなり魅了する魔法が使えたとしても不思議ではありません。ストレスが溜まった時に閣下の歌を大音量で聞くと気分が楽になるのでおススメです。
 
 二回目は2022年12月1日の朝五時頃の出来事です。その日は朝、四時に起きて、早々に職場に向かい、早朝の電車内、スマホで観ていました。
 カタールワールドカップの日本VSスペイン戦です。
 
 少し時間を遡りまして、ずいぶん昔の話ですが、Jリーグは私が小学生の頃に始まりました。
 当時は川崎市民だったのでヴェルディ川崎のファンでした。三浦カズ、ラモス、アルシンドとスター選手が集まっていて、でも一番好きなのはゴン中山で、ルールなんてよくわかっていないけれど「なんとなくかっこいいから好き」くらいの小学生的感性でサッカーが好きで、友達とボールを蹴りあってはカズダンスの真似とかしていました。
 ところがヴェルディはホームタウンを川崎から移して名称も東京ヴェルディに変わり「われわれ川崎市民は裏切られたのだ」などと勝手にショックを受けて、川崎フロンターレがいるのだからそっちのファンになればいいものを、だんだんとサッカーへの興味を失っていきました。当時、学校に配られていた市の広報誌か何かに載っていた「フレフレフロンターレ」というフロンターレが題材の四コマ漫画だけ楽しんでいたのを覚えています。
 その頃から段々とスポーツ観戦自体の興味を失い、にわか子供からスポーツ無関心大人に成長しました。あの時フロンターレのファンになって応援し続けていれば、と今になって後悔しています。
 スポーツ無関心大人なので当然、東京オリンピックもどの競技で金メダルとったのか知りませんしワールドカップがどこで開催されているかも知りません。
 でも、カタールワールドカップだけはニュースでグループEの参加国を観てしまったのです。
 日本、ドイツ、スペイン、コスタリカ。この4チームを観た時に元・にわか子供の私でさえ「あ、こりゃ日本はグループステージで敗退か」と思いました。初戦のドイツ戦で一点でも取れたら良いほうだろうなと思いました。だってドイツには守護神オリバー・カーンがいます。(当然、とっくに引退していましたが私はそれすら知りませんでした)
 ところが、日本はドイツに勝ったのです。
 
「いったい何が起こっているのだろう」と、不思議に思って私は次戦のコスタリカ戦を観ました。が、コスタリカ戦では日本が破れました。
 スペインに勝たねば日本はグループステージを突破できません。が、勝てるはずありません。相手はスペインです。「二度も奇跡が起こるほどサッカーは甘いスポーツではないぞ」と私は、偉そうにも思いました。
 でもスペイン戦を観戦したのです。久々にサッカーに興味が沸いたので日本の死にざまを看取ってやろうと偉そうにも思って。
 時間を2022年12月1日の朝五時頃に戻しましょう。カタールワールドカップの日本VSスペイン戦です。予想通りというか、日本は前半に失点しました。ところが後半開始3分に堂安律選手がゴールを決めて同点に追いつき、更にその3分後、私は観てしまったのです。
 ゴールを外れエリア外に飛び出すボールを、川崎フロンターレ出身の三笘選手が必死に走り込みライン際ギリギリに左足でセンタリング、そしてゴール前に詰めていた同じく川崎フロンターレ出身の田中碧選手がゴールネットに押し込みました。
 画面越しでも「いまエリア出たでしょ」と感じるような場面でしたが、3分間にも及ぶVARの結果、ライン上にボールが1ミリ残っていたのが確認され、日本が逆転しました。歴史に残る「三笘の1ミリ」です。そのままリードを守り切り、日本は下馬評を覆してグループステージを突破しました。
 スマホを握る手が震えました。よく小説を書いていて「血がたぎる」なんて表現を使いますが、まさにあの瞬間は血がたぎりました。追いつくかどうかのラインぎりぎりまで走り切り、間に合わないと諦めるのではなく蹴り返し、そしてボールが来ることを信じてゴール前に詰めていた選手たち。「諦めない」と言葉にするのは簡単ですが、あの場面は選手の誰も当然のように諦めていなかったからゴールに繋がり、日本が勝利したわけです。最終的に日本はクロアチア代表にPK戦の末に負けますが、私のスポーツ熱は冷めませんでした。
「俺が日本をワールドカップ優勝に導いてやる!」と、勢い込んでサッカーゲーム『FIFA23』を買いましたがスイッチ版ではワールドカップが実装されておらず、日本を優勝に導く夢は叶いませんでした。
 
