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ここはすべての夜明けまえ

今日は少し早いですが、お昼時、昨夜読み終えた本についてお話ししたいと思います。

昨夜読み終えた作品は、間宮改衣さんの「ここはすべての夜明けまえ」です。

2024年3月6日に早川書房から、128ページの単行本として発売されています。

作品の帯に書かれている簡単なあらすじは、

2123年10月1日、九州の山奥の小さな家に1人住む、おしゃべりが大好きな「わたし」は、これまでの人生と家族について振り返るため、自己流で家族史を書き始める。それは約100年前、身体が永遠に老化しなくなる手術を受けるときに父親から提案されたことだった。
いやだったこと、いたかったこと、しあわせだったこと、あいしたこと、一生わすれたくないとねがったこと、老いない身体を手に入れた彼女の家族史

著者が本作で第11 回ハヤカワSF コンテスト特別賞を受賞し、作家デビューされたこの作品は話題となっていて、週刊売上ベストテンにも入っていて、気になっていました。

まずはその装丁、表紙に驚かされます。今までにカバーに本文が印刷されている作品を私は知りません。

そして次に驚くのが主人公が

マシンの手だから疲れないけれど、漢字は画数が多くて面倒、面倒臭いものはひらがなで書いてしまおうと思う(画数以外原文ひらがな)

本文p5抜粋

という理由で、家族史のほとんどをひらがなで書いているため、普段漢字、カタカナ、ひらがなで文章を理解してきたものにとって、これはキツかったです。
日本語が、漢字、カタカナ、ひらがなで書かれているありがたみをこんなに感じると思いませんでした。

主人公が書いている時代は今から10年後の世界ですが、家族史なので、彼女の家族の有り様は現代社会の問題点を鋭く指摘する内容になっていました。

主人公の出産で、妻を亡くした寂しさを、娘を偏愛することで生きる父親。

3Dプリンターか何かで人工身体を作って行う融合手術は、2021年から老化に対する治療法として認められた自由診療ではあるものの、父親による過度な希望で手術を受け、永遠の命を授かってしまう主人公。

永遠の命ではありますが、体はもはやロボットに近く、兄姉はもとより手術を望んだ父でさえ距離を置く存在となってしまい、主人公が最後に看取るのは、唯一彼女を愛した甥のみという寂しい人生です。

私も年齢を重ね、老いを心身ともに感じることが多いですが、若さを求める気持ちは無くなりました。外見だけ若さを保っても無意味に思えます。

2123年地球が気候変動、海面上昇の影響で近い将来人間が住めなく星になるとわかり、住める確率50%の地球から約5光年離れた惑星に向かって人類が12月25日に出発することが決まり、主人公も同乗を勧められますが、地球に残ると決めます。

人生でたった一つでいいから、私は間違ってなかったって思うことがしたいんです。(中略)自分を許して、忘れることって、これから生きていくには、とても大切なことだと思います。そうじゃないと、人は生きていけないから。p 114(原文は全てひらがな)

本文p114抜粋

最後は人生観に至る主人公。これからの地球の未来、まだまだ深く読めそうな作品でした。

今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

見出し画像は遅れながら、愚息が送ってきてくれた母の日のプレゼント。
読書にもいいかな、と思ったそうです。ありがたいです。

週末ですね。有意義にお過ごしください。

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