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[2]と[3]を包む、大いなるもの。

よく「2002年の発売以来、ガージェリーは何も変えていません」と言っているが、実はひとつだけ変えたことがある。5年以上前からガージェリーを召し上がっている方ならご存知かもしれないが、ガージェリーの瓶三種、Wheat(ウィート)、Xale(エックスエール)、BLACK(ブラック)は、2018年の夏に微妙なラベル変更、というか、ネーミング変更をしている。

これが、今のラベル。

そして、おそらく言われなければお店の方でさえ気づかない違いかもしれないが、旧ラベルはこれ。

旧ラベルは、一番下のブランド名が「GARGERY」ではなく「GARGERY23」になっている。それまでは、樽の「GARGERY (ガージェリー)」に対して、瓶商品は「GARGERY23 (ガージェリー・トゥースリー)」と表していたものを、2018年に樽も瓶も「GARGERY」に統一した。当然、当時のガージェリー取り扱い全店にお知らせはしたのだけど、未だにメニューに「GARGERY23」と記載されていることがあるので、最近ガージェリーを知った方が見ると、なんだろう?と思うかもしれない。

この変更は「GARGERY」というブランド名の持つメッセージをより明確に伝えるためのものだった。

GARGERYとは、イギリスの小説家チャールズ・ディケンズの『大いなる遺産』(原題『Great Expectations』)に登場する心優しい鍛冶職人の名前。予期せず手にした莫大な資産のために心惑う人生を送る主人公ピップに、いつも変わらぬ深い愛情を持って接したのがジョー・ガージェリー(Joe Gargery)で、その名前をつけたのは、造り手としての真摯な想いのシンボルであるとともに、飲み手の人生にいつも変わらず優しく寄り添うようなビールにしたいと思ったからだ。

実際のところ、GARGERYというブランド名は昨今の商品名の中では、読みにくく、覚えにくい方なのではないかと思う。それでも敢えてこの名にしたのは、その意味をお店の方やお客様に語ってもらいたいと思ったから。一気に有名になるのではなく、ブランドを愛してくれる人たちの口から口へと、ゆっくり丁寧に広まっていくことを意図したネーミングだった。

一方で瓶商品に「23」をつけたのは、事業スタート当初は樽商品2種類、スタウトとエステラだけだったガージェリーが、2009年に初めて瓶商品を発売した際、樽と瓶を区別しやすくするために「GARGERY」の後にサブタイトルか何かがあった方が良いという便宜的な理由だった。「23」の意味は、ガージェリーの3番目の商品だったので「3番目へ」つまり「To the Third」、さらに「To」を数字の「2 (トゥー)」に読み替えて「23 (トゥースリー)」とした。また、とりあえずの一杯目のビールではなく、一日の締めくくりの時間、つまり深夜にゆっくり味わうお酒として飲んでいただきたい、23時の「23」という意味を込め、さらに、弊社の佐々木と当時のスタッフが鉄道好きで、事務所があった武蔵小金井を通るJR中央線の車両の型式「233系」にちなんだという裏話もある。

こういう経緯のある「23」には思い入れもあったが、あらためてGARGERYブランドとして伝えていきたいメッセージについて考え直した時に、何が大切なのかは明らかだ。これから長く「GARGERY」を語り継いでいきたい、語っていただきたいと思うと、「23」の意味は本来のブランドのストーリーとは異なる次元にあり、語り手と聞き手にとって筋が複雑になり過ぎてしまう。だから「23」のそれまでの役割に感謝しつつ、卒業することが必要だと考えたのだ。

一方で、基本的なラベルデザインもビールの中身も変える必要は当然ない。今と同様、当時の想いも、GARGERYは「変わらない」ブランドでありたかったから。いつも変わらず、深い愛情を持ってお客様のストーリーに寄り添っていたい。変わらないGARGERYであり続けるために、少しだけ変えた。

あらためて「23」という数字を見ると、樽[2]種類、瓶[3]種類、というようにも見える。

今は、その先までやってきた。

二種類の樽と、三種類の瓶という区別ではなく、GARGERYロゴを包み込む空のような、大地のような、普遍的な存在と意志を示す、Great Expectations (グレートエクスペクテーションズ) という名の、大いなる希望。

さあ、先に進もう。


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