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クリエーターの本懐とは(作家もの映画レットゼムオールトーク、詩人もの映画パターソン)

 作家もの映画は大抵良い。対抗に、映画がテーマの映画や、映画監督を主人公とした映画もありそれも面白いがそれらはやたら情緒的・感傷的なばかりな気がするんだけど、作家ものは真に人物にフォーカスしてるの好き。
 その違いが結構明確なの、興味深いでしょ。なのでちょっと考えてみましょう…。

 私の浅識で申し訳ないけどいくつか紹介するとね…(もっと観てると思うけど私そろそろ老衰で超有名なものか最近観たものしか思い出せなくなってる←

作家もの映画

ミス・ポター …(ピーターラビットの作者ビアトリクス・ポターが主人公、その代表作が世に出るまでの顛末)

ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー …(J・D・サリンジャー、その代表作「ライ麦畑で捕まえて」を書く前から書いた後のお話。自伝とかルポから描いたというよりフィクションぽい。するとやはり、作者イコール、その作品の主役のホールデンそのものな描き方するのってちょっと安直じゃね…?)

 …それより「ライ麦畑」を映画化してよ!なんか映画化できない理由があるのかな(や、上記映画を見る限りサリンジャーが禁じてるってことですよねうーん)

メアリーの総て …(「フランケンシュタイン』を18歳で生みだしたメアリー・シェリーのその頃の壮絶な人生を描く。ごめん、その中身より主演のエル・ファニングちゃんの美しさばかりに気を取られ集中できない問題作)


蜜のあわれ …(演技派女優、二階堂ふみ演じる謎の美少女と、老作家のえっちぃ関係。それだけ。フィクション。こういうのプロデューサーどんなプレゼンして通すんだろう…売れるわけないじゃん)

…あ、以上は面白くないので🖐(オィ💢 なら紹介すな←

9人の翻訳家 囚われたベストセラー

 …これは文学礼賛か。全体にハイセンスで過剰におしゃれな映画。だけど中身は良い!ベストセラー小説の完結編の3巻が発売され、2ヶ月後にグローバルで翻訳版が発売されることが発表されているのだが、その翻訳作業の実態は…⁉️ 鮮やかな言葉遊び・ワードセンスがゾクゾクする。一言も無駄がない見逃せない!そして書けるもの書けないもの、貧富、金儲けと芸術、家族愛と愛をなくしたもの、さまざまな対比が現れ考えさせられる。ミステリーとしても、面白い。実話をもとにしてるらしい。すご。怪作。

響-HIBIKI-

 …欅坂46(もと)の平手友梨奈主演。欅坂でも塩対応で個性的だった彼女そのままの役柄で、はまっている。若い学生作家の、譲らない作家論・文学論の拘りが炸裂し圧倒していくのがすごく…良い!

パターソン 詩人モノ映画。

 これは本当は1記事書きたいぐらい良いんだけど…。
 アダム・ドライバー主演(スターウォーズ シークエルのライバル側主役のあの人)がかっこいい。詩人はよくあるイメージ通り憂鬱気味な性格で、しかし、ささいなものにも意味を考え夢想する。家具の配置にもこだわっていて愛しい奥様とちょっとした喧嘩になる。詩人だけで食べていけている有名作家などでは全くなく、労働と日常の日々が繰り返し描かれる。ささやかな、しかし大切な日常…、それが、ほんの少し壊される場面があるのだけど、観ていて身がつまされる…。で、この映画、ほぼ、いや本当に大したドラマは起こらない。しかし、(全く激しい性格ではないぐらいの個性のこの主人公の)詩人のはりつめた空気感と緊張感がよく描かれていて、とても良い…。

さて対するは。

映画もの・映画監督もの映画

ニュー・シネマ・パラダイス(89/ジュゼッペ・トルナトーレ監督)

フェリーニの81/2(63/フェデリコ・フェリーニ監督)

鉄板ですよね。良すぎ。以下略(オィ←

マルホランド・ドライブ(01/デビッド・リンチ監督)

 私が好きな映画トップ5に入るってどこかで紹介したよね。厳密には映画監督モノではない…明快な答えは出ていないけど監督デビッド・リンチのある日見た夢を映像化したような作品とも言えて、なので映画のスポンサーと監督との対立や、その脇役で結構長く登場する映画監督が、いい味出してるし、映画というか存在そのものへの問いかけもあったりと興味深い。そこのセリフ・シーンがめちゃめちゃすごくて、映画の中から本当に私自身へ語りかけてくるような錯覚を覚える。第四の壁を破ってくる。映画で、それに成功している作品は他に見たことない(私論だけど)。

