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『例外状態』(ジョルジョ・アガンベン著 未来社)の感想

 イタリアの気鋭の哲学者ジョルジョ・アガンベンの書物。アガンベンはワルター・ベンヤミンのイタリア語翻訳者であり、ベンヤミン哲学の「剥き出しの生」というあり方を、哲学を通して現実に生きられるか模索している。
 例えばドラマ『24』を例に挙げてこの書物の「例外状態」を考えてみよう。ジャック・バウアーが所属したデルタ・フォースは「テロ対策」を任務としている。「テロ」を防ぐためなら殺人などの「法律違反」も許されるのがこの組織である。「テロ」が生み出した「例外状態」下ではこのように、「全権」を委任された組織や個人が必要とされる。
 アガンベンはこのような(カール・シュミット的な)「例外状態」→「全権掌握」→「法律違反」の流れに対して、別の流れを生もうとしている。
 簡単に言い過ぎると、「例外状態」と「全権」の関係こそが「法律」を生む親であるという視点である。「例外」は「例外」ではなく、大きな広がりの中で把握される。
 法律に支配されない「例外状態」の空間と、「全権(威)」を発する人間の力が「法律」をかたどる。テロに脅かされる現代こそこの「剥き出しの生」の到来は可能だとアガンベンは考えているようだ。「権威」と「権限」を論じた第六章から読むことがオススメ。


いつの日か、人類は法でもって戯れるときがくるだろう。それはちょうど子供たちががらくたを使って遊ぶのに似ている。それも、それらをそれぞれの規範的な使い方に戻るためではなく、そうした使い方から最終的に解放するためにである(p128)



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