 そんなこともありましたが、スポーツ観戦の面白さを思い出してしまい、地元のサッカーチームSC相模原(昨年はJ3最下位)の試合を観に行くようになり、ラグビーの三菱重工ダイナボアーズの試合も観に行くようになり、バスケもラグビーもワールドカップをテレビで応援するようになりました。今ではすっかりスポーツ観戦のトリコです。「スポーツは筋書きのないドラマ」だなんて有り触れた言葉がありますが、今では真理だなと思います。
 
「三笘の一ミリ」はすっかり冷えていた心に熱を取り戻してくれる「魔法」でした。にわか子供から無関心大人になるまでに忘れてしまった、応援の楽しさを久々に思い出しました。
 声援は選手の力になる大きな「魔法」だと信じて、地元SC相模原がJ3最下位を抜け出してシーズンを終えられるよう応援しています。今のところ20チーム中19位。下位ではありますが毎試合、熱戦を繰り広げています。
 ところで声援が力になるのはスポーツ選手もクリエイターも同じですから、我々ペンシルビバップも誰かに応援してもらえる文芸サークルに成長したいと思っています。
 サポーターの声援が選手に力を与えるのと同じように、読者の感想や「良かったよ」の一言が書き手に力を与えてくれます。声援お待ちしております。やり方は簡単!
 
・ツイッターで「ペンシルビバップ」で検索。
・またはインスタで「東武@ペンシルビバップ」で検索。
・「新刊良かったよ」と返信する。
 
 これだけでチーム一同のモチベーションが上がります。
 どうか今後ともよろしくお願いいたします。
 
 
                      【了】
 
【みんなでミナデイン】
           東 武
 
 このエッセイは東武の提出でお送ります(二回目)
 実はこれを書いているのはすでにとっくに締め切りも過ぎて、みんなの原稿を預かって編集作業をしている最中なのですが、時間を巻き戻す魔法を使って締め切りに間に合わせたことにしましょう。
 編集中にふと「みんなでいる時に誰かがミナデイン唱えて自分だけMP減らなかったらショックだよな」と思い立ったので、エッセイの二つ目です。
 
 ミナデイン:1990年2月11日にエニックス(現スクウェア・エニックス)より発売されたドラゴンクエスト4に出てくる「じゅもん」です。唱えた勇者と仲間のMP(マジックパワー)を消費して敵全体にダメージを与えます。つまり、自分だけMPが減らなかったそれは自分だけ仲間だと思われていな(以下略)
  
 ドラゴンクエストのじゅもんで現実に覚えていたら便利だな、というものについて考えました。
 
 アバカム:あらゆる鍵を開けるじゅもん。家の鍵はもちろん「開錠」という概念で考えるなら車のスマートキーも暗証番号型のドアも、スマホのロックも解除可能でしょう。留置場や刑務所からの脱出も簡単ですし令和の脱獄王として歴史に名を残せます。
 
 リレミト:ダンジョンから脱出するじゅもん。東京の生み出した迷宮・新宿駅で迷子になった時の備えに。
 
 ベギラマ:敵グループを焼き尽くすじゅもん。外を歩いていて不良グループに絡まれた時は迷わず唱えましょう。でも唱えて敵グループの一人だけが無傷だったら「あ、あの人みんなに仲間と思われてないんだ……」と気まずい空気が流れます。
 
 ザキ:敵の息の根を止めるじゅもん。セクハラ・パワハラをする上司は始業前に黙らせておきましょう。
 
 ザオリク:死亡した人物を生き返らせるじゅもん。終業後は上司を生き返らせるのを忘れずに。事件になりますので。
 
 ザメハ:眠っている相手を起こすじゅもん。七時を過ぎていて集団登校の時間まであと四十分しかないのに何度声を掛けても起きない小学生一年生の娘を起こす時に便利。なお、休みの日に限って六時くらいにばっちり起きてこちらを起こしてきますがそれに対抗するじゅもんは今のところ存在しません。
 
 実際に覚えていたら便利なものばかりですね。今度は逆に覚えても役には立たないであろうドラゴンクエストのじゅもんについて考えます。
 
 イオナズン:大爆発を起こすじゅもん。起こしてどうするんですか?
 
