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【29話】「OCD」(強迫性障害)ーー夫の仮面が剥がれていく

あの事故から、私の心はどんどん夫から離れていった。夫婦生活を立て直そうとしても、次から次へと打ちのめされるような暴力的な「言葉」だったり「行為」があった。

かといって毎日が暗いわけではない。週末は彼が大好きなワイナリーに行ったり、高級レストランや週末はお決まりのカフェで朝ごはんを食べたり、ウォーキングをしたり、生活上は普通に見える。ただこれは週一回だけのこと。行き先はいつも彼が決めるし、旅行の計画も全て彼が決めて従うだけで良いので、楽と言えば楽だった。一方で、私が「したい事」や「行きたい場所」は彼が認めない限り実現しなかった。結婚前からずっと「やる、やる」詐欺になっていた家のリモデリングもその1つだった。

結婚する前に友達から、「ちゃんと契約書を作った方が良いよ」と言われた事がある。「夫婦なのに契約書?」その時の私はまだ結婚に幸せな未来像を描いていたし、彼の事も信頼していた。いや、信頼したいという気持ちが強かった。 でもある時、「どうして自分の意見は通らず、思いが伝わらないんだろう」と思いが込み上げていった。生活は彼に支配されていた。

結婚前、親しい友達からもう一つ忠告された事があった。「彼はOCDだよ。気をつけた方が良い」と。その言葉が今頃になって蘇ってきた。OCDとは、Obcessive Conposive Disorder の略。日本語で言う、「強迫性障害」だ。簡単に言えば神経質、細かい、ケチ、自分勝手など色々あるが、度を超えた思い込みで相手に言葉や暴力によって傷つけたりする病気だ。

ーーそれってまさに私の夫!? いつも自分の言う事がいつも絶対で、それに従わないものはたとえ家族でも罵倒を浴びせられる。「彼と離れたい」と思った一番の原因は、毎日、何マイル走ったか、お金をいくら何に使ったか、誰と会ったかなど逐一報告するこを義務付けられていた事が耐えられなかった。「一体何のためにいちいちそんなに細かい事を聞くの」?と質問すると、「全てタックスの為だよ!!」と怒りのこもった答えが返ってきた。

彼のケチぶりにつくづく嫌になる時もあった。例えばカーテンを新調するのに、少しでも安いところを探すのに何日もかけたり、ガソリンスタンドも1セントでも安い場所を選んだり。その一方でバレエやコンサート、旅行、高級レストラン、ワイナリーなど彼が好きな事にはいくら注ぎ込んでも惜しまない。ただ、私の事となれば一切お金は使いたくないーーそれって自分のためだけに私が付随しているの? 約束した家のリモデルの話もいつの間にか出なくなった。

一般的に「暴力」とは「体に暴力を与える」事と理解していた。でも私が浴びせられていた「言葉の暴力」は、同等に「家庭内暴力」と言うのだそうだ。私が何か失敗して怒られるのもやはり「暴力」らしい。分かりやすく言えば「コントロール」(支配)されている。英語ではそう言う人の事を「コントロールフリーク」とか「マイクロマネージメント」とか言ったりもする。

私が持つ家庭ですでにDVは横行していた。その言葉は前から知っていたが、まさか自分がその渦中にあるとは気づきもしなかった。 

夫の仮面が少しづつ剥がれていく。「一体この人はどんな人なんだろう」私は怪物と結婚したのかもしれない。 

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