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第二話 孤独

なにこれ、、、

確実に耕ちゃんの字だ

え、失踪??

45歳の二人の子供の父親が?

急に??

奈美「ねぇ、これパパの字だよね、、、?」

貫太「え、パパどっか行っちゃったの??」

私「何か事情があるのよ。とりあえず学校行きなさい!きっとすぐ帰ってくるから」

奈美「え、でも、、ママ大丈夫?」

私「ありがと!大丈夫よ!だってパパだよー?奈美や貫太を置いてどっか行っちゃうわけないじゃん」

奈美「うん、、昨日パパがね、奈美はパパのこと好き?って聞いてきたの。。私ちょっと気持ち悪いとか思っちゃって、本当はね、大好きなのに、なにそれ、キモって。言っちゃって、、」

奈美も抱きしめる。

私「奈美のせいじゃないよ。パパもママも奈美の事大好きだから」

貫太も抱きつく。

私「もちろん貫太の事もね」

とりあえず子供たちをいいか聞かせて、学校に向かわせた

せてと、、、ここからどうするか、、、

会社、、会社はどうなってるんだ?

今は完全リモートになっていて、自宅で在宅勤務をしている。

本来ならもう在宅を開始してる時間、、、

でもあんまり大事にしたくない、、

ただの家出の可能性もあるし、、

でも見たところPCも置いたまま、、、

そうこうしていると会社用携帯が鳴る

旦那の上司からだった

とっさに出る

荒井「おつかれさまです。荒井です。神田君?勤怠まだ出てなかったから、電話したんだけど、大丈夫?」

私「いつもお世話になってます。神田の家内です。」

荒井「、、、え?あ、どうも。。あれ、神田くんは?」

私「それがすみません。。ちょっと高熱を出して寝込んでしまっておりまして。ご連絡遅くなってすみません。このご時世なので、今週お休みさせてください」

荒井「そうでしたか、、!それはお大事に、、くれぐれも無理せずに、、年度末業務も落ち着いてきましたし、何とかなりますので、無理させないであげてください。」

私「ありがとうございます。皆さんもお忙しいのにご迷惑をおかけいたします。」

荒井「いえ、いつも神田君に頼ってばっかりで、本当にみんな頭が上がらないんですよ。奥様も大変かと思いますが、お大事にしてください」

私「はい、ありがとうございます。失礼いたします」

皮肉だなー。

こんなことがない限り、旦那の上司から直接旦那の評価を聞くことなんてなかったと思う。

一緒に働いていた時から仕事は真面目にするタイプだったけど、ここまで慕われるタイプだったとは思ってなかった

むしろ彼は今次長という役職で課長の一個下なんだけど、元々数年前までは課長だったのだ

話せば長いんだけど、、、、、

いや、簡単に言うと降格させられてた

それにはいろいろ原因はあるんだけど、、

彼の性格からして課長にはそもそも向いてなかったんだけど、38歳の時課長になった

同年代が多い課で、彼が1番その課で古株だったからっていうのもあったと思う

あんまり出世欲ないタイプかと思っていたけど、意外と喜んでたのを覚えている

その課のメンバーが好きみたいで、やりやすいと思ったのかもしれない

その日よく記念日で利用するフレンチでお祝いした

美奈もまだ小学生で、貫太はまだ4才だった

もしかしたらあの頃が1番幸せだったのかもしれない

はっ!そうだ実家だ!

あ、義母さんに連絡してみよう

義母「あら、恵子さん?どうしたの?こんな平日の昼間に」

私「ご無沙汰しております!おかあさん!が元気ですか?」

義母「元気げんき。恵子さんな達が会いにきてくれればもっと違うんだけどねー」

私「すみません、、最近子供達も大きくなってお休みの日は家族と過ごすよりも友達を優先することが多くて、、」

義母「いいの。いいの。私達が元気なうちは、こっちから東京行ってもいいしね。」

私「あの、変な事お聞きするんですが、、最近耕一郎さんから連絡ありましたか?」

義母「え?聞いてないの?あったわよ!生前贈与の件で。ほら、毎年少しづつ税金かからないように送ってたお金あったでしょ?」

私「あ、はい、申し訳ないぐらいの金額を、、」

義母「本当はあと3年かけて送るつもりだったのに、急ぎで必要とかいって、300万送ったのよ」

私「300万??」

義母「あら、やだ。奈美ちゃんが留学したがってるとか聞いてたけど、、違うの?」

私「あ、いえ。、実はそうなんですよ!でもまだ先の話でしたし、そもそも毎年頂いている蓄えもあったので、、なんでそんな事言ったんだろう、、、」

義母「そうなのー。変ねぇ。耕一郎に代わってくれる?」

私「あ、それが!今ちょっと仕事行ってしまってて。」

義母「あ、そうよね。じゃ帰ってきたら連絡させてくれる?何時になっても起きてるからって」

私「わ、わかりました。すみません。突然電話しちゃって」

義母「全然大丈夫だけも何か用事あったんじゃないの?」

私「あ、いや、久々にニュースで桜島を見て、ご連絡しました。」

義母「あら、嬉しい。いつでも帰ってらっしゃいね。恵子さんの第二の故郷なんだから」

私「ありがとうございます」

電話を切る

実家にも帰ってなかった、、

それに300万って、、

私は旦那の実家正直あんまり好きじゃなかった

交通費がかかりすぎるという言い訳で、全然帰ってなかった

なのに、、

義理のご両親は本当に良くしてくださる方々だった

弱ってる時に優しくされると本当にしみじみ感じるなぁ

自分の不甲斐なさを

耕ちゃん、、どこにいるの、、、

もう一度携帯を鳴らす

かれこれ30回ぐらいかけたけど、コールは鳴るのに出ない

でも鳴るってことは少なくとも生きている

ような気がした

とりあえず、、、警察に届けるしかないよね、、

まだ失踪して半日だけど、、

あーこういう時、本当の事を相談できる知り合いや友人がわたしにはいなかった

月1で会合してるママ友はいるけど、こんな事絶好の笑いのネタになる、、、

絶対に言えない

どっちかっていうと旦那は友人がいなくて、休みの日は只管引きこもってゲームをしているタイプだったから、可哀想なひととか思ってたのに、こういう時に相談出来る人がいないのは、私の方だった

この先本当に旦那が戻ってこないとして、子供二人を抱えてどうやって生きていけば良いのだろう

急に涙が出てきた

私なんかした?

なんでこんなことになってんの?

どこにいるの?

耕一郎、、