 メラゾーマ:大きな火の玉を飛ばすじゅもん。飛ばしてどうするんですか?
 
 アストロン:鉄の塊になってあらゆる攻撃を防ぐじゅもん。防いでどうするんですか?
 
 ラナルータ:昼夜を逆転させるじゅもん。昼に唱えると夜になり夜に唱えると昼になる。混乱するぞ。社会が。
 
 ルーラ:過去に一度でも行った町に飛んでいけるじゅもん。これは一見、役に立ちそうですがダメです。まず「一度行った町」という条件ですが、町の代表地点ということなら県庁所在地あたりでしょうか。町単位というのなら市役所、区役所、町役場かも知れません。「戸籍謄本取りに行くのに便利じゃん」と思うかも知れませんが、ルーラは建物の中で唱えると頭をぶつけます。つまり飛んでいる最中も物に激突するということです。もし頭上を飛行機が飛んでいれば人と飛行機の激突という航空史に残る事故を引き起こすでしょう。成田・羽田の近辺でなければ大丈夫と思われるかも知れませんが、防衛省は2027年までに小型無人機に対する迎撃能力を強化する旨を発表しています。ルーラ中の魔法使いが敵国のドローン兵器と誤認されて空自のミサイルに撃墜される不幸な事故が起こるかも知れません。百歩譲って空を無事に通過できたとしても、着陸地点はどうでしょうか。道路の真ん中に着地したら車にはねられる可能性があります。そもそも電信柱が通っていて電線に絡まる危険性だってあります。これを無事に通過するにはルーラを唱えると同時にアストロンを使って鉄の塊になりあらゆる攻撃を防ぐ必要がありますね。前述でアストロンは役に立たないと書きましたが事実誤認であったことを謹んで謝罪いたします。
  
 色々と考えましたが最も役に立つ最強のじゅもんが一つありました。
 バイキルトです。
 
 バイキルト:味方一人の攻撃力を倍にするじゅもん。攻撃力が倍、という点に注目すれば「筋力が二倍になる」と考えて差し支えないでしょう。これをプロボクサーに唱えたらどうなります? 破壊力二倍の最強ボクサーの誕生です。陸上選手に唱えましょう。二倍の脚力を持つ快速ランナー、二倍の腕力で砲丸や槍を投げる無敵選手の誕生です。レスリング選手にも唱えましょう。吉田沙保里さんとも良い勝負ができるかも知れません。サッカー選手に唱えれば、速力もシュート力も二倍、伝説に残るサッカー選手の誕生です。しかも不正にもなりません。サッカーのルールを熟知しているわけではないので誤りはあるかも知れませんがバイキルトがルール違反という話は聞いたことがないので。
 
 などとここまで考えてきましたが、我々は魔法使いではなく一切のじゅもんが使えないので、応援している選手にはバイキルトを唱えるのではなくて声援を送るしかないのです。声援が選手に与える大きな「魔法」なのです。こういうキレイな感じでまとめておきましょう。
 
 ところで声援が力になるのはスポーツ選手もクリエイターも同じですから、我々ペンシルビバップも誰かに応援してもらえる文芸サークルに成長したいと思っています。
 サポーターの声援が選手に力を与えるのと同じように、読者の感想や「良かったよ」の一言が書き手に力を与えてくれます。声援お待ちしております。やり方は簡単!
 
・ツイッターで「ペンシルビバップ」で検索。
・またはインスタで「東武@ペンシルビバップ」で検索。
・「バイキルト」と返信する。
 
 これだけでチーム一同のモチベーションが上がります。
 どうか今後ともよろしくお願いいたします。
 
 
                      【了】

他にもメンバーの書いた素敵な小説や詩・短歌・エッセイがたくさん入っていますので、11月11日はぜひ東京流通センター、第二展示場「きー14」までお越しください。



素敵な表紙は毎回、メンバー「とうこ」の力作です。

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