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【短編小説】金曜日の夜、一人でモヤモヤして過ごすのをやめた人の話

あらすじ

30代のクリエイティブディレクターであるひかりは同棲している彼氏がいるものの、行き詰まった関係に疲れ切っている。彼との関係性も悩みどころだが、彼氏であるレンに浮気相手がいると疑っているが証拠を押さえたわけでもなく、ただ自分の中でモヤモヤを抱え続けている。そんな彼女は週末を前にした金曜の夜を一人で過ごすのにも慣れてしまっている。

ある金曜日、ひかりと同じ会社で働くアキが彼女をサルサのクラスに招待し、そこでひかりはセバスチャンと出会う。彼はハンサムなサルサのインストラクターで、彼女にとある変化をもたらすのだった。

短編小説 - はじまりのリズム

「今夜はクライアントと遅くまで外出」というメッセージだけがLINEに届いていた。ひかりは返信する代わりにため息をついた。そして力なく「了解」とだけ返事した。彼女の長い付き合いの彼氏であるレンは、広告会社で働くサラリーマンだ。金曜日でも土曜日でも、友達と飲みに行くためにこの言い訳をよく使っていた。

 “信じられない”。自分の声が頭の中に響き渡った。

ひかりはランチタイムのフードコートに人が溢れる中、サラダをかじり続けた。いつ最後にレンと一緒に外出したか覚えていなかった。付き合い始めて七年、そして結婚の話があるにも関わらず、二人の未来は年月が経つにつれてますます暗くなっていた。ほとんどセックスもなく、あるときは彼が友達と飲みに出かけた後であることが多かった。ひかりはこれ以上考えるのを止めた。レンからはお酒と煙の匂いがしていたし、時折彼のジャケットから女性の香水の匂いがするとさえ思っていたからだ。

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