十五夜

数週間前のこと

十五夜の夜


おはなちゃんは嫁さまとお団子を作ったそうな

その前日、
心やさしいおはなちゃんは、
月にうさぎがいる理由を知って涙した

ある昔話で、

腹を空かせたじいさんに、
他の動物たちはは果物やら魚やらを採ってきて、
せっせとじいさんにあげているのに、

うさぎだけは何もあげることができない

ならせめて、僕を食べてくださいと、
うさぎは火に飛び込んで焼け死んだ

そのじいさんは神様で
心根の優しいうさぎを月へ送り出してあげた

という話


「なんでうさぎちゃん、ひにとびこんだの?」

「うさぎちゃん、つきでさみしくないの?」

「うさぎちゃんはなんで、しななくちゃいけなかったの?」

ぅぇぇえええん・・


この子の純粋な優しさに胸を打たれつつ・・
これこそ昔話が語り継がれる意義だと感じつつ・・


そして十五夜の夜
あたしは不在

おはなちゃんは嫁さまと一緒にお団子を作ったらしい

自分のお団子をひとつ、
別のお皿にのせて、

うさぎさんにわけてあげようと、
そのお皿を外に置いた

おしっこに行き、戻ってくると、
なんとお団子がなくなっていた


「ただいまー」


帰ってきたあたしに、おはなちゃんは興奮気味に

「あのね、うさぎちゃんがね、おだんごたべてくれたとよー!」

前後の文脈がつかめないため、とりあへず

「おおそれは良かったね!」

と話を合わせた


「うさぎちゃんたべてくれた!」

嬉しそう、誇らしげな表情


おはなちゃんが眠ったあと、
嫁さまから経緯を聞き、

「で、お団子は本当になくなってたの?」

「ううん、あたしが食べた」

と嫁さま( ̄▽ ̄;)


どうやらそれは演出で、
おはなちゃんが目を離してる隙に嫁さまが食べて、

うさぎちゃんが食べたように演出した、ということらしい

なにはともあれ大成功


おはなちゃんの優しさを大事にする、
嫁さまの粋な計らいである


思いやりのある、優しい子に育ってくれている


「ところで、俺のお団子は?」

「ないよ。お父さんの分は、おはなちゃんが食べた」


前言撤回!!!

おしまいまで読んでいただいてありがとうございます( ̄▽ ̄)