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【論文読了】生成AI 戦略と実行

DIAMONDハーバード・ビジネス・レビューの2024年3月号の特集は「生成AI 戦略と実行」でした。

最近のDIAMONDハーバード・ビジネス・レビューはAIがテーマになることが多いですね。生成AIが驚異的な品質になってきたのもあるでしょう。

今月号では、会社として生成AIを活用することが紹介されています。しかしそれに加えてクリエイター視点からのインタビューもあります。

それでは振り返ってみましょう。

生成AIの潜在力を最大限に引き出す法

生成AIの品質が驚異的になったとはいえ、間違った情報を出力することもあれば、プライバシーや知的財産権を侵害したりすることもあります。

しかし本稿では生成AIはこれから急速に普及し、インターネットのように汎用的なものになると書かれています。

特に気になったのが、生成AIはスキルアップを加速させるという話です。

オンラインチャットで顧客サービスを提供する企業に大規模言語モデルを導入したら、最もスキルの低い担当者が最大の恩恵を受けたそうです。

全体的にパフォーマンスが上がった(問い合わせの解決数、対応数は増え、平均対応時間は短くなった)のですが、特にスキルが低い担当者ほど上がったわけです。

AIを使うにはモデル(計算式)と学習が必要です。学習データは社内の業務データになるわけです。ということは経験が豊富な従業員の業務のやり方をAIが学ぶということになります。

すると新人も経験や訓練を長年積み重ねずとも、AIに先輩のアドバイスのような内容を傍でしてもらえるわけです。これならスムーズに進みそうですね。

教育としての価値が高い一方で、自社のノウハウを形式知化・標準化できるという効果もありますね。これをやるにはもちろん手間がものすごくかかりますが、効率アップには貢献しそうです。

従業員が生成AIを活用するために企業は何をすべきか

生成AIを活用してパフォーマンスアップする

従業員が生成AIを使うことで、手にする能力が刻々と変わり、その変化がもたらす影響を企業が予測できないという問題があるそうです。

生成AIを使う問題というと、機密情報の話を聞いたことがありますが、それではないようです。

この論文が言っているのは、従業員が生成AIを活用してパフォーマンスアップする方法です。それをSTEPというフレームワークで解説しています。

STEPはSegmentation(分類)→Transition(移行)→Education(教育)→Performance(業績評価)です。

分類

分類では仕事を分類します。AIのサポートを受けながら従業員手動でやる、AIで自動化する、AIにはできないの3つに分けます。

ここでのポイントは全自動じゃない分類があることだと個人的に思います。AIの支援は最初の「生成AIの潜在力を最大限に引き出す法」にもあった通りですね。

移行

移行ではAI導入によって人員削減するのではなく、職務の深化や高度化をした方がよいとのことですが、ごもっともですね。

従業員の労力を削減できるなら、その分より深みがある仕事や高度な仕事をやった方がいいでしょう。

人員削減してコストダウンしたがる企業もあるかもしれませんが、パフォーマンスアップの方が大事です。

教育

教育ではAIツールの訓練と従業員の教育が出てきます。

学習を重んじる文化であることと、学習時間を企業が従業員に与えることは効果的なようで現実には難しそうですね。

学習を重んじる文化というのは私は好きですが、そういう会社ばかりとも限りません。また従業員が研修などに行く時間を与えて上げている会社ばかりでもないでしょう。

とはいえこの辺りが難しいとしても、AIのバージョンアップに合わせて継続的な学びを従業員がしていく必要があるということに気を付けたいものです。

業績評価

生成AIを業務に活用するのが普通になれば、業績評価も変わるという話です。しかも期間が短くなるとのことです。1年じゃ長くて四半期毎になるよと。

評価内容も売上などをどれだけ上げたかではなく、仕事を改善したことや他の人に協力したことに変わるそうです。

コラボを重視する理由が書かれていませんが、まぁ個人でスピーディーに仕事を進められるようになるからコラボも増やせるでしょうね。

AIプロジェクトを軌道に乗せる5つのステップ

AIプロジェクトの失敗確率は80%もあり、10年前の企業ITプロジェクトの2倍だそうです。なんとも多いですね。

この論文では選択、開発、評価、導入、管理という5つのステップをクリアすることで失敗のリスクを抑えられると解説しています。

最初の選択では、名部プロジェクトか対外的プロジェクトかを分けて考えよとし、プロジェクトを評価する観点が挙げられています。

続いて開発ではユーザーを参加させることや1回限りのプロセスとせず標準化や専門化をすることが解説されています。

評価ではAIの訓練や使うデータの話、導入ではユーザーの信頼を得ることが解説されています。

管理では訓練データの陳腐化を防ぎ、顧客や市場の変化に追随していくことの必要性が解説されています。

こうしてみると、そもそも選択の段階で自社の戦略に合っているものを選べていない企業が多そうだなと感じます。

その後は標準化して継続的に訓練していくことも必要なわけで、「導入できた!万歳!」じゃないのですね。

継続的に訓練していく必要性は気付かないところかなぁと。システムは運用し続けてこそ価値を生みますからね。

生成AIの戦略的な活用で競争力を高める

2023年くらいから生成AIが話題になっています。しかし企業が使いこなすのは簡単ではありません。そこでこの論文が、企業が生成AIを活用する方法を解説してくれています。