ザナドゥ

 オリビア・ニュートン・ジョンが主演で、かつその歌っている主題歌「ザナドゥ」がフィーチャーされていることが話題の中心になりがちだけど、内容は映画というか最高のエンタメを作りたい若い監督が苦悩しながらも、音楽の女神ミューズと出会いサポートも受け、最高のミュージカルが完成していく、という話しで、ああ映画らしい…んだけど、私結構好き。

オーガズモ

…最高じゃね?

…ひょんなことからAV(アダルトビデオ)の監督をしなくちゃならなくなった男の話。妻に内緒で…。相棒がいざというとき、必殺のハムスター拳を繰り出し窮地を救ってくれる。それほどえっちぃくないので、お子様と安心してみても大丈夫です!きっと感動の嵐に包まれます。

マイクザウィザード

…最の高。
 映画監督が低予算しか与えられない中、アイデアをみなぎらせて魔法がかったように活動し映画を納期までに完成させる。その楽しそうな様子と最高に面白い映像、全体からみなぎる映画愛が素晴らしい!最近のアニメ「映像研には手を出すな!」がアニメ作りの女子高生の素晴らしいアニメ制作讃歌、だったけども同じタイプだと思う。映画もの映画のなかで、私的ベスト1。マイク・ジトロフ監督・脚本・主演。雰囲気スピルバーグの初期の名作「ニューヨーク東8番街の奇跡」ぽい。きっと感動の嵐に包まれます。

あ、こういうのもありましたな。

ホドロフスキーのDUNE

これは無視して、と。

で、話戻って、作家モノ映画。

レット・ゼム・オール・トーク

 …が配信されたばかりなんだけど超良かった。

 文学小説でベストセラーをだいぶ前に出した老年のアリス(メリル・ストリープ♡)は新作で行き詰まりながらも、先に出したちょっとした物でも文学賞をとってしまい、授賞式に招待されるが興味ない。しかし出版社と若い担当マネージャーのカレン(ジェンマ・チャン、マーベル新作「エターナル」主役の美貌の香港系イギリス人女優ですな)、7年編集を担当しているがあまり好かれていない、が商売的には出席させたい。だが作家は飛行機嫌いだった。

 なのでカレンが機転を効かせ、船旅、それも豪華客船でイギリスに向かう企画をする。アリス折れて、古い30年来の友人二人と、可愛い甥(大学生か社会人なりたてぐらい。ハンサム)を同行しても良いならと承諾。ただしカレンは無しで。しかしてカレンも隠れて同乗する。作家が新作について何も話してくれない・見せてくれない・相談もしてくれないので、編集のカレンも会社も困っていたのだ。船旅の中、わがままで頑固な作家の個性が炸裂するが、みなそれぞれ楽しむ…が、思惑ありげ。甥のタイラーはアリスの子分としての役回りだが、それらが良い社会勉強になっているようだ。が、彼はカレンと出会い、次第に恋に落ちる。タイラーのそれが純情でヘタレなのが可愛いw そしてジェンマ・チャンの魅力が画面いっぱいに炸裂するのもいい…。セクシーだよね彼女。おっと脱線したwまあそれは置いといて、と。

 で肝心の、作品としてのポイントだけど、アリスは船での催される特別公演にスピーチする。嫌がってたけどさすが結構上手い。そこで言っていた。

「作品のインスピレーションは隣人などから得ることもある」

 …と。その後の食事の席にて、同行させた無二の親友?でありながら何か画面では不穏な雰囲気のあったロベルタが、ついに本音を。(過去のベストセラー作品について)自分をモデルに不幸なキャラクターとして書いたんでしょと食い気味に突っかかる。しかしアリスは言う。

「私が書く人物は本質的には私なの。作家は普通そうでしょ」

 と…。もう一人の穏やかな友人スーザンも困惑し、彼女はそこで人生の意味について珍しく熱弁する(…感動的なんだけど何か、ずれていて、皆さらに困惑する…www) 

 …と、物語はこの通りそれまで友情や人間関係を語りながらの船旅であったのだがこの後大きく動いていく。それはみてのお楽しみ…、ということで。

 小説を書く時(私も何作か書いたことあるのよ?ひっそりと)、さまざまなものからインスピレーションを得るし、ほぼ自伝で周辺の人を登場させていたとしても、その中身の中は、やはり自分だし、小説そのものが自分に憑依してしまって作家として人間が変わってしまうこともあるし、でもそれ全てが自分なんだって。

 そういう主張を描き切っていて良作だな、と思いました。

 "Let them all talk." 「みんな話しとこうか。」という意味か。いつも、誰にでも、全てを話しておく方が良い、私もそう思ってる。

"Let them all talk."

