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ノベルティ(新奇さ、斬新さ)な設定で読ませるベストセラー系小説10選

 斬新な設定で一気に読ませるエンターテイメントの傑作をあつめました。読んでいない作品が1作でもあったらラッキーでしょう。下では初出を紹介していますが、文庫版が古書店の均一棚で置いてあることも多いので、買いやすいと思います。

1990年『ロートレック荘事件』(筒井康隆、新潮社)
 ベストセラー作家のミステリ。当時ミステリにも小説にもさほど関心もない友達も読んでいたことを記憶している。トリックの必然として、生々しい人間をからめたのがポイント。


1999年『バトル・ロワイアル』(高見広春、太田出版)
 日本的デス・ゲームものの開祖。話の展開はその後あまた描かれた物語と重なる意味でも読めるのだが、この日本にディストピアを見た気迫はさすがだと思う。


1999年『スキップ』(北村薫、新潮社)
 『リプレイ』(ケン・グリムウッド、新潮文庫)も連想するのだが、女子高生に突如訪れる「奇跡」は、作者特有の繊細さで表現されておりだからこそ余計残酷である。

1999年『クリムゾンの迷宮』(貴志佑介、角川書店)
 突如としてゲーム世界での「バトル」が開始する。虚構と現実のはざまにある「操り」を見抜くところも面白いが、虚構世界におそいかかられるような現実変容感もすさまじく面白い。

2002年『GOTH』(乙一、角川書店)
 荒木飛呂彦『ジョジョ』の杜王町の小説版みたいな魅力がある。登場人物の異質さの感触は、乙一ならでは。どんでん返しを収録作すべてできめていることも大サービスである。


2003年『いま、会いにゆきます』(市川拓司、小学館)
 単なるよみがえりと思ったらアレというラブストーリー。その「動機付け」がすごくうまく利いている気がする。高田靖彦氏によるマンガも読んだがそれも面白かった。


2004年『イニシエーション・ラブ』(乾くるみ、原書房)
 80年代の普通の恋愛を描いている。だけでないなと思わせながら読むと意外な結末が。その叙述も悪くないのだが、描かれた普通の恋愛というものがとてもなまなましいところも読みどころ。


2004年『幽霊人命救助隊』(高野和明、文芸春秋社)
 幽霊が人命を救助していく。登場人物たちは最後に義人となり、使命へと向かっていく。最近にない、どこまでも痛快な「物語」的な小説だと思う。何度でも読み返せる。

2004年『藁の楯』(木内一裕、講談社)
 
凶悪犯を護送している主人公が、デス・ゲームのような賞金レースに巻き込まれる。命をかける、と言葉でいうのはたやすいが、この現実世界で本当に自分の命よりも何かを大切にできるか、という問いもつきつけられる。

2006年『ボトルネック』(米澤穂信、新潮社)
 話の筋が「日常の謎」ミステリが考究されるのだが、それが設定の大ネタと重なって最高です。米澤穂信氏は北村薫氏が好きだったと思うが、設定によって人間を翻弄する手腕は共通している。


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