これ、なるほどなぁと感じました。

新しい技術を導入するリーダーは一つの大きな賭けをするよりも、大量の小さな賭けを繰り返すという戦略を取ることが多い

DHBR2024年3月号 生成AIの戦略的な活用で競争力を高める

先月号にラディカル・オプショナリティという複数の選択肢を試す方法が紹介されていました。

1発勝負では失敗したら終わりです。ということは複数の可能性を探って、失敗したものは諦め、上手く行ったものを採用すればいいのです。

続いて生成AI導入の3ステップが解説されています。

まずは従業員のマインドセットをデジタルを使いこなせるようにすることからなのですね。従業員のマインドセットや組織文化はどんな活動をするにも土台となりますから。

土台を作った上で生成AIの仕組みやできることを理解し、生成AIが価値を生む領域を考えるそうです。

生成AIでできることを理解しないと、適用範囲を決められません。それに生成AIが驚異的と言えど、何にでも使えるわけではありません。

自社の活動領域でどこに使うかを考える必要があるのです。

AIを使えばいいと思ってAIを使うことが目的化しているプロジェクトを見かけます。この手のプロジェクトは失敗するのですが、必要な観点としてこの3ステップを言えるなぁと。

ちなみにDXをやることが目的化して失敗するのはよく見かける話なので、個人的にブログに書いています。流行だからじゃダメですよ。

自社の戦略に生成AIを組み込む方法

続いて生成AIを活用する論文です。

3段ステップという分け方が解りやすいと感じました。

  1. 一般公開されているツールを利用する

  2. 既製品をカスタマイズして利用する

  3. 独自のフィードバックループを作る

私はAI活用のような前例のない取り組みは最初から100点満点を目指さない方がいいと考えています。

だからこの論文のような3ステップはいいなと思います。徐々にレベルアップしていけばいいのです。

ただしこの論文ではすべてのビジネスでステップ1を取り入れるべきとしています。もうそういう時代なのですね。

最初のステップは導入して使いこなすこと、そして使いこなせるようになったら調整や訓練を行います。

最終的にはシステム連携や業務を通した学習データの獲得と継続的な学習を行います。

継続的というところがポイントですね。日常業務になってしまえばどんどんパフォーマンスが上がるというのは他の論文にも書かれています。

ところですべてをAI化するのではなく、AIが使える業務とそうでない業務という分け方はやはり必要ですね。この論文でも出てきます。

まぁいきなりは難しいので、使って慣れていきましょう。

シチズンデベロッパーを企業でどう活かすか

シチズンデベロッパーとは非IT人材だけどローコード/ノーコードのツールでアプリ開発を行う人たちのことです。

20世紀からローコード/ノーコードのツールはあったのですが、近年になって段々と増えてきました。さらには生成AIがローコード/ノーコードによる開発を後押ししています。

ユーザーが開発を理解してくれることはIT側の立場としては嬉しいことです。よりスムーズにシステム導入や開発の話を進められます。

勿論ユーザーが研修などを受けられる体制は必要でしょう。本稿でもPWCの事例で研修の話が出てきます。

一方でシチズンデベロッパーは技術的な知識がIT人材には及ばないため、技術的に詰まってしまう可能性も高いです。

ここをコミュニティで解決する、つまりシチズンデベロッパー同志で相談し合えるような環境を構築するという案が紹介されています。

IT人材がこういうときに教えてあげられるといいかなと思います。少なくとも私は協力してみたいですね。

シチズンデベロッパーが増えることでITエンジニアが不要になるということはないと私は思います。むしろユーザー自ら開発をすることで、技術的な問題に当たるはずなので、協力関係を築くチャンスもあると思います。

人間の欲望と道具が共進化する時代は終わりを迎えつつある

生成AIの進化はクリエイターに大きな影響を与える雰囲気を出しています。クリエイターに依頼せずとも綺麗な写真やイラスト、動画ができてしまっては、クリエイターの仕事が減ってしまう恐れがあります。

そこでベテランデザイナーへのインタビューです。実に深い話が行われています。

人間のクリエイターにできてAIにできないことも挙げられています。

  • デザインはアブダクション(仮想的推論)

  • クリエイターは問いを立てることが求められる

人間の欲望と道具が共進化するという話は納得感がありますし、エンプティネスの話はとても抽象的で難しいです。

エンプティネスは確かにAIにそのまま説明できないでしょう。かみ砕いて具体的な形にしないと無理でしょうね。人間に対しても伝えるのが難しいと思いますが。

私も創作をやる者として、エンプティネスを実現できたらいいなぁと思います。どうやって実現しよう?使い手次第でなんとでもなればいいのです。

終わりに

近年はAIが驚異的に進化しています。しかし以前から言われているように、人間対AIではなく、AIをアシスタントとして有効活用することが大事です。

今回はAIを使ってパフォーマンスアップする話や、デザイナーから見たAIの話がありました。

私もAIを有効活用したいと思いつつ、あまり使えていません。AIを使えるシーンや作業を洗い出し、今回の特集の内容を参考に使い方を確立していく必要がありますね。

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