 仕事でも、なぜこれをやる必要があるのかを話す。少々長くて難しくても、仕事の全体を一通り説明もする。賢い人は先のこと考えて準備できるように。まだ難しいという人にはちゃんと私がサポートするからという宣言も込めて。さらに、上層部でどういう魂胆でこれが決まったか、それも話す。私がそれについてどう思っているか、みんなにどうして欲しいかも、みんな話しちゃう。いつもそうしてる。

クリエーターの本懐とは?

 最近の仕事では1日に半分くらい、仕事のために、デザインや音楽の話しをしている気がする。楽しい。しかしそこで少し前に「ベタさんて数字ばかり見るプロデューサーかと思っていたら、クリエイターなんですね」と言われて

(ふぁエクスクラメーションマーククエスチョンマーク)


 となったw プロデューサーでも半分の人はクリエイティブな仕事してると思うけどな! まあ確かに私、社長の前では請求書発注書契約書事業計画予算の話ばかりを確認しにいってますよ? でもあの、私もともと絵も音楽もやるしビジュアルエフェクトは自分でプログラム書くし企画も要件定義書も全部やるし若かりし頃はクラブVJもやってたし最近のソーシャルディスタンス社会になる前は毎月3カ所は美術展で日本中🚗でまわり(東京が多いけど)月1でクラシックを聴きにいき(若い音楽も聞くけど)…いちおうクリエイターとして仲間内では名が通ってるはずなんですが!?だから採用したんじゃなかったっけ!?
 …で私の個人の名刺や過去の私の会社のCI(ロゴ)とか、外国人に必ずめっちゃ凝視されて注目されるし(日本人はスルーするね)、見ればデザインセンスが分かると思うんだけど…と、まあ自分で言わないし地味な仕事ばかりしてるから分からないですかそーですか。

 でさぁ、社長がなんか私のプロジェクトや私関係ないプロジェクトになんか有名人のすごいらしいおともだちアートディレクターとかコピーライターさんとか連れてきてさぁ、予算外で(私の責任予算内で)勝手に決まったことになって補充してくれるけど、で、ありがたく私がその間にたって調整と云う名の発注・指示・チェック・さらに細かく指示、催促、仕様の再三再度の説明、そして、平身低頭のリテイクのお願いを…させてもらってるじゃないですかぁ。で、で、で、でも、どうしても治らない、また、ギャラがこれだけじゃここまでだねーとか言ってくるから(社長に相談すると、「あ、ちゃんと頼めばやってくれるよ、言ってみ?」だと!?💢
 その日本的有名デザイナーさまとかが書いたデザインだのコピーライトというクソつまらん一文だのというのをだいぶ私にて修正させてもらってもしくは描いてくれなかったので私が描いて納品としたりもしてるんだけど…それで「あぁやっぱあいつすげぇなぁ!」だと!?💢 

 え?本当は自分なら、嬉しいんじゃないのかって?

 これが、

 本当に、

 まったく嬉しくない!
んですょ、
 
 まぁ内緒ですからな…薮から蛇だし

へびさん

ニョロニョロ〜。

 有名になってから、自分だと名乗っていないその作品を評価されるのが「クリエイターの本懐」だ、とエラい人がのたまわっていた気がするけど、

 まったくそんなの嘘ね!


 あー、腹が立ってきた。話を変えましょう。

 私、静かな映画が好きだけど、静かなだけだと最近は観ながら寝てしまう。静かだけどテンポが良く映像がよく人物たちがなるべく高尚で、何より脚本のセリフがいちいち良い…面白く見逃せない・聞き逃せない映画が好きです。このレットゼムオールトークもそう。パターソンもそう。9人の翻訳家もそう。そう云う映画をもっと観たいな〜最近映画探ししてないから、また探しましょ。



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