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汚れた手でそこで拭かない

1都3県に緊急事態宣言が出されましたが、こちらまた平地一面雪で覆われ、その意味でも身動きできない状態になりました。
最近の天気予報は外れることが少なく、常備食をかなり用意しましたので、食には不安がありませんが、隣町では停電も発生したりして、そちらの心配があります。どうかこれくらいで雪が収まって欲しいです。

さて年末年始をしゃばけシリーズで楽しんだ私ですが、昨夜は今月中旬発表される直木賞候補作を1冊読み終えました。

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平穏に夏休みを終えたい小学校教諭、認知症の妻を傷つけたくない夫。元不倫相手を見返したい料理研究家…始まりは、ささやかな秘密。気付かぬうちにじわりじわりと「お金」の魔の手はやってきて、見逃したはずの小さな綻びは、彼ら自身を絡め取り、蝕んでいく。取り扱い注意!研ぎ澄まされたミステリ5篇。(単行本の帯より)

ただ、運が悪かっただけ
埋め合わせ
忘却
お蔵入り
ミモザ

本作は雑誌「オール讀物」に掲載された4篇と書き下ろし1篇が収められた独立短編集です。

私にとって著者の作品はこれまで本作を含め単行本を6作品読んだことになりますが、デビュー作「罪の余白」を読んだ時は衝撃的で、この作品を越えるのは大変だろうなと思っていました。
確かにそれ以降の作品を読みましたが、どんでん返しはあるもののデビュー作に勝るとはいえないという印象を持っていました。

今回候補になったのが短編集ということで、今まで長編が主だったので意外だなと思い読んだのですが、読み終わって、スッキリとし、鋭いミステリの仕上がりに久々にやられた感を感じました。

私が学校現場に勤務しプール管理の経験もあるので、「埋め合わせ」の主人公 小学校教諭がプール排水栓閉め忘れによる大量の水損失をなんとか誤魔化そうとする姿は、とても現実味を感じたし、最近ニュースになることが多くなった芸能人の覚醒剤等の問題を、新人映画監督作品公開に絡ませた「お蔵入り」も題材のうまさを感じ、老人の孤独死とともに私自身少しづつ意識している認知症状をうまく扱ったと思う書き下ろし作の「忘却」はまさかとは思いつつ、実は現実にあるかもと思わせる印象深いものでした。

どの作品も人間の欲の一つ「お金」と誰しも持つ「秘密」にじわりじわりとからめとられていく様が描かれ、確かに身近で恐ろしいのです。

「何か忘れていることはなかったかしら」

という作品「忘却」での妻の言葉が今もじわじわと怖くて、リフレインしています。

今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
私の住む田舎町以上に北陸・東北地方は大雪です。どうかお気をつけて。
その他の地方の方も思わぬ雪にご注意ください。

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