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山の幸(冬)

 食レポシリーズ第4弾。実家の周囲で採れた山の幸の記録をまとめました。今回は寒さ厳しい冬のものを。

柚子

 酸味とほろ苦さを併せ持つ人気の柑橘類、ユズ。我が家の物はもう年齢のいった木で、年に3つも実を付ければ良い方で、数年前にその命を終えてしまいました。
 たくさんの実が取れたわけではなかったので、少量を神棚への飾りにしたり、薬味の一種として使ったりしました。たくさん取れれば果実酒にしたいところですね。

 癖の強いレモンのような味なので、果肉を食材として料理に使うよりも、香り付けに用いるのがメインでした。香りなら実と皮で大きく違いが無いため、皮の表面を削るようにして調味料のような感覚で用いました
 里芋の煮っころがしに添えたり、煮物の仕上げに入れたり、あとは比較的最近になって知ったのですが、ラーメンのスープに加えても面白いです。

蜜柑

 冬のフルーツの定番です。水分とビタミンを摂取できるこたつのお供ですね。我が家にこたつはありませんでしたが。
 我が家のミカンの木も柚子同様、食用に適した実を多くつけるものではありませんでした。樹高は2mに満たず、実も豊作の年でも20個弱。どちらかと言えば初夏の花やアゲハ蝶を鑑賞して楽しむような木でした。

 実は小ぶりで、色づきも一様でなく、味も酸味が強く食用には向きません。種類が悪いわけでないので、果樹農家の方々の努力を痛感したのでした。

金柑

 のど飴の材料にも使われるキンカンです。柑橘系3連発。直径2cmほどの球形で、鮮やかなだいだい色をしています。他の柑橘類同様、可食果実にしては皮が厚く、剥いて食べるには手間なので、調理して食されます。
 味は市販の蜜柑の甘味を一部コクに変えたような、甘さ控えめながら深みを感じる味をしています。レモンや蜜柑に比べると水分は少な目。実が小さいからでしょうか。

 金柑の食べ方ですが、まずは蜂蜜漬け。レモンのそれが有名ですが、こちらも美味です。良く洗った実を半分にカットし、蜂蜜に漬けて3日ほどおきます。もう美味いのなんの。果実はそのままおやつやデザートに。漬けた蜂蜜は果汁でやや伸びっていますが、炭酸水やお湯で割って飲み物にするも良し、煮物の隠し味にも合います。砂糖の代わりに用いれば柔らかな甘みと爽やかさを感じられます。
 金柑をダイレクトに煮物に使うのも実はイケます。例によって我が家ではそこまで多くの実が取れなかったのでほとんど食卓には並びませんでしたが。

キウイ

 我が家の冬定番かつ家庭菜園の変わり種、キウイフルーツです。残念ながら数年前に寿命を迎えてしまったとのこと。
 キウイは蔓状の植物ですが、経年によりその幹を太くしていきます。新芽が蔓として伸び、周囲の樹木などを支えとする、藤に似た特性をしています。我が家でも藤棚ならぬキウイ棚を作製しました。晩秋に楕円球状のみを付けます。実はごわごわした短い毛に覆われており、見た目はたわしのようです。木の肌と同じ色をしているためか味が合わないのか分かりませんが鳥に食べられることは少なく、また果汁の酸性が強いためか虫に食われにくく、人間である我々が多くの実を労せずして入手できました。

 物心ついた頃から10年ほど、そうしてキウイの採取をしていたのですが、私はスーパーなどではキウイを買えません。収穫時もそうでしたが、実を手にした瞬間「これ甘い」「これ酸っぱい」と分かるのですが、流通に乗っているキウイはだいたい酸っぱいです。甘くなるまで熟してしまうとその分傷みやすく、収穫から2日ほどで食べないといけないからですね。
 甘く熟したキウイは、果肉が透明に透き通ります。緑ベースで透き通ったそれは宝石に似た輝きを見せます。また、甘みの桁が違います。市販のフルーツゼリーのゼリー部分よりは確実に甘いです。甘味の種類としては酸味を含んだフルーツの甘味なので、蜜柑や苺に似ていますが、香りはキウイのソレ。ケーキのトッピングに使うならクリームを無糖~微糖にした方が果実の甘味が映えるでしょう。糖度で言えばシャインマスカットの平均値をも超えていました。何にせよ、食べればその糖度にぶん殴られること請け合いです。

 収穫時に酸味や渋味の強く残る果実も、40度代のぬるま湯に漬けておくことで熟成を促せます。他にはリンゴや蜜柑など、他の果物と一緒に保管することで熟しやすくなります。その場合は梨が最も効果を発揮しますが、果実同士の位置関係でムラができるので、お湯で行う方がコントロールが容易です。
 市販のキウイでもやってみようかと思い始めました。

山芋

 冬の山の幸で最後に記すのは山芋です。冬の山の幸と言うとジビエ系のお肉もあるのですが、それは別段我が家で獲ったわけではないので、今回は割愛。

 山芋自然薯とも呼ばれる、荒廃した土地に生える蔓植物で、太く発達したその根を食べることができます。スーパーにも並んでいますね。山芋が種全体を指す名称で、自然と生えていた、人工栽培でない天然ものを自然薯と言うのだとか。
 我が家では特に栽培はしていません。採取時に芋状態で数本残しておく、掘る芋も蔦に繋がった頭の部分を切り取り埋めておくなどして種の保存はしてきましたが。したがって我が家の山芋は自然薯です。
 芋の直系は2~3cm、長さは30~50cmほどですが、1mに迫るものもありました。固い土をより分けて伸びる芋なので、場所によっても差が出ます。見つけ方にも採り方にもコツがあるのですが、そちらは黙させていただきます。日記の方でいずれ触れますが、我が家の庭に不法侵入して山の恵みを根こそぎしようとする人がかつて出たので、技術系はまたの機会に。

 芋のお味は言うまでもないでしょう。美味しい!
 擦り下ろしたとろろ、短冊切りにして山葵醤油で食べる刺身バターソテーも美味しいです。生ならば繊維質のシャキシャキ・パキパキとした歯ごたえが、火を通せばホクホクとしたでんぷんの歯触りが楽しめ、癖の無い味により好みの味付けで変幻自在です。

 ここでもう1つ珍味を紹介。それは山芋のむかごです。山芋が蔓につけるむかご、これも食すことができます。1本の蔓にわずかにだけ成る、褪せた褐色をした直径1cmほどの実のような部分で、これを地面に植えるとそこから芽を出し、栽培が可能です。なおこの場合は無性生殖となります。
 生では固いので火を通しましょう。私の好みは野菜のかき揚げに混ぜた天ぷらです。表面はカリカリで、噛み割るとパキッと良い音がし、中はシャリシャリとホクホクの2種の食感がする、小さな山芋の味を楽しめます。小ぶりで希少なので、とっておきの日本酒と合わせましょう。幸せの味が楽しめます。

 冬の山は自然の恵みが少ないので、他の季節に比べてボリュームは薄いのですが、これにて締めさせていただきます。

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