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「営業から上がる情報を信用すると売れる商品・サービスはできません。」マーケティングは本質は素直な視点で現場を見ることです。

マーケットに一番接しているのは営業です。

日頃から顧客の意見を聞いたり、マーケットで起こっている問題に直に接しているのですから、本来は売れる商品やサービスに関する知識知見を持っているはずです。

しかし、真っ先に営業の意見を聞いて新たなサービスや商品を開発しても、成功したという話はあまり聞きません。

今日は、マーケティングについてお話したいと思います。

1.顧客はどこにいるのか?

これからお話することは、わたしの実体験です。

1980年後半から2000年まで、某油圧機器メーカーで市販用のダンパーの商品企画&営業を担当していたときの話です。

エンジニア達は皆サスペンションのプロフェッショナルで、自動車メーカーのエンジニアとダンパー開発に携わる最高レベルの技術スタッフでした。

丁度そのころチューンアップが流行し、様々な市販パーツが販売され始めた時期で、チューンアップダンパーのニーズも高まっていた時代でした。

私がいた会社も市販ダンパーの開発に取りかかり、まずは営業から現場の情報を吸い上げることになりました。

上がった情報はこんなものでした。

●顧客は、「いかに速く」、「いかに乗り心地よく」、「カッコよく」
 なる市販パーツを求めている。

●当社の熟成した技術で商品開発すれば、必ず売れるはずだ。

これを聞いたエンジニア達のモチベーションが上がり、実車テストを繰り返して、一年後に最高のサスペンションパーツ完成し市場に投入しました。

ところがです。。。。結果は全く売れず、在庫が増えて行くばかり。
販売店に行って意見を聞いても、こんなことを言われました。

「お客様に勧めると、良さは分かって貰えるんですが売れないんですよ」

2.顧客が集まる現場に行ってみた

当時の車好きの顧客は、どんな人達かというと。。。

実は暴走族に近い人達で、毎週末に仲間同士で集まって車自慢をしていました。

今だったらこの手のユーザー向け商品開発なんて、コンプラに抵触すると思いますが、当時の私はそんなことはお構いなし。

怖さはあっったものの、どんなニーズがあるのかという好奇心が先に立って、彼らのニーズを直接聞くことにしました。

すると、想像を絶するニーズがあったのです。

彼らの話はこんなことでした。

「仲間より速く走るのは当たり前でしょ」

「それより、どんだけカッコよく車高下げれるか?だよ」

「俺のシャコタン(車高短)は、ショートホープ(タバコです)一個分の車高だぜ」

「だけどさ。。。車高下げるとダンパーがすぐ壊れるんだ」

純正のダンパーのまま車高を下げると、例えばダンパーが10CMしか縮まないのに、車高さげると20CM以上下がるのですから、壊れるのは当たり前です。

我々が考えていたユーザーのニーズとは、
「高い走行性能と乗り心地の実現」

しかし、ユーザーが求めていたニーズとは、
「車高を下げてカッコよくしても、壊れないダンパー」

つまり、私たち作り手は、
「マーケットを自社の価値感で、現場を見ていた」
「顧客を見ず、自社の強みで商品を作れば売れるはず」
と考えていたことになります。

3.企業の勘違い

マーケットを自社の偏った価値感で見てしまうと、トンチンカンな問題点しか気づくことができません。

以下は、前回の記事でも引用したものですが、マーケティングの視点の重要性をよく現しています。

顧客 が 減少 し て き て いる リテール バンク が その 失敗 を 分析 し た ところ、 顧客 が 他 の 銀行 へ 移ろ う と し て いる こと が わかっ た と いう。

データ に よれ ば、 口座 を 解約 し た 顧客 の ほとんど が、 銀行 を 変える 理由 として「 利率」 を 挙げ て い た。

しかし、 同業 他社 の 利率 と 比較 し た ところ、 さほど 違い が ない。 顧客 が 他行 へ 移る 本当 の 理由 は、 口 に し て いる 理由 とは 別に ある という こと だろ う か。  

不満 を 示す 顧客 に 注意深く 聞き 取り を 行っ た ところ、 取引 を やめる、 表 には 現れ ない 理由 が 明らか に なっ た。 顧客 が 苛立っ て い た のは、 銀行 提供 の クレジットカード を しつこく 勧め られ、 しかし その後 発行 を 断ら れる こと だっ た ので ある。

エイミー・C・エドモンドソン. チームが機能するとはどういうことか ― 英治出版株式会社

マーケティングとは、自社に視点を置くのではなく、顧客に視点を置いて現場を見る。

その上で、「顧客の困り事」、「顧客自身が言語化できていない潜在欲求」を見出すことです。

マーケティングには素直な視点が、もっとも重要なことなんですね。

皆さんはいかがお考えでしょうか?





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