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剥離・脱落・収縮

今月も、「あの日」が来てしまった…
また女の性を、否応無く、
静かに受け止めなくてはならない、
そんな時。

中学生の頃、「初潮」を迎えたわたしに、継母は、
忌々しい汚れたものを見たように、冷たい目で、
「あら…そう…」
と、面倒くさそうに紙袋を渡した。

浴室で、汚れた下着を洗いながら、内側で思いの抑揚する感情を抑え切れずに、泣きながら、身体までも必死に洗った。
洗っても洗っても、わずかな腹部の痛みを感じながら、
気持ちは波打ったままだったが、
シャワーに流れるピンク色の水を、「美しい」とも思った。

【思春期を迎えた時】の記憶は、鋭利で鮮やかなまま。


月経が医学用語であるが、時代・階級などで様々な俗称がある(例:おまけ、おめぐり、はつはな、めぐり、おてなし、かりや、おてあい....
現代日本では、俗に「メンス」(英: menstruation, menses のカタカナ表記の省略形)、「アンネ」(生理用品のメーカー名より)「お弁当箱」(ナプキンが梱包されている形から)、「お客さん」(ナプキンを座布団に見立てて)、「つきのもの」つきやく」「お月様」「セーラームーン」{月経の周期が月の満ち欠け周期(29.5日)に近いことから}、また隠語めいて「アレ」「めぐり」「女の子の日」「女盛りの日」「アノ日」と呼ぶことも口語ではありえる。

〈Wikipediaより〉

継母は、それから、毎月、わたしに「あの日」があるかを確認していた。飼い犬に手を噛まれないように、かつ触れることがないように。

父親は、再婚したにも関わらず、
「前の女房は良い女だった。出来た女房だった…」
と、継母やわたしの前で、口癖のように話していた。
だから、継母がわたしを嫌うのは当然で必然だったし、成長するに従って、この世にもういない、消え去ったはずの亡霊の「生き写し」が蘇る時間を恐れていたに違いない。

無関心には、恐怖心が隠されている場合もある。

妹という実子を生んで、自身の居場所を作った。


ある日、わたしは初めての彼が出来た。

中学の一学年上の陸上部の先輩で、付き合うと言ったって、学校の校門前で待ち合わせをし、本屋に行ったり、図書館で本を読んで、勉強したり、ファーストフードの店で一緒に食べたり…手を繋ぐのがやっと。

日が短くなった季節の変わり目、自宅前まで送ってくれた彼と一緒に歩いている姿を、継母に見られた。
「ああ…汚らわしい…」という態度と無言の表情で、
わたしを粗く切り取った。傷ついた。

毎月の「あの日」もチェックされ続けた。

「あの日」を迎える度に、わたしは自分の女の性を
疎ましく思った。



時が流れて、初めて女になった夜。
これでやっと、【同等のもの】になったんだと心から思った。
解放された。
継母が忌み嫌った存在になり得たと。

もう、あの時のような痛みはない。
でも、感覚だけは、記憶に纏わりついて離れない。

だから保てる「平静」も有るのかも知れない。


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