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短歌連作5首『人新世の示準化石』(第4回名桜文学賞 最優秀作品)

短歌連作5首『人新世の示準化石』(第4回名桜文学賞 最優秀作品)

「いつかまた、転生先の世界でも弑されたいわ。」アーニャは嗤う

月面刑務所の看守も囚人も欠けた地球をじっと見つめる

人新世の示準化石となるかもね僕の精子を拭いたティッシュは

死と生のスコアブックを締めくくるヒト絶滅のサヨナラエラー

カタチナキモノサエ滅ブ忘却ノ河ノ流レニ抗え。独りでも。

短歌連作5首「一年と一日」(第19回おきなわ文学賞佳作受賞)

短歌連作5首「一年と一日」(第19回おきなわ文学賞佳作受賞)

暁闇の中古車店の花飾り 揺れてそこから世界が染まる

街路樹は深く剪られてすがしさと鏡写しのかなしみがある

廃盤の香水つけて、このひとをあなたになぞらえてみる五月

海辺まで草刈機の音が聞こえて時が止まってゆく夕まぐれ

海沿いのショッピングモール閉店後マネキンの眼に映る灯台

2023年琉球歌壇に採用された短歌7首

2023年琉球歌壇に採用された短歌7首

オルガンを睡らす春の陽のひかり優しさだけで生きられるかな

アパートの床のシミとなるその日までヤフコメでレスバトルしている

黒色火薬のレシピが途中まで書き殴られた『心のノート』

俺ん家のカップアイスのフタの裏まで舐めてった強盗グループ

蒸し暑い朝の陽射しに撫でられた腰のうぶ毛のきらめきが好き 

汚し合うぼくらの夜は虚しいね。翼から血がにじみ出ている

「目を覚ませ。君らの恋は偽物だ。」とL

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2022年琉球歌壇に採用された短歌4首

2022年琉球歌壇に採用された短歌4首

ウチカビをラッパーみたいに焼いてみた あの世じゃみんなイーロンマスク

手の甲の静脈を模した河川図がまだ見ぬ国の首都をつらぬく

国道の矢印すべて流れ込む終の海にて指輪を棄てる

しょぼくれたやさしさだけがある昼のフードコートで君の手をとる

おおぞらの閾よりにじむ宵闇をひかりの筆でなぞれば夜景

はいいろの光あふれる海景に咲くひるがおの孤独は揺れて

音MADみたいな短歌 5首

青い阿波踊りをおどるニセコ町の九月の半液体の夜

変電所だけに降る雨は止み焼死体の僕は電話をかける

白亜の公舎
で迷って半獣人の
官僚の
自死を眺める

皇帝を弑せし海に浮かびたる島のしずかな叛乱の夢

聖廟と腐乱死体を吊る樹々に湮滅の夜は等しく来る

むらさきに澄む夕ぞらにすれ違う飛行機ひとつ金星ひとつ

暁にきらめく芝生の露が在り あこがれは遠く空の